第六話 これ、なーんだ
夕方よりも少し早い時間ではあったが、ディメンションルームへと戻ってきたアリエス御一行様ことパーティー"ギベオン"の面々。
ウキウキワクワクとしたアリエスの様子から待機組は、いいものが出たのかな?と微笑ましく出迎える。
疑似太陽があるおかげで、ディメンションルーム内には芝生のような植物が敷かれた部分があり、そこの隅には休みの日にバルトが細々と工作をした物が置かれている。
何を作ったかといえば、サスケ用のちっちゃいアスレチックである。
あの大きな身体と手でよくあれほど小さいものが作れると感心するが、背中を丸めてクマ耳をピコピコさせて工作する姿は、まるで少年のようだった。
そんな芝生スペースにてアリエスは、インベントリからデデンっ!と先程ゲットした宝箱を立ったまま取り出した。さすがにそこそこ大きなサイズなので座って出すと危ないと判断したのだろう。
罠がないことは確認済みなのでワクワクしながら開けてみたところ、中に入っていたのはドレスに靴、髪飾りだった。
これ、なんぞ?そう思って宝箱からズルズル〜とドレスを引き上げたアリエスは首を傾げた。
中から出てきたのは、淡く光る黄色のドレスで、袖は手の甲まであり中指を通す部分がついており、胸元と手の甲には赤色の宝石のようなものがはめ込まれ、その周囲には青い輝きを放つ銀色の糸による繊細で豪華な刺繍が施されていた。
見るからにドレスなのは分かるが呪いのアイテムだったりしたら大変だと思ったアリエスは、万物鑑定をしてみた。
ドレス生地は魔法防御力がアップする「妖精の羽衣」が使われており、刺繍部分はミスリルが練り込まれた糸、胸元と手の甲にある赤色の石は火属性の魔石だった。
靴は、どう見てもシンデレラのガラスの靴である。
効果は「癒し」で、これを履けば何時間でも踊っていられるし、靴擦れもしないだろうな。
髪飾りは、優れたバランス感覚を得られるもので、どれだけムチャな体制になろうとも転ぶことはないとあった。
鑑定を終えたアリエスは、「今のところ、うちには必要ないなぁ。ていうか、ムチャな体制でも転ばないって、逆に危なくねぇ?」と残念な視線を髪飾りへと向けた。
しかし、今回ゲットしたのはこれだけではない。
そう、これらが入っていた宝箱もあるのだ。
何の変哲もなさそうな見た目をしているが、万物鑑定をしてみると意外と使えることが分かる。
蓋の上部にある金属プレートに魔力を流すと数字が浮かび上がって暗証番号を入力することが出来るのだ。
暗証番号と魔力を登録することで本人以外が開けることは出来なくなり、登録した魔力を流しながらリセットボタンを押せば、中に入っているものは消失する。
アリエスが目をつけたのは、この「消失する」という部分だ。
「これって、完全犯罪いけんじゃね?」と残念なことを考えているのだが、犯罪に手を染めるような人間性はしていないはずである。何に使うつもりなのだ。
だが、アリーたんは、しばらく所持していればそのうち満足して売り払ってしまうだろう。
ようするに飽き性なのだ。
ドレスと靴にはサイズ調整など付いていないので、そのサイズが合う者しか身に着けられないのだが、どう見てもお胸の部分がツルペタなのだ。
それに気付いたアリエスは、ポムっと手を叩くと、「カップがないってことは、男でも着ようと思えばいけるのか」と納得した。
それを聞いたハインリッヒは、案の定吹き出して大爆笑である。
しかし、ここでロッシュから冷静なツッコミが入った。
「
「うん?あ、そっか。忘れてた。ドレスって足が隠れるくらいだっけ?てことは、そうなるな。あれ?でも、靴は大人用だよな?」
「宝箱から一式や揃いで出ないことも多いぞ?」
大爆笑から復活したハインリッヒにそう言われ、そういえばそうだったと頷いたアリエスは、「んじゃ、これ売っちゃおう」となった。
というのも、アリエスが勘違いするほど、このドレスは横に大きかったのだ。つまり、子供のぽっちゃりさん用なのである。
シンデレラ風ガラスの靴も用はないのだが、飾っておくにはキレイだったのでオブジェ枠で取っておくことにして、髪飾りは、今のところ使う予定はなさそうだが、あって困るものではないのでパーティーメンバー用の装備品置き場へと片付けることになった。
確認作業を終えたアリエスは、売るための品を入れてある箱へドレスを仕舞い、髪飾りを装備品置き場へと片付け、ガラスの靴はクララの部屋へと勝手に置いて満足した。
パーティーメンバーもクララの部屋が一番似合うと満場一致だったためそうなったのだが、クララ本人は恐縮しきりだった。
このパーティー"ギベオン"は、アリエスを中心とした集まりなので、基本的に彼女のやることに否やはないのである。
よほど阿呆なことや危ないことをしなければ全肯定してしまう危ない集団なのだ。
しかし、アリーたんがいい子なので問題はない。
彼女がしっかりしていれば彼らが暴走することはないのである。たぶん。
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