第五話 さっさと
アリエスからすれば和やかで楽しいお茶会が終わり、彼女はアルフォンソ王太子とフェリシアナ王女と再び会う約束をして城を後にした。
ルナラリア王国ですることはもうないと、ダンジョン都市ドリミアへ向かうことにしたアリエスなのだが、何故ダンジョンなのかといえば冒険者ランクをゴールドにまで手っ取り早く上げてハルルエスタート王国まで行くためである。
アルフォンソ王太子から他に何か欲しいものはあるのかと聞かれたアリエスが、「あ、じゃあ全員分の推薦状がほしいです!」と遠慮することなく答えたため、このオモシロ可愛い妹のためにアルフォンソ兄貴はちゃちゃっと必要人数分書いてくれたのだ。サイコパスどこ行った?
ということで、何の功績もないけど兄貴の七光りでゴールドランクに上がるための推薦状を手に入れたアリーたんは、さっさとダンジョンへ行って、さっさとランクをゴールドにまで上げることにしたのだった。
冒険者ギルドにて出されている依頼の受注回数やその達成率、素材の納品など、様々な要素によってランク付けをしているのだが、その内容は冒険者ギルドによってそれほど変わらない。
変えてしまうと、魔物が比較的あまりいない地域と危険度が高い魔物がいる地域で戦力差が出てしまうからである。
あまり魔物がいない王都にてゴールドランクに上がった者とダンジョン都市でゴールドランクに上がった者に差はほとんどないと言っても良いのだが、貴族特化と戦闘特化という特色は出たりもする。
やはりお城へ行って王子様と王女様に会って疲れたのだろう。
アリーたんは、シルバーからゴールドランク御用達のダンジョンでヒャッハー!!していた。ルシオ兄貴と共に。
瞳孔が開いた笑顔でフルスイングして狩りまくるアリーたんだが、返り血は浴びていない。
ハインリッヒから返り血が目に入ると危ないと教えられてはいるものの、そんなバッチィものを浴びたくないという、ただの潔癖症である。
ダンジョンにある宝箱というのは誰かが取ってしまった後でも再出現するので、それを目当てに潜る者もいる。
しかし、見える範囲にある宝箱の中身はそれほど良い物は入っていないのが世の常である。
狩りまくってスッキリしたアリエスが息をついて上を見上げたときだった。何とはなしに、ふと万物鑑定をしてみたのだが、そこにはお宝が隠されていた。
ダンジョン内での行動は周りに許可を取ってから行うようにと、ハインリッヒおじちゃんから教わっているアリーたんは、「天井に氷の矢ブッパしていい?」と、輝く笑顔で可愛く尋ねた。内容は物騒だが。
そこまでストレスが溜まっていたのかと周りが心配しそうになったが、あのルンルンウキウキ具合を見て、「あ、宝箱なのね」とホッとしたと同時に、周囲の警戒と隠された宝箱を取り出したときに罠が展開することがあるため、各自が配置についた。
宝箱を壊さないように注意しながら徐々に威力を強めていくと、天井の一部が崩壊し、でっかい宝箱がズドーンっ……と落ちてきた。
そして、それを瞬時にインベントリへと収納したアリエスは、竜骨モーニングスターを構えて戦闘態勢に入った。敵さんのお出ましである。
その隠された宝箱があった場所は、次から次へと魔物が飛び出してくるモンスタートラップになっており、宝箱を開けてニマニマしている頭上から襲撃される仕組みになっていたのだが、万物鑑定持ちのアリーたんには、そんなの関係ねぇのである。
羽付きのモンスター、つまり飛んでいるので前衛アタッカーの武器が届かない上に魔法が効きにくいというウゼェ仕様なのだが、後衛物理アタッカーのハンナや鞭を使うロッシュが羽を傷付けて落とし、そこをみんなで仲良くフルボッコ☆するだけである。
ただ、ハンナの弓の威力がちょっとばかしオカシイので、羽と言わず半身が吹き飛んでいるのだが、倒せれば問題ないので些細なことだ。
危なげなく誰も怪我をすることなく戦闘を終えたのを確認したアリエスは、地面に集められた魔物を一気に収納し、本日の活動を終わりにした。
誰かに何かあったとき即座に回復出来るようにクララはいつも集中して周りを見ているため、戦闘終了後はどっと疲れるのだが、彼女はそれを口や態度には出さない。
しかし、そばで護衛をしているスクアーロは気付いていた。嵌められたとはいえ、パーティーリーダーをしていたのだから、近くにいればそのくらいのことには気付けたのである。
奴隷だった身分のときには言えなかったが、解放されてから真っ先にしたことがクララの現状をアリエスに伝えることだった。
そのことを聞いたアリエスは、「もっと早く言えよ!?」とムンクちゃんになったが、スクアーロから、「ただでさえ待遇が平民や他の冒険者パーティーよりも良いんだ。それ以上を奴隷の身で望むなんてのは出来なかった」と言った上で、クララが考えていそうなことをアリエスに伝えた。
アリエスのパーティー"ギベオン"は、ミスリルランクのハインリッヒを筆頭に少数精鋭で構成されており、大きな怪我をするようなことは今まで一度もなかった。
ハインリッヒから「かすり傷が致命傷になることもあるのだから、注意するように」と常日頃から言われていることもあるし、そこまでムチャをしなければならないほど金銭的に
それでも万が一ということがあるので、誰かが傷付けばアリエスが悲しむだろうと、怪我をした本人が気付く前に癒そう!くらいの勢いでクララは戦闘に挑んでいるのだ。
そこまで気負うなと言ったところでクララは止めないだろうから、それならば戦闘の間隔を少し空けて休憩をこまめに取ることにして、彼女の疲労を少しでも軽減しようということになったのである。
といっても今回はデッカイ宝箱を手に入れたので、ディメンションルームへさっさと帰って早く開けてみたかったのもあるだろう。
さて、中に何が入っていたのやら。
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