9 家族
第一話 満喫した!
春にルナラリア王国へ向かうまでの間にアリエスは、様々なオークションへと参加したのだが、出品される物が何なのか分からない「ガラクタ市」のようなオークションの方が面白かったため、そういうのを重点的に回っていた。
そんなオークションにばかり参加していたため、父ちゃんから送られてきた小遣いは半分も減っていないのだが、購入したものは結構な数になる。
大豆ほどの大きさの真っ赤な頭蓋骨が連なったネックレスは、遺跡から出土したアンティーク品として出品されていたのだが、万物鑑定をすると、「健康付与。あなたの中にいる敵を葬り去るだろう」とあった。
この世界の一般的な知識だと、「○○付与。あなたの中にいる○を○り去るだろう」としか読めないので、見た目と相まって呪いのアイテムのように見えてしまうのだが、アリエスからすれば、「ああ、風邪とかガンとか、そういう敵のことか。健康付与だしな。紛らわしいよなぁ」と、きちんとこのアイテムの作者の意図が伝わる。
呪いのアイテムだと思って相手に身につけさせたところで健康的になっていくし、自身が身につければ心身共に健康的になり、誰かを呪うことなどしなくなるかもしれない。
その他には、夜な夜な家の中を徘徊する幽霊が取り憑いている絵画というのもあるのだが、ただお掃除精霊が宿っているだけである。
家主が寝ている間にお掃除をしてくれるという、とても親切な精霊なのだが、その精霊自身がシャイなため、誰かの目に触れるのを嫌がるので夜な夜なやっているところもある。
そして、見つかるとパニックを起こし必死な形相で迫ってくるため、物凄く怖い。
夜中にそんな行動を起こされれば幽霊と勘違いされても不思議ではないだろう。
あと、「
青色の石がはめ込まれたものは「
誰かを犠牲にして幸せを得るペアリングなのだが、塵も積もれば山となるように、いずれその小さな不幸によって命を失いかねない代物である。
アリエスがこれを落札したのは、「使うかどうか分からんけど、説明書付きで父ちゃんに送ればいい感じに使うだろ」という、雑な理由だった。
無頓着、丸投げ、いい感じ。この3つがアリーたんの最近のトレンドワードなのだろうか。
だが、このペアリングを何も知らずにカップルが使おうものなら片方はちょっといい事が起こる代わりに、相手は小指を強くぶつける程度の不運に頻繁に襲われることになるため、説明書付きで父ちゃんに送った選択は良かったのかもしれない。
アリエスが落札したものの中には、対になっているピアスを身につけている者が、近付いてくるのに比例して音が段々と大きく鳴る魔道具や、威圧が付与された繊細な見た目の扇子、生き物を踏んだときに履いている人の体重×3倍の負荷が踏まれた相手に掛かるハイヒール、クシャミが止まらなくなるカフスボタン、3時間ガッツリ熟睡できる代わりに目覚めてすぐに1時間ほど笑うはめになるナイトキャップ、走ろうとするとスキップしてしまうメガネなど、おもしろグッズ扱いのようなものから使い方次第では危ないものまで色々ある。
それを頬を上気させて楽しそうに説明するアリーたんが可愛くて「アリーたんを愛でる会」のメンバーはデレデレである。
そして、それぞれの説明書をロッシュが書き上げ、品物と一緒に梱包し、ハルルエスタート王国にいる国王へと送ったのだが、聖霊マリーナ・ブリリアント様が宿っている「聖なる遺物」と聖華になる「腐った花」は、アリエス以外が運搬するのは少し不安があるためまだ送っておらず、霊廟の建設だけ頼んでおいた。
オークションを満喫し終えたアリエスは、ルナラリア王国へと到着したのだが、前回訪れたときとは比べ物にならないほどの人でごった返していた。
病の床に
これでは宿を取るのも難しいかと思っていたアリエスだったが、ロッシュから、「ルナラリア王国王家から『是非とも城へお出でください』と招待状が届いておりますよ」と言われて、肩を落とした。めんどくさい、と。
招待されちゃったものは仕方がないと諦めたアリエスは、城へ向かうことを了承したのだが、ハルルエスタート王国王太子とその娘である王女が会いたがっているので、それもあっての招待だった。
城に到着して出迎えくれたのはルナラリア王国第一王子で、以前より血色も良くなり、子供らしいふくふく感のある姿になっていた。
アリエスが会ったときはベッドの住人だったので、彼が自分の足で立っていることにとても感動し、「元気そうで良かった……」とつぶやいた。
ルナラリア王国第一王子は、どうやら既にハルルエスタート王国王太子の娘によってコロリと落とされてしまったのか、アリエスに対して思慕の念は抱いておらず、その瞳にあるのは恩人に対する感謝のみであった。
さすがは、あの王太子が一番気に入っている娘だけはある。
まだ幼女なのに仕事が早い。将来が恐ろしいが頼もしくもあった。
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