閑話 ソレルエスターテ帝国
ここは、ソレルエスターテ帝国のとある場所の一室。
そこには、頭を掻きむしり地団駄を踏む男と、それを冷たく見つめる男、二人の姿があった。
地団駄を踏んでいた男は忌々しげに、「何で、結果を得られないんだっ!!」と叫び、結果を得られなかったのは提供した情報を信じて即座に動かなかったお前らが悪いと、目の前にいる男を罵った。
それを受けて罵られた男は、背筋が凍るような冷たさを含んだ声で静かに答えた。
「我々は、貴殿からもたらされた情報をもとに、即座に動いたのですがねぇ?貴殿から我々へ伝わるのが遅かったのでは?ソレルエスターテ帝国内で起きたことに関しては結果を得られていたのですから、貴殿の
狭い範囲でしか通用しないと言われたことで、地団駄を踏んでいた男は更に声を荒げ、「
その様子を冷めた目で見ていた男は、「また明日、訪ねます」と言い残し去っていった。
室内に残された男は、蹴り飛ばした椅子はそのままに、そばに置かれていたベッドへと荒々しく腰を下ろした。
この男は「
しかし、ソレルエスターテ帝国内でのことに関しては上手くいっていたが、それが他国のことになると、途端にその結果は外れ出した。
他国となると距離がある分、国内よりかは対処に要する時間が多く必要となることは先程去っていった男も承知しているので、「
それにもかかわらず他国の件に関しては上手くいかなかったのだ。
しかし、「
起こるだろう未来をちょこっと見られるスキルなので、通常はそれに目掛けて行動すれば間に合っていたはずなのである。
それならば何故、こうなったかといえば、スキルレベルの違いが関係してくる。
この男が持っている「
つまり、段々とスキルレベルが下がっていっているのだ。
スキルは使わなければ徐々にレベルが下がっていくのだが、頻繁に使っているはずの「
「
未来を見通せるスキルが何のリスクも無しに使えたりはしないのである。
そして、何故こうも失敗したのかといえば、それはアリーたんが関わっているからなのだ。
彼女の持つスキル「幸運」は、現在Lv7なのだが、どうやってレベルが上がっているのかといえば、幸運スキルによって引き寄せられた事象を上手く掴んで誰かを
小さい幸運から大きな幸運まで様々なことを流されるままに掴んでいるのだが、彼女は自分のやりたいようにやっているだけなので、そのおかげで誰かが幸せになっていることにあまり気付いていない。
ソレルエスターテ帝国が有利になるように「
ルナラリア王国にて、第一王子が床に
オークションにて「聖なる遺物」が出品されることも伝えていたのだが、どのオークションに出されるかまでは分からず、それらしき物やそれに関連したものを張っていたが結局手に入れることは出来なかった。
何故かといえば、その「聖なる遺物」が包まれていた布が外され、ミイラとしてガラクタ市に出品されたしまったからである。
紐付きペットの件も落札させて後からそれを指摘し、恩を売るはずが、犯人の目星もついていないのに指摘したことで逆に怪しまれる結果となり、そうこうしているうちにハルルエスタート王国に犯人と手柄を持っていかれてしまったのである。
上手くいかないことに腹を立てた男は頭を掻きむしりながら、「クソっ!青野島がいれば少しは憂さ晴らしが出来たのに!!」と悪態をついていた。
そう、コイツが転生者特典のガチャで青野島勝次郎ことドッペルラージュのミロワールを売り払った転生者なのである。
転生者特典のガチャを回して「
そして、今までに得た伝手を使いソレルエスターテ帝国の中枢にいる人物に繋ぎを取ったまでは良かったのだが、そこに行き着くまでに何度か襲われたのだ。
この男は、「やはりレアスキルを持っていると狙われるな」と、困ったという割には嬉しそうにしていた。自分に酔っているだけである。
繋ぎを取れた相手が、「有用なスキルを持っていることとは関係なく、我が国に尽力してくださった貴殿を保護させてほしい」と、言ったきたため、守ってくれるならありがたいと、それを了承したことで、今いるこの隠れ家にて生活をしているのだが、実際にこの男を襲うように指示したのは繋ぎを取った相手、つまり先程去っていった男なのだ。
この男を飼い殺しにするために仕込んだことであり、監視も常についており、逃げ出すことは不可能である。
しかし、失敗が続いたこととスキルレベルが下がっていることを踏まえて、今後この男がどうなるのかは分からない。
下手に野心など持たずに冒険者か、それか未来をちょこっと見られるのだから占い師にでもなっていれば、楽しい人生を送れたかもしれないが、後の祭りである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます