第七話 思うままに
アリエスからの報告で紐付きのペットを落札した人物たちをリストにまとめ終えたロッシュは、とあることに気付いたのだが、確信が持てるわけではないので、ちょこっとメモのような感じで「んなアホな話ではないと思うが一応」と頭に過ぎったことを付け足しておいた。
だが、今回の事件は、「んなアホな話」だったのだ。
ロッシュの頭に過ぎったのは、落札していった家のどれもが美しい、または、愛らしい女性がいるということで評判の家だった。
ロッシュは、犯人がその家々の女性の好みを調べ上げ、それに
さすがのロッシュでも変態の思考までは推察できなかったためである。分からんでいいのだよ、そんなことは。
ロッシュから報告を受けて動いたのは、ハルルエスタート王国王太子だった。
厳重な管理のもとで行われているオークションにて、紐付きのペットを出品し難なく落札させた人物に興味が湧いたのである。あーぁ、知ーらない。
即座に動いた王太子は、自身のお抱え鑑定士と契約術士を落札した家々へ派遣すると同時に犯人を捕縛し、事態は終息したのだが、この一件で王太子は紐付きのペットを落札した家々に恩を売り、いい
オークションの参加は国を問わないので、紐付きペットを落札していたのは複数の国にわたっていた。
そのため、ハルルエスタート王国王太子はその国と当事者の貴族に対して恩を売り、外交にてそれを発揮したことで、更に自国の優位性を高めたのだった。
ハルルエスタート王国王太子は、「この事件の犯人は、各国の情報を得て、それを様々な場所で売ろうとしていた」と発表したのだが、実際はそんなダークな話ではない。
犯人は、紐付きペットの目や耳を通して美しいご令嬢やご婦人を覗き見しようとしていただけのド変態である。才能の無駄遣いだ。
これが間諜ではなくて良かったと思いたいところだが、ハルルエスタート王国王太子に捕まった時点でお抱え暗部行きに決定である。彼は、気に入ったものにはそれなりの対応はするが、そうではない相手はオモチャにすることがある。精神的に追い詰めたり、立場を失うようにジワジワ周りから切り崩していったりと、どちゃくそタチが悪い。
ハルルエスタート王国王太子は、「どうやら私の可愛い妹は、親孝行なだけではなく、兄思いのいい子だったようだ」と言い、自身の子供の中で一番のお気に入りである王女の縁談に加えて、今回の一件もあってアリエスの後ろ盾となった。
よかったな、アリーたん。
父ちゃんが
そんなことがアリエスの知らないところで起きているのだが、彼女はロッシュに丸投げしておけば「いい感じ」にしてくれると信じきっているので、その後どうなったのかまでは気にしないのだ。そう、アリーたんは無頓着だからな。
それに、犯人の目的がかなり変態的な内容だったので、ロッシュがそれをアリエスの耳に入れたがらなかった結果でもある。
平民でも参加できる方の大規模ペットオークションでは、「ファルブロース」という精霊をアリエスは落札したのだが、見た目はサンショウウオで、最大サイズが軽自動車、最小サイズは野球ボールほとである。
持ち主によって色が変わるため、
ファルブロースという精霊は自身の属性というものを持っておらず、契約したときに限り、その
精霊によっては何でも食べたり、必要なかったりするのだが、ファルブロースは大の甘いもの好きなため、維持費がかなりかかる。
しかし、お金持ちほど見た目を気にする者が多いので、所持属性によって色が変わる上に、姿もあまり美しくも可愛くもないとされて、更に不人気なのである。
が、しかし。
アリーたんは、このファルブロースを「ジャオ」と名付け、いたくお気に召している。めちゃくちゃ気に入っている。背中にうつ伏せで乗って平泳ぎをするようにして撫で回すほど気に入っている。
というのも、すべすべサラサラの触り心地にほどよい弾力、そして、アリエスと同じ属性になっているということは、表面の体温を暖かくも冷たくも出来るので、季節問わず快適な温度になるのだ。
あまりにも楽しそうに撫でているアリーたんなのだが、周囲は「カエルとどう違うのだろう?」と内心では思っている。
彼女は、カエルは気持ち悪いのだが、サンショウウオは可愛く思える感性をしているため仕方がないのだ。
アリエスのペットルームには、癒し枠のベアトリクス、目玉とタイムアタックが好きなサスケ、アリーたんの
牙精霊のファングはアリエスの頭の上に、ミロワールはクララの部屋にいるため、ペットルームにはいない。
ちなみに、
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