第六話 もう一つのお土産
オークションに出される中には奴隷もいるのだが、周りにいる人数が増えたために、アリエスは今のところこれ以上増やすつもりはないようだった。
それに、奴隷から解放された者がいるため、自分もいずれ解放されると調子に乗られるのもアリーたんはイラっ!とくるのだ。勝手なやっちゃ。といっても頑張っているものには甘いのだが。
アリエスが次に目を付けたのは、大規模なペットオークションだった。
魔物や獣、妖精など、様々な生き物が出品されているのだが、王侯貴族限定のと、誰でも参加できるのと二つあり、どちらにも参加するつもりでいる。
そのオークションが開催されるまでの間にアリエスは、聖霊マリーナ・ブリリアント様がどんな霊廟を望んでいるのか聞いて、デザインを起こすことにしたのだが、聖霊マリーナ・ブリリアント様は未だ
ということで、アリエスはお買い物アプリにて様々な本を購入した。
それを参考にして、聖霊マリーナ・ブリリアント様の好みに合わせてデザインを描いてくれたのは、ミストだ。
出来上がった霊廟のデザイン画は、立たせた
その周りをロープパーテーションの代わりなのか、メリーゴーランドのようにお馬さんとシンデレラ馬車がぐるりと囲んでおり、外側にはお供え物を置くためなのか、ガーベラやバラなどの花を透明レジンで固めたようなデザインの会議机ほどの大きさの台が描かれている。
外観はお菓子の家なので、全体的になんともメルヘン派手なデザインである。
イルミネーションとメリーゴーランドは、魔道具で作れるとのことで、聖属性の魔力以外にもこれを動かすための魔力も必要になるのだが、聖霊マリーナ・ブリリアント様が顕現することを思えば些細なことだ。
お馬さんやシンデレラ馬車などはハルルエスタート王国にて作ってもらえば良いが、イルミネーションや回転機構などはミストとブラッディ・ライアンとで作ることになり、メンテナンスが出来るようにレシピも書き上げて一緒に渡す予定だ。
誰が見ても霊廟には見えない代物なのだが、聖霊マリーナ・ブリリアント様からすれば自分の「好き」を詰め込んだお
ちなみに、聖霊マリーナ・ブリリアント様に霊廟っぽい感じの建物が載った雑誌を見せたところ、とっても嫌そうな顔をされたので、スタンダードな霊廟は速攻で却下となった。
状況に慣れたのか、自身の霊廟を作ってくれるミストとブラッディ・ライアンの周りをニコニコと嬉しそうについてまわっているので、アリエスは放っておいても大丈夫だろうと、ディメンションルームを後にしたのだった。
数日後、王侯貴族限定のペットオークションが開催されている会場にやって来たアリエスは、さっそく出品されるものを見て回った。
貴族たちは事前に見て目星をつけるのだろうが、アリーたんには万物鑑定があるので、当日に見て回れば十分なのである。
美しい毛並みの猫や、愛らしい妖精、珍獣など、貴族が好みそうなものが多い中、なんともいえない見た目をした獣がアリエスの視界に入った。
マヌケな顔つきで、胴が長く、手足が短く、中途半端な長さの尻尾はピンっ!と立っているシルバータイガーだ。
その見た目にアリエスは、「やべぇ、ちょー和む。これ、絶対ほしい!!」と万物鑑定を後回しにして決意したのだが、鑑定した結果、ただのネコ科の獣なのでそこまで値段が競り上がることはないと思っている。
オークションが開始され、静かに、それでいて白熱したやり取りが続き、段々と参加者のボルテージが上がっていくのだが、アリーたんは我関せずだ。
というのも、アリーたんが欲しかったマヌケ顔のシルバータイガーは、初っ端に金貨8枚で出品されたのだが、それほど奮わず金貨14枚で落札できたため、もう後の出品物はどーでもいいのである。
落札したシルバータイガーをタオルを首にかけるようにしてデロンと肩に回し帰途についたアリーたん。
名前は「ムー」と名付けたのだが、フランス語で柔らかいを意味する。
クタクタのテロテロで、ほにょん……としたネコ科の獣であるムーちゃんのサイズは、スタンダードな枕サイズである。
アリエスにクタっと担がれながらゴロゴロと喉を鳴らしている、本当に何の変哲もなく、秘めた力もない、ただのネコ科の獣なのだ。
新たな仲間にご満悦なアリエスが座るソファーの隣で、ロッシュはひたすら文章を書いている。
その表情は真剣ながらも冷ややかさが混ざっているのだが、彼が書いているのはハルルエスタート王国国王陛下に宛てたものである。
普段ならば楽しそうにアリーたん日記を彼女の父ちゃん宛に書いているのだが、今回ばかりはそうも言っていられないのだ。
今回アリエスが参加したオークションに出品されていた中に、巧妙に隠された
表面上は契約主と結ばれているように見えるが、紐付きの紐を持っている相手の指示を優先するので、とても危険なのだ。
しかし、アリーたんに見つかってしまえば、オワタ!な結果になることは間違いない。
「んふふっ♪」と楽しそうな笑いをこぼすアリーたんは、「父ちゃんへのお土産、もう一個増えたな」とご機嫌である。
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