第五話 ガラクタ市で落札したもの
ガラクタ市で落札したのは、女性のミイラ(金貨5枚+銀貨1枚)、腐った花(銀貨5枚)の二つなのだが、清算を済ませ品物を受け取って馬車に乗り、しばらく経ってから、「やった!やったぁ!!父ちゃん喜べーーー!!」と、アリーたんのテンションが凄かった。
ミイラと腐った花という組み合わせで「父ちゃん喜べ」である。
何か恨みでもあるのか?というようなチョイスなのだが、ロッシュもクイユもアリエスの万物鑑定スキルを知っているので、「そこまで喜ぶということは、相当凄いものなんだろうな」くらいの認識である。甘い、甘いぞ、二人とも。某国のシロップ漬け激甘ドーナツに更に練乳と砂糖をぶっかけたよりも甘いぞ!うへぇ。
アリエスが落札した女性のミイラだが、これは古代マリリアント聖国の聖女マリーナ・ブリリアント様、御本人である。
万物鑑定の結果は「聖なる遺物」となっているが、即身仏と同じような過程を経ており、この聖なる遺物のそばには消えかかっているが、聖霊マリーナ・ブリリアント様がいるのだ。
ちなみに、消えかかっている聖霊マリーナ・ブリリアント様は、膝を抱えて泣いている。「なんで寝かせて置くの?私、立ったまま聖なる遺物になったのに。頑張って立ってたんだから、立たせて置いてよぉ……」と、嘆いている。
胸の前で手を組んで祈りを捧げた格好のまま聖なる遺物になった、とんでもないお方なのである。
これをどうするのかといえば、霊廟を建てて、マリーナ・ブリリアント様を立たせて安置し、その真ん前にデテン!と落札した腐った花を置き、聖属性の魔力をミイラと花に、たっっっぷり!!与えるのだ。
そうすると、「腐った花」は、「
顕現して、それからどうなるのかといえば、マリーナ・ブリリアントは聖女だったので、怪我どころか全てを癒してくれる。
それこそ毒から精神から、病まで癒してくれるが、寿命だけは、どうにもならない。
そう、病が治るということは、父ちゃん無敵である。もう、寿命以外で亡くなることは、ないと言っても良いだろう。
それを帰ってからテンション高めに皆に説明するアリーたんが可愛い、で終わるメンバーたち。相変わらずの感染力である。
善は急げとは言うけれども、梱包しての旅路に聖霊マリーナ・ブリリアント様が耐えられるか不安が残るほどの状態なので、弱いとはいえ聖属性を持っているアリエス、ロッシュ、ベアトリクスで少しずつ回復させることにした。
だが、きちんと立てて置いたので、聖霊マリーナ・ブリリアント様は消えないように頑張ってくれた。よほど寝かせて置かれるのが我慢ならなかったのだろう。
なんとか聖霊マリーナ・ブリリアント様が消えずに済んだことを確認したアリエスは、リビングのソファーでダレている。
テンション上げ過ぎたのと、慣れない聖属性の魔力を込めたために力尽きたのである。
ダレたままのアリエスはロッシュに、「消えずに済んだけど、梱包して送るのはやっぱりダメだと思う。聖霊の本体?だからさ」と言った。
それに対して珍しく少し額に汗が浮いたロッシュは、「それでしたら、ご婚約披露パーティーが開催されるときに持ち帰っていただくのはどうでしょうか」と返した。
ロッシュもさすがに属性能力の弱い聖属性の魔力を込めるのは、少々キツかったようだ。
婚約披露パーティーって、誰の?と疑問符を浮かべたアリエスにロッシュは、ハルルエスタート王国王太子殿下の娘である王女と、ルナラリア王国の第一王子の婚約が決まったこと、その披露パーティーがルナラリア王国の王城にて春の始め頃に行われることを説明した。
そして、この婚約のきっかけになったアリエスに、どうしてもお礼が言いたいと王女が面会を望んでいることも話した。
それを聞いたアリエスは、「そんなの気にすることねぇのに。んじゃ、春までオークション堪能するか。預かったお金、全然減ってねぇし」とニンマリと笑った。
オークション「ガラクタ市」で使ったのは、たった金貨5枚+銀貨6枚なので、父ちゃんからの軍資金はたんまり残っている。
金貨6枚でおつりがくる金額で、聖霊マリーナ・ブリリアント様が顕現するものを買ったと知れば、父ちゃんは大爆笑することだろう。さすがは、俺の娘だ、と。
聖霊マリーナ・ブリリアント様は顕現することが出来れば、
つまり、霊廟にある本体と
聖霊マリーナ・ブリリアント様を背に父ちゃんが前線に出て来るようなことがあれば、もう無敵だろう。
アリーたんは、なんというものを父ちゃんにプレゼントしたのだ。
今回のアリーたんへのお小遣いは父ちゃんの財布から出ているので、彼女が聖霊マリーナ・ブリリアント様セットを父ちゃんにあげるとなると、所有権は完全に父ちゃん個人のものになってしまう。
ということで、聖霊となった聖女様を従えた超絶美形国王の爆誕である。
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