第四話 パーティーメンバー

 ルシオ、カミロ、カルラを伴って、マルテリア王国にて借りている貸別荘へとやって来たアリーたん。


 ダンジョンへ半年近くも潜っていたためにアリエスの資産は更に増えているのだが、未だにロッシュに丸投げのままである。

奴隷から解放された者たちは現在、仕事振りにあわせてお金を配当されることになっているが、そのさじ加減は執事であるロッシュによって適切に行われるので心配いらない。


 ただ、クララとアドリア、ミストの3人は幼い頃から奴隷だったために、お金の使い方がイマイチ分かっておらず、慣れるまでは誰かが付き添って買い物に行くことになっている。

自分でお金を持つことに慣れておらず少し、いや、かなり挙動不審になってしまうのもあって、お金を自分の手で持つことから練習していたくらいなのだ。


 洒落しゃれた外観の見るからに高そうな貸別荘にルシオたちは、「ロシナンテへ入るのも気後れしたが、こっちもこっちで変わらねぇんじゃ……」と、ちょっぴり引いていた。


 貸別荘のリビングへと皆で入ると、すかさずテレーゼとアドリア、クリステールがお茶の用意にリビング横の対面キッチンへと向かったため、新参者であるカルラもそっちへ行こうとしたのだが、ロッシュからパーティー編成の話があるだろうからと、椅子を勧められた。


 この貸別荘には厨房や応接室などがあって、貴族仕様な部分もあるのだが、今アリエスたちがいるように対面キッチン付きのリビングもあって、冒険者にも対応しているのだ。


 メンバーが更に3人増えたのだが、カミロは「修繕士」といわれるタイプで、作ることまでは出来ないが武器や鎧、マントや服など、装備を修繕することが出来る職人なのだが、職人から言わせれば器用貧乏と揶揄され職人とは認めてもらえないのだ。

しかし、少人数でパーティーを組んでダンジョンに潜っている者たちにとって、カミロのような人材は喉から手が出るほど欲しいものだったりする。


 つまり、カミロはディメンションルームでの待機組になるので、パーティーに組み込まれるのはルシオとカルラになる。


 ルシオは柄の長いメイスを持っていることから分かるように、「殴り神官プレイ」という回復しながら相手をタコ殴り出来る。

前衛でメイスを使用したり、火属性と水属性の能力が高いので魔法アタッカーも出来るし、中級程度の回復魔法も使える。アリエスと同じでポジションはどこでもやれる頭のオカシイ人材である。しかも回復まで使えるのだから、更におかしさはアップしているだろう。


 カルラは、双剣使いの前衛アタッカーで、ポジションはクイユと同じになるが、属性能力は少し低く魔力も少ないので、その分を二刀流でカバーしている。


 アリエスサイドのメンバー構成はというと、盾役にバルト、遊撃にクイユ、前衛物理アタッカーにハインリッヒ、後衛物理アタッカーにハンナ(弓)、後衛魔法アタッカーにチェーロ、回復役にクララ、その護衛にスクアーロとミロワールで、アリエスはやりたいように攻撃する。

竜骨モーニングスターで殴るか魔法をブッパするかのどちらかだ。


 クリステールは、劣化版とはいえ女体化ブレスレットを手に入れたため、冒険者としての活動は戦闘ではなく裏方に回った。

つまり、なんだ。テレーゼ監修による花嫁修業中だ。


 以上のことを紙に書き出してみたアリエスは、腕を組んで「うーむ」と悩み始め、それを見たハインリッヒが何が気になるのか聞いた。


 「後衛の物理アタッカーがハンナしか、いねぇんだよなぁ」

「ああ、そうだな。アリーの投擲とうてきじゃあハンナほどの威力は出せねぇか」

「いや、あんなんバリスタじゃん。攻城兵器みてぇな威力が出てんの、おかしくね?」

「うふふふ、私、大工だからね!」

「いや、大工の要素どこにあんだよ!?」


 珍しくアリエスがツッコミ役をしている。


 前衛物理アタッカーにカルラが増えるとなると状況によって、アリエスが物理か魔法アタッカーにチェンジできるし、ルシオを回復に回すことも出来る。


 となると、やはり後衛の物理アタッカーがもう一人欲しいというところだが、急いで探す必要はない。


 というのも、この世界はスキルなどのレベルはあるが、肉体のレベルはないので、無理して強敵を倒して経験値を稼ぐ必要はないのである。

つまり、身の丈に合ったものを狩ればそれほど危険はないので、精々が不測の事態に備えて予備戦力を確保しておくくらいなのだ。


 欠損すら治せてしまえるクララと魔力回復薬があれば、即死以外は対応できるし、本気でヤバければディメンションルームへ逃げれば済む話なのだが、アリエスは「命、大事に」を一番に掲げているので、今のところ危機に瀕したことはない。


 むしろ、念には念を入れ過ぎて、よく冷凍肉にしてしまっているくらいである。


 命は一つしかないのだし、危ないよりかは良いだろうと、ハインリッヒはあまりうるさく言ったりはしないが、よく爆笑している。

笑いの沸点が低いのだろうが、戦闘が終わるまでは笑いに蓋をしているところは、さすがミスリルランクである。


 能力の使い道が相変わらずオカシイのもミスリルランクだからだろうか。

それともアリーたんに感染しているからだろうか。


 新たなメンバーが感染後どうなるかが楽しみである。

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