第四話 ゴクリ……
翌日、冒険者ギルドまで来たアリーたん御一行様。
ギルドにて出迎えたのは、副ギルド長とクラン"ロシナンテ"のザザとハインリッヒだった。
アリエスは、ザザとハインリッヒに挨拶して買い取りカウンターまで行こうとして、副ギルド長に止められた。
「少しお話を聞かせていただきたいので、上までお願いできますか?」
「それって、どういう種類の命令なんですか?ダンジョンを攻略した冒険者全員から話を聞くんですか?」
「いえ、そういうわけではありませんよ。半年近くも補給に戻らず攻略したとのことで、それについて少しお話を聞かせてもらえればと思いましてね」
「手の内を晒せってか?マナー違反じゃねぇのか?」
あからさまに不機嫌な態度になったアリエスの後ろでは、ザザがバルトとスクアーロに疑問をぶつけていた。
元冒険者だった二人がいて、何故、補給もせずに一度も帰還させずにぶっ通しで攻略なんぞをしたのかを問い質したのだが、返ってきたのは、さもありなんな返事だった。
「奴隷が
しかし、ザザが言いたかったのは、そんなことではない。
ぶっ通しで攻略することの危険性をアリエスに何故言わなかったのか、ということなのだが、ザザが想定している危険性なんぞアリエスには関係ないのである。
それを言うのは、アリエスの手の内を明かすことにもなるので、二人は何も言わない。
だが、バルトとスクアーロは、あんたらは、アリー様をナメ過ぎだと、ロッシュ様が一緒なのが気に入らなくてアリー様がどれほどの人なのか全然見ていないと、だからこそ補給ナシのぶっ通し攻略を止めなかったし、それを可能にするだけの力も持っているから
それを聞いてザザはアリエスの持つ能力が気になったが、もう教えてもらえる関係性を築くのは無理だと思った。
ハインリッヒに向ける視線とあきらかに違う無機質な、ただ言葉を交わしたことがあったから、ついでに挨拶したと言わんばかりの挨拶をされたのだ。
そんな空気をぶった切るようにしてロッシュは思いもよらない言葉を発した。
「
「ん?ロッシュ、それって、どういう意味なんだ?私は王族籍を抜けて冒険者になったじゃん」
「ほっほっ、国籍と家系図は別でございますよ。お父君である現ハルルエスタート王国国王陛下が我が子に値しないと判断された者は、国籍があろと無かろうと家系図から抹消され、王族として生まれたことすら否定されます。つまり、家系図に名が残されている
「うぁ、マジか。あの超絶美形の国王がまだ父ちゃんなのか」
大国ハルルエスタート王国の国王陛下を相手に「父ちゃん」などという呼び方をするのは、世界広しといえどもアリーたんくらいのものである。
ギルド内にいるアリエスの身内以外、全員が固まってしまっている。
「左様でございます。何かを強制するようなことはないとのことですが、
「それって、仕事に飽きてんじゃねぇの?」
アリエスの的を射た発言に笑顔で返すロッシュ。
つまり、周囲が問題を起こせばそれをネタに発散に来るということである。
せっかくハルルエスタート王国の宰相閣下が
ロッシュの話とアリエスの返事に顔を引きつらせて固まる副ギルド長。
補給ナシでダンジョン攻略できるなら輸送隊として雇おうと算段していたのだが、それがご破算になった瞬間であった。
取らぬ狸の皮算用である。
これ以上は無理だと判断した副ギルド長とザザは引いたが、ハインリッヒは楽しそうにアリエスに声を掛けた。
「あのデカブツをブッ叩いて素材をダメにしてねぇだろうな?」
「失礼な。素材が取れるやつはちゃんと魔法で狩ってるっつーの。まあ、冷凍肉になっちまったけど」
「ぶはっ!やっぱ加減間違えてんじゃねぇかよ!」
腹を抱えゲラゲラ笑うハインリッヒにアリエスは、「そんなこと言うんなら、おじちゃんにお土産やらないんだからな!」と頬を膨らませた。
それを聞いたハインリッヒは嬉しそうに、「悪かったって!お土産って何だ?あのダンジョンそんな珍しいもん出たか?」と首を傾げている。
アリエスは、ふふん!と胸を張ると、「めっちゃイイもん出た!」といって、とあるブレスレットをハインリッヒにはめた。
そう、はめちゃったのだ。
取り外し可能とはいえ、ハインリッヒよ、油断し過ぎである。
ブレスレットをはめられたハインリッヒは、「ぐぁっ!!?」と呻き声を上げたかと思えば、その身体が膨らみ始めた。身体というかお胸が。
アリエスが隠された宝箱から回収してニンマリしていたのが、ハインリッヒにはめたブレスレットである。
効果は「女体化」である。
女体化といっても子供が産めるようにはならないのだが、見た目は完全に女性になるため
それなりの顔をしているハインリッヒだったが、女体化ブレスレットの効果に付随している「美形」が加わった結果、妖艶な美女に変化した。
上着を押し上げる、たわわに実った二つの
どこからともなく、ゴクリと喉を鳴らす音が響いたのだった。
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