第二話 状況
フユルフルール王国からの干渉は、アリエスの父ちゃんが釘をブッ刺してくれたことにより解消された。
そのことがロシナンテを経由してロッシュのところへと届けられたことで、アリエスはやっと狩りに出られるようになったのだ。
狩りを終えて、バルトとアドリアがブラッディ・ライアンによって血抜きがされた獲物を解体しているのを横目にアリエスは、ロッシュから詳しく話を聞いていた。
「じゃあ、もうフルフルが接触して来ることはねぇのか」
「はい、大丈夫でございます。ハルルエスタート王国国王陛下より、『親孝行、感謝するぞ』との御言葉も賜っておりますよ」
「親孝行って、そこまでのことしたか?」
「フユルフルール王国がルナラリア王国との交渉を上手く運べていれば、食糧支援によるハルルエスタート王国側の優位性は少し下がったでしょうからね」
下がったところで何の問題もないが、それだと面白くはないということで、それを結果的に阻止したアリエスの行動にご満悦な父ちゃんであった。
それに、アルケミュラント家が実質無くなったとなれば、フユルフルール王国で作られる魔道具は、ハルルエスタート王国国内の錬金術師たちでも太刀打ちできるレベルにまで落ちる。そのことでも父ちゃんはニンマリしているのだ。
アリエスは腕を組んで首を傾げると不思議そうな顔で、「ミストを寄越せとは言われてねぇの?」とロッシュに尋ねたところ、知識のみで良いということだった。
「錬金核などの設計図を買い取りたいとのことでございますが、如何がなさいますか?」
「んー。なあ、ライアン!知識を買い取るって父ちゃんが言ってきてんだけど、どうする?」
「お金貰ってもねぇ。それに、平民になったところでパパ共々アリー様の庇護下に置いてもらうことになるから、今とそんなに変わらないよ?」
「だよな。……ロッシュ、どうすりゃ良いんだ?」
「そうでございますね。では、知識を分散させてお売りするのは、いかがでございますか?」
ロッシュが提案したのは、錬金核の設計図とそれを作るための道具の設計図をハルルエスタート王国へ、魔力過多症の治療院に置くために魔力を吸収する安全性の高い魔道具の設計図をルナラリア王国へ売るというものだった。
その他にもロッシュが仲介することでダンジョン都市ドリミア領主へも設計図を売れると言われてアリエスは、「んじゃ、それでヨロシク!」とあっさりと決めてしまった。
そこでアリエスがふと思い出したのは、ルナラリア王国がフユルフルール王国へ魔道具を依頼したのはどうなるのか、というものだったのだが、「まあ、それ私に関係ないしイイか!」とスルーした。その話自体は既になくなっているとはいえ、そういうところは相変わらず酷いアリーたんだった。
丸投げされたロッシュであるが、彼は執事である。
つまり、アリエスの財産管理もしているのだが、彼女はインベントリに入れてある支度金と転生者特典のお小遣いの残りが全財産だと思っている。
んなわけあるかいっ!!というツッコミを入れたいところだが、アリーたんは無頓着なのでその辺サッパリなのだ。
前世で働いたこともなく、欲しいものがあれば兄か姉に言えば買ってもらえていたのも原因かもしれない。
元ヤンキーということもあり、痛みや血に慣れているし、攻撃することにも躊躇がない。
しかも、魔力量も年々増えてきているため魔法もブッパしまくり、モーニングスターで近接戦闘もやれるので安定して狩りを行える上に、ロッシュ、バルト、クイユがサポートに入り、ロシナンテのメンバーもいる。
危険がないどころか
だが、何故ここまでアリエスが自身の稼ぎを把握していないかといえば、彼女の中で、ロッシュから手渡される毎月のお小遣いが、「ロシナンテのメンバーと自身のメンバーとを合わせて頭割りした報酬」だと思っているからだ。
実際はアリエスの総取りになっているのだが、何故そうなったかといえば、ロシナンテが宿代と食事代の代わりに報酬を辞退しているというのもあるが、彼らは護衛任務中なのだ。
護衛中に狩った獲物は一旦雇い主に全て預け、任務完了後に報酬へ上乗せされることがほとんどなのだが、彼らは感染者である。
つまり、アリーたんへの貢ぎ物なので、報酬はいらない。むしろ、アリーたんのディメンションルームで一緒に生活しているだけで、「でゅふふふ」状態な者もいるくらいだ。変態がいる。
ロッシュとテレーゼはアリーたんの側仕えになれているだけで大満足なので、報酬を受け取るつもりは、さらさら無い。
そして、奴隷は
ということで、ロシナンテがディメンションルーム内へと入るようになってから、格段に収入が増えているのだが、アリエスは全く気付いていないどころか、さっさとシルバーランクにまで上げないと小遣いが減るばかりだと思う始末。
むしろ増えていることに、さっさと気づけ。
しかも、設計図を売れば更に増えるのだが、恐らくアリエスは自身の収入になっていることに気付かないだろう。
だったら、誰の収入になっていると思っているのかと問うてみても、「さあ?」と返ってくる未来しか浮かばない。
ロッシュが側におらず、ベアトリクスとサスケしかいない状況ならば色々と自分なりに頑張って考えただろうが、デキる執事ロッシュがいるためについつい丸投げしてしまうのである。
しかし、ロッシュはアリーたんに扱き使われて喜ぶ、困った爺さんなので、改善されることはないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます