第五話 一緒に
ブラッディ・ライアンから更に詳しい話を聞き終えたアリエスは、ポリポリと頭をかいて、「ま、いいか。改めてヨロシクな!」とスルーした。
ミストの祖母の弟が、アルケミュラント家の跡継ぎだったのだが、若くして事故で亡くなっため子供がいなかった。
そのため血筋を絶やすわけにはいかないと、ミストの祖母が娘を産んだときに、その娘を嫁として貰い受けるために曾祖母が自分の実家から養子をもらったのだが、それがミストの父親なのだ。
つまり、正当な跡継ぎは、ミストの祖母から産まれた子供にしかいない。
ミストがいなくても母方の親族がいるだろうから問題ないとアリエスは判断したのだが、それをブラッディ・ライアンは否定した。
「あはははっ、僕がいなければ引き継げないよ?」
「引き継げないって、どういうことなんだ?」
「あのね、アリー様。僕を正当な当主の遺体に刺すことで引き継がれる知識があるんだけど、それは脳に直接焼き込まれるの。それが無ければ『錬金核』は作れないんだよ」
「怖っ!えげつなっ!?めっちゃ、えげつねぇな。跡継ぎになんてことさせるんだか」
「それだけ僕がお父さんに愛されていたってことなんだよ。でも、アイツらは血族じゃないから知識をやるつもりはないし、ましてや
自身の母が産後の肥立ちが悪くて亡くなったのではなく、殺されていたことを知ったミストは涙を流したが、ブラッディ・ライアンが一生懸命に慰めていた。
これを見るとパパと息子が逆に思えるが、これも仕方がないだろう。見た目は3歳だが、ブラッディ・ライアンはアルケミュラント家初代の息子なのだから精神年齢で言えば何歳なのか皆目見当もつかない。
ブラッディ・ライアンが言っていた錬金核というのは、フユルフルール王国で作られている冷凍庫や冷房装置に必要不可欠な部分で、彼から焼き込まれる知識なしに作れる代物ではないのだ。
今は、正当な跡継ぎが一人前になるまでとの思いから、亡くなった先代が作り貯めておいてくれたもので間に合っているが、それもいずれ底をつく。
そのときになって慌てても、儀式をするためのブラッドアイアンも無ければ血筋でもないため詰むことになる。
両手でマグカップを持って甘々ココアのホイップクリーム乗せを飲んでうっとりしていたブラッディ・ライアンは、「王にこのことがバレたら、アイツらは大変では済まないことになるだろうね」と、嗤う。
「左様でございますね。フユルフルール王国主力商品である氷鉄鉱を使用した冷凍庫などの核となる部分を作れないとなりますと、最悪、外交問題にまで発展するかと思われます」
「え、あれ?ねぇ、待って、ちょっと待った。知識って当主の遺体をブッ刺して得るんだよね?てことは、ミストが老衰とかで死んでからの話ってことじゃね?」
「ひぇ……っ」
アリエスの発言で、自分がブッ刺されることを想像して顔を青くしたミストが情けない声を出したが、ブッ刺されることがあったとしても亡くなってからだぞ。
アリエスが言いたいのは、正当な跡継ぎが一人前になるまでというのは、ミストの子供もしくは孫が、亡くなったミストをブッ刺して知識を得てからのことを指しているのではないか、ということだ。
「つまり、詰むのはまだ先の話になるんじゃね?発覚した頃にはどうにも出来なくなってるだろうけど、ライアンはミストが死んだらどうするんだ?」
「パパと共に逝くよ。お父さんの念願とはちょっと変わってしまったけど、ホムンクルスとして新たに生まれたことに違いはないから。知識は、パパにあげるから好きに使ってね」
「そっか。ミストが何か作りたいなら材料は用意してやるからな。遠慮なく言えよ?」
「あ、はいっ!ありがとうございます、アリエス様」
ブラッディ・ライアンは、ミストに「お父さん」を感じていたのだが、それもそのはず、ミストは血族というだけではなく、そのお父さんの生まれ変わりなのだ。
だからこそ、錬属性を持っていたともいえる。
ライアンは永い永い時を経て、お父さんと再び会えたのだ。
だからこそ、
もう、二度と離れ離れになる悲しい思いはしたくないから。
こうして真っ裸の幼児事件は幕を下ろしたのだが、さすがに3歳児用の服がなかったため、急遽お買い物アプリで購入したので、ブラッディ・ライアンは着ぐるみパジャマを着ている。
フードの上には黄色いヒマワリがででん!と咲いていて、茎をイメージしたのか全体的に黄緑色なので、どう見てもカッパである。
しかし、この世界にカッパはいないし、カッパを知るものはいない。
頭にお花が咲いた可愛いだけのパジャマである。
ブラッディ・ライアンはホムンクルスとなったことで血を
半魔物化したホムンクルスなので排泄はしないのでトイレの心配もいらないと知ったアリエスが、「おねしょの心配いらねーな」と言ったためにムチムチの小さい手でポコポコと殴られていた。
そんなブラッディ・ライアンは、今は
ただ、クイユがちょっぴり寂しそうな雰囲気をしていたのでクララが母性を出して一緒に寝ようとしたのだが、クイユが必死で止めていた。
クララの雰囲気がどう見ても男女の色をまとわせたものではなく、かあちゃんの顔をしていたからでもあるだろう。
クララよ、君の見た目がいくら幼くとも、もうすぐ成人の15歳になるのだがら、節度を持った対応をしような。
クイユは、息子ポジションだが、息子ではないのだぞ。普通にオオカミなんだぞ。
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