第四話 ベッド買っただけ
夕食も済み、ロシナンテのメンバーは自分たちのテントへと入り、アリエスたちはディメンションルームへと入った。
昼間にベッドを買おうとして迷っていたアリエスであったが、ひょんなことから候補がごっそりと減ったのだ。
その理由が身長にある。
即買いだろうとアリエスがぽちったクララ用の姫ベッドがゴスっ!と床に置かれた後に「なんか、ちっちゃくね?」と違和感を覚え、サイズを改めてお買い物アプリで確認した結果、普通のシングルベッドだった。
つまり、自分が思っているよりもデカイのでは?と判断したアリエスは、お買い物アプリで5mメジャーと安い合板を買った。
その合板を壁に押し付け、そこに背中をピッタリとくっつけて、テレーゼに頭のところに印を付けてもらいメジャーで測ったところ、アリエスの身長は170cmほどあった。
それを見たアリエスは、自分よりはるかに背が高いバルトはおそらく2mを超えるだろうと判断し、皆の身長を測るまではベッドを買わないことにした。
そして、現在の時刻は19時30分を過ぎた頃。
寝るにはまだ早い時間なので、これから全員の身長を測ることに。
一番背が高いバルトから順に測った結果、バルトが熊耳まで入れて223cm、ロッシュが198cm、クイユが193cm、テレーゼが174cm、アドリアが163cm、クララが146cmだった。
クララ、ちっちゃ!
おそらくクララに買ったベッドのサイズは問題なかっただろうと思ってはいたが、きちんと測った結果を見て安堵のため息をもらしたアリエス。
「クララ。ちゃんと食べて大きくなるんだぞ」
「あ、はい!毎食、幸せなほどたくさん食べさせていただいておりますよ!」
「そっか、そっか。んで、アレ。アレがクララ専用のベッドな」
うんうんと、頷くアリエスがクララに「アレ」と指さした先にあるのは、夢かわいい姫ベッド。
白いアイアンフレームに淡いピンク色のベッドカバー、カバーと同じ色の3段フリルで四隅にはクリーム色のリボンがついた布団、ピンク色と白色のハート型のモコモコクッションが2個枕元に置かれ、淡い水色のオーガンジー生地に銀色のラメでスターが散りばめられた天蓋付き、それを縛るタッセル付きの紐には薄紫色の花まで添えられている。
奴隷にあまり高いものを買い与えるなとロッシュとテレーゼに言われていたので、アリエスが買ったのはお値段39800コインの品だ。
しかも、フルセットでこの値段である。
「こ……っ、これ、これに、私が!?アリエス様のベッドではないのですかっ!!?」
「いや、私にこんなベッドで寝る趣味ナイナイ。前世が男だったって言ったじゃん。ムリムリ。というか、これに寝るクララを見たい!」
願望と欲望、ダダ漏れである。
こんな素晴らしいベッドが金貨4枚でおつりが出るとは、異世界ってスゴイ!!と感動する皆だが、確かにこの世界で同じような品を用意しようと思えばいくらになるか分かったものではない。
向こうが透けて見えるほどのオーガンジー生地だけでも目玉が飛び出る金額になるだろうし、モコモコクッションに至ってはマイクロファイバーなので代用品があるか疑問である。
クララのベッドはこれで良いとして問題はバルトである。
シングルベッドを3個ほど並べればサイズの問題は解消されるだろうが、耐久性に不安が残る。
アリエスがお買い物アプリで店舗別検索して表示させたのは、前世に兄と姉と一緒に行った大型の高級家具店である。
背が高い康一は普通のベッドでは足りず、かといって寝心地の確認できないネットショップは嫌だということで、その店へ行ったのだ。
高級家具店といってもリーズナブルな商品も置いてあったと記憶していたアリエスは、ベッドに絞って閲覧してみた。
その中でバルトが使えそうなのは、組み合わせ式のフラットベッドだった。
夫婦二人の間に子供を置いて寝られるようになっており、耐久性もあると書かれていたのだが、ベッドとマットレスだけで68000コイン也。
「ぽちっとなー」
「にゃう!!」
懲りないアリエスである。
クララのベッドを購入したときと同じように、ベアトリクスに咥えられてから気付いている。
座って買うから避けられないのであって、購入時だけ立てば良いのだが、商品を選んでいるうちに忘れるのだ。
ドサっと置かれた組み立て前のベッド。
説明書の漢字が読めなくても組立図を見れば出来そうだと判断したロッシュの指示のもとクイユとバルトが作業を開始した。
アドリアに選んだベッドは、クララと同じシリーズのちょっと大人っぽい雰囲気の天蓋付き姫ベッド。お値段は39800コイン。普通サイズは安くて良い。
クイユには190cmの人でも安心して寝られますとあった、ロングサイズのシングルベッド、マットレス付きのを購入した。
ロッシュとテレーゼには、ベッドフレームの他に「雲の上の安らぎを」との謳い文句が書かれていたマットレスを選んだのだが、これを見たアリエスは、「雲の上って、死んでね?安らかに眠れってか?冗談キツイぜ」とつぶやいていた。お値段はマットレス1つだけで10万コインである。
アリエスが自分用に選んだのは、デスクと収納付きロフトベッドで、周囲にカーテンが備え付けられており、そこで着替えも出来る。お値段296000コインとお高めなのだが、これは前世で兄の康一に買ってもらったのと同じなのだ。
ベッドとマットレス、カバー、布団一式で合計85万コインの出費となった。
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