2 冒険者になります

第一話 努力したこと

 あれから3年が過ぎ、アンネリーゼは13歳になっていた。


 支度金も全てインベントリにて貯金し、転生者特典で貰った資金でやり繰りするようにしていた。


 ディメンションルームは少し広くなり20畳ほどになったのだが、未だにクッションベッドやキャットタワーなどしか置いていない。

ただのペットルームである。


 アンネリーゼは結局、冒険者になると決めたので、ロッシュが伝手を使い、一度だけ冒険者から手ほどきを受けることが出来たのだが、その冒険者からも戦闘奴隷を購入するようにと念を押された。


 王宮の敷地内で生活しているので少々常識に疎いところがあったのと、容姿が整っているためだった。


 所持属性は、氷、雷、炎、聖、闇の順番で弱くなっていっており、髪色には氷属性が入っていると判明した。


 これが分かったのは、アンネリーゼが自身の抜けた髪の毛を鑑定してみた結果である。


 転生者特典で得たスキルはもちろんのこと、自分なりに努力した結果、新たなスキルも習得した。


************


名前:アンネリーゼ・リザレブ

年齢:13歳

性別:女

職業:ハルルエスタート王国第16王女(準王族)

属性:氷、雷、炎、聖、闇


 スキル

剣術Lv1、鎚矛つちほこ術Lv2、投擲とうてき術Lv2、採取Lv2、料理Lv8、夜目Lv3、毒耐性Lv2、気配察知Lv5、魅了Lv4、幸運Lv6、体術Lv2、気配遮断Lv3、変声Lv5、身体強化Lv2、登攀とうはんLv1


 特殊スキル

万物鑑定、お買い物アプリ


 召喚獣

ベアトリクス(種族:ウィンドリオン)、サスケ(種族:ストーンチップ)


************


 体術、気配遮断、変声、登攀とうはんの4つのスキルは、前世を思い出してやってみたら取得できたもので、新たな召喚獣サスケは登攀訓練中に裏庭で出会ったリスである。


 ストーンチップは、自身の身を守るため敵の目にストーンバレットを撃ち込む土属性のリスで、かなり気性は荒いのだが、アンネリーゼがおやつに持参していた異世界産のナッツにメロメロなため、彼女にべったりだ。


 そんなこんなで13歳になったアンネリーゼは今日、初めて城下町に出る。


 城下町に行くにあたってアンネリーゼはロッシュに頼み、護衛を兼ねた案内人の依頼を冒険者ギルドに出してもらっており、それを受けた者が城門前まで迎えに来てくれているはずなのだ。


 アンネリーゼがロッシュの案内で城門から出るとそこには、身綺麗な格好をした中年男性が立っており、どうやら彼が依頼を受けてくれた冒険者のようだった。


 「はじめまして、アンネリーゼです。今日は、よろしくね」

「はい、アンネリーゼ様。私は冒険者ギルド所属のゴールドランクでガザンと申します。よろしくお願いします」


 ガザンは、貴族からの依頼を受けることが多いため、身嗜みには気をつかっており、言葉遣いや態度も丁寧なことから今回の依頼を指名されたのだが、アンネリーゼは指名依頼ではなく、ガザンが普通に掲示されている通常依頼を受けただけだと思っている。


 アンネリーゼは、満面の笑顔でロッシュに「いってきます!」と手を振ると、ガザンの隣に移動した。


 ガザンは、始めに今回の依頼を聞かされたとき、「ああ、いつものお貴族様のお戯れか」と思ったのだが、依頼を受けることを了承し、詳しい話を聞いたことで頭を抱えた。


 平民で知っているものは少ないが、貴族と関わりがあるものは知っているのだ。

通称出涸らし小屋と揶揄される王宮の離れに住まう、正当な王族と見なされない準王族の王子王女たちがいることを。


 そして、その準王族の子たちは、属性能力が低く、武力で身を立てるのはほぼ不可能に近いので、必死で努力して文官を目指すか、平民として商店に就職するか、王女ならばどこかへ嫁ぐしかない。


 そんな準王族の王女が冒険者になろうとしており、今回は城下町の案内と可能ならば冒険者登録をしたいと言うのだ。


 冒険者の仕事は、高ランクの魔物を倒して華々しい活躍をするような生活ではなく、キツく地味な上に危険が伴う、命の軽い仕事なのだ。


 今日は現実を見させて冒険者になることを考え直してもらおうとガザンは決意していた。


 しかし、そんなガザンの決意は、もろくも崩れ去ってしまうのだった。


 本来ならば、城下町を散策して可愛らしい雑貨屋にでも連れて行き、流行りの店でお茶をさせたら城門前まで送って終わらせるのだが、アンネリーゼが冒険者になるとのたまっているので、ならば、現実を見せちゃる!とばかりに平民地区にある冒険者ギルドへと連れて来たのだ。


 可愛らしい容姿のアンネリーゼが絡まれないわけがなく、さっそく絡んできたガラの悪い下っ端冒険者に、最初は取り繕っていたアンネリーゼだったが、仁だった頃から短気だったので、早々にブチ切れた。


 「てめぇ……、さっきから下手に出てりゃあイイ気になりやがって、ぶっ殺っそ、ゴルァ一ーー!!」


 ちなみに、アンネリーゼちゃん。

男のフリして冒険者になろうとしていたので、この3年でイケボなメンズ声を出せるようになっていた。


 結果、どこの組合員ですか?と聞きたくなるほどの重低音を響かせた凄味を出せるようになってしまった。


 もちろんそれを聞いた周囲は、シーーーンとしてしまったのだが、ブチ切れているアンネリーゼたんは知ったこっちゃねぇとばかりに、ここに来るまでの道中で買った、鍛冶屋が面白半分で作った子供用の鉄製モーニングスターを取り出した。


 瞳孔の開いた笑顔でアンネリーゼたんは、「ひき肉にしてやんよぉ」と、モーニングスターを振りかぶったのだった。




 


 


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