第三話 オーブの内容
アイアン級(ノーマル)のオーブはぶどう味だった。
アイアン級5個を食べ終えたアンネリーゼのステータス画面には、剣術Lv1、
「ああ、あれか。物理で殴るとかいうやつか。確か、剣とかって切りつければいいってもんじゃなかったんだよな。骨に当たると刃が欠けたり抜けなかったりするって聞いたことがある。……私には向かないな。
次に食べたのはブロンズ級(ハイノーマル)のオーブで、オレンジ味だった。
得られたのは、暗闇の中でも通常通りに見ることができる夜目Lv1と、毒耐性Lv1というスキルだったことでアンネリーゼは、「これで野営も安心か?私、これでも王女なんだけどな」と苦笑した。
シルバー級(レア)の味は、餡子の入ったくず餅で、得られたスキルは気配察知Lv5だったことでアンネリーゼは、「いや、もうこれ冒険者になれって言われてねぇ?」と笑った。
ゴールド級(スーパーレア)は、蜜たっぷりの甘いリンゴ味で、お腹がふくれたわけではないのに、味だけで満腹感に浸りそうになった。
「スーパーレアのオーブで何が得られたかな?おお?料理Lv1が消えて料理Lv8になってるってことは、ゴールド級の一つは料理Lv7だったのかな?あとは、魅了Lv4……。み、魅了……。マジか、あ、でもあれだな。もふもふをゲットするのに使えねぇかな?」
色恋より食い気のアンネリーゼにとってスーパーレアの魅了スキルは微妙だったようで、少し、いや、かなり引き気味だった。
気を取り直して次のオーブを口に入れたアンネリーゼは、「うわわわわっ!」と、騒ぎ出した。パチパチ跳ねる綿あめのように口の中で弾いたので驚いたのだ。
弾ける味覚を味わってプラチナ級(スペシャルスーパーレア)のオーブから得たのは幸運Lv6。
「運が上がるのか。いやぁ、これは嬉しいわ。当たり所が悪けりゃ死ぬことだってあるんだからな。うはー、ちょー嬉しいわ」
先程、口の中に衝撃を受けたことで次のオーブを食べることを躊躇してしまったが、外が白み始めていることから急いだ方がいいと判断し、思い切ってミスリル級(アルティメットレア)のオーブを口に入れることにした。
構えていたが何も起こらず、口の中に広がったのはゴーヤ味だったため、アンネリーゼは顔を顰めて悶絶した。
「ゴーヤは好きだよ?好きだけど、こんなに青臭くて苦かったかな……?」
こんな思いをして得られたスキルがまた魅了系とかだったら少しどころではないショックを受けそうだと、恐る恐る薄目でステータス画面を確認したアンネリーゼは、拳を突き上げた。
「っしゃ!!さすがアルティメットレアだな。万物鑑定だってよ。へぇー、あらゆるものを詳細に鑑定できる、てことは、このゴッドレアのオーブも鑑定できんのかな……。いや、やめておこう」
万物鑑定でオーブを鑑定したところで内容は変わらないのだが、アンネリーゼがそんなことを知るはずもなく、余計なことをして変なことにでもなったら死んでも後悔しそうだとゴッドレアのオーブを鑑定することはしなかった。
おそらく鑑定したら取り込むのを躊躇したか、下手したらインベントリ内に放置されていたかもしれないので、それで良かったのかもしれない。
アンネリーゼはいそいそとベッドに正座すると、目の前にゴッドレアのオーブを置き、手を合わせた。
「いただきますっ!」
ゴッドレアのオーブを口に入れたアンネリーゼは、蕩けるような顔をして味わっているようだった。
「はぁ……っ。美味でございました。王室御用達ゴールドディーバを超えるチョコレートだった!さすがゴッドレア!!て、違ぇよ。味じゃなくて中身だよ、中身」
あまりの美味しさに何を食べたのかどこかへ飛んでしまっていたようで、ゴッドレアと言ったことで得たスキルを確認しなければならないことに気付いた。
アンネリーゼは、
二度見した。
もう一度見てみても新たに記載された文字に変化はない。
目をこすってみても、外の日の当たらない薄暗い木々を見てから、もう一回ステータス画面を見てみたが、そこに追加された文字は変わらない。
ゴッドレアのオーブから得られたスキル。
ステータス画面には新たに、「お買い物アプリ」と記載されていた。
しばらく固まっていたアンネリーゼだったが、やっとの思いで口にしたのは、「違和感ハンパねぇわ……」だった。
「ちょっと、落ち着こうか。せいせい、落ち着け。何と言おうがゴッドレアだ。スーパーのチラシ情報やクーポンが届くような、そんな類いのスキルじゃねぇはずだ。…………よし、覚悟は決まった!詳細の確認といこうか!」
「お買い物アプリをご利用するにあたって、チュートリアルを推奨いたします」と表示されたことで、アンネリーゼはそれをしようとしたのだが、ここで待ったが入ってしまった。
扉をノックする音が響き、「ご朝食をお持ちいたしました」という声がかけられたのだ。
アンネリーゼは仕方なくステータス画面を閉じると、朝食を受け取るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます