4.先生の家で私は...

 それからというもの、上村先生に誘われてお昼を一緒に食べたり、バーへ飲みに行ったりしていた。いつも、上村先生に奢ってもらっていた。私は先生に甘えていた。


 お昼は、社員や患者も利用出来るレストランで食べた。いつも、二人でたわいのない話をしていた。上村先生はいつも、私が食べる姿を見たり、私がお酒を飲んでいる顔を見てニコニコしていた。


 先生は優しい。

 私はより一層、上村先生に憧れた。


 この状況、あの二人は付き合っていると言われてもおかしくはなかった。


 週末のある日のこと。

 12月の夜で、先生は寒そうにしていた。私はパンツ姿にコート、マフラーに手袋だったので寒くはなかった。先生はローヒールのパンプスに膝下でタイトなスカート、ストッキングだった。首元にはストールを巻き、手袋をしていたが、華奢な体のせいかぶるぶると震えていた。


 いつものバーで先生は私にどんどんお酒を勧めてきた。美味しいものだからついつい私は飲み過ぎてしまった。

 酔った私を見て、上村先生がウーロン茶をオーダーした。大きめのジョッキが出てきて、私はゴクゴクと飲み干した。


 バーを出ても、私はふらふらしていた。

 体は男性なのだから、何だか情けない。


 先生はタクシーを呼び止め、二人でタクシーに乗った。


 行き先は先生の自宅だった。


 タクシーの中で、先生は私にくっつくように座り、私の頭を撫でた。ここまではごく普通の関係だった。


 私は先生の自宅に着いた。

 先生の家は世田谷の一軒家だったが、先生以外に人の気配はなかった。


 家に着くなり、私を大きなソファーに寝るようにと言われた。ソファーに寝ると、私は眠りに落ちた。


 先生はシャワーを浴びに行った。


 浴室から出てパジャマに着替え、私の近くまで来ると、私に毛布をかけた。


 「吉田君...、じゃなかった、さんかしら?」


 先生はクスクスと笑った。


 私の頭を何度も撫で、私の腕を両手でさすり、うっとりとしていた。そして、私の唇にキスをした。先生の舌が私の口の中へと入ってきて、優しく私の舌を絡めた。


「ん、ん...。」


 と言いながら、濃厚なキスをし続けた。そして、先生は自分が眠くなるまで、ずっと私のそばにいた。


 私は、寝たフリをしていた。

 先生が私の頭を撫でた辺りから起きていた。舌は自分からは理性で絡めなかったが、我慢の限界すれすれだった。

 キスがもう少し長かったら、私は先生を襲っていたかもしれない。

 心は女性だとしても体は男性。組み敷くのは簡単だ。しかし、物事には順序という物がある。

 それとも、先生は私に襲われたかったのだろうか。自分の家に男性を招き、私の体を同意なしで触ってきたのだったから。


 先生は、男性の吉田と女性の私、どちらが好きなのだろう?


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