第28話 最後の闘い。それぞれの意思、想い、決意。

「アリティー!!言う事を聞けっ!!」「辞めて、離してっ!!」「また冷水風呂に浸かりたいか?」「嫌だっ!!」「じゃぁ、またお前の代わりにお母さんを水風呂に沈めてもいいのか?」「それは駄目っ…!!」


(アリティー!!よく思い出して!!この世界に来て、アリティは何体の敵を倒したの?あなたはもう弱くなんかない!!それに、あなたの本当の名前は…)


「…そう。あたしはもう昔のあたしじゃない。お母さんだって守れる!!」「何ぃっ!?また反抗するのか、アリティ!!」「あなたはお父さんなんかじゃない。愛情なんて1つもない。あたしの名前はアリティじゃない。本当の名前は…」


『あたしの本当の名前は「アリス」よ。』


大きな水の塊がアリティの父親を囲み、そしてパンっ…と父親共々弾け去った。


アリティ…いや、アリスは父親からのDVをはね除ける事が出来た。言い返せる事が出来たら、今まで怯え、母親と共に腫れ物を触るような生活をしてきたのだろう。よく、頑張った。

アリティは『固い決意』を手に入れた。


「ユキナ、会いたかった。」「タケルさん…」「俺は気付いたんだよ。ユキナ以外心から愛せる女はいない。」「でも、タケルさんには奥さまがっ…」「離婚したんだ。本当に。」


これは、幻影か…?いや、違う。本物だ。

おのばーさんが、一時的に送り込んだ本物のタケルさんに違いない。


「私は、この世界からもう出る事は出来ません。」「俺が助ける。」「私はこの世界で生きていくと決めたんです。」「式場も予約した。ユキナ…これ。」


タケルさんがユキナさんに差し出したのは婚約指輪。

ユキナさんはそれを見た瞬間、戸惑い始める。


「俺の気持ちをどうか受け取って欲しい。」「タケルさん…。」


その時だっだ。


「左江内っ!!」「か、課長っ!?」「一万本の金っ!早く用意しろ!!」「こ、これは幻影だっ!!」「幻影?何を寝惚けた事言ってる!!お前は会社のゴミだ!クズだ!この役立たずがっ!!」


いくらなんでも心が折れそうになる。

だが、言われて当然。それだけの失敗を俺はずっと繰り返して来た。それを、さちさんがいつも慰めてくれた。

でも、もうそのさちさんはいない。


「明日までに金を用意しろっ!!出来ないなら辞めろっ!!」「…そんな大金、用意なんて出来ません…」「お前が契約だなんてっ…、おかしいと思ったんだ!!」


その時、ユキナさんが課長にたてついてしまった。


「ヤッツーさんは、ゴミなんかじゃない、クズでも役立たずでもありません!!」「ユキナさんっ!!」そして、メルトやリューク、アリティまでもが…


「ヤッツーをいじめたら、吹き飛ばすわよっ!!」「完全なパワハラだな。お前の方がゴミでクズの役立たずだ。」「あんたみたいなのが家の中ででかい態度取るんだよねー!!最低!!」


(みんな!!手を出しちゃダメだって言ったの忘れたのっ!?前回同様、それぞれが闘いに勝たないとっ…)


『現実の世界には一生戻れないんだよっ!?』


ヒュリの言葉に誰も驚かない。

メルトも、ユキナさんもリュークもアリティも…

みんな分かってて俺を助けた!?


「タケルさん。」「ユキナ、さぁ帰ろ…」「私はここに残ります。あなたはあなたの人生を歩いて下さい。」「…ユキナ?」


『永遠に…サヨナラ、タケルさん。』


一緒に地を踏み、タケルさんと共に歩く選択肢があった。

でも、ユキナさんはこの世界に残ることを選んだ。


「どうし…て…ユキナ…」

タケルさんは足元の土が光をおび、そしてそこだけ宙に浮き…ゴゴゴッと音を立てながら空へと消えていった。


「さ、左江内っ…!!こいつらは何なんだっ!?」「俺の仲間だ。」「お前に仲間!?笑わせるな!お前はっ…!!」


『黙れ。』


土が舞い、課長の足がもつれる。

水が飛び、課長の体がずぶ濡れになる。

氷が現れ、課長の口を凍らせる。

風が吹き、課長は空へと浮かび上がる。


「んがっ…!んえない!!」「俺は…もう誰にも縛られずに生きていく!!」


炎が滾り、課長は俺の剣で灰となった。







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