第17話 謎のばーさん、売上貢献成績トップ。
「外回り、行ってきます。」「左江内さん、頑張って下さいね!!」「はいっ!!」
相変わらず男性社員からの冷たい視線を浴びながら、俺は会社を出た。
『今日は、別なルートを行ってみよう。』
駄目もとでいい。何件断られてもいい。
『行動する事が大事』。
「…俺らしくねーな。やっぱ彼女が出来ると向上心が上がるのかな?」
毎日遅刻で、寝癖頭で出社して。生きてく為に、仕方なく嫌々仕事をこなして。
そんな俺を『頑張ってる』と認めてくれたさちさん。
「さちさんの期待に応えなきゃだよな!」
トボトボ歩いていると、閉店してるのではないかと間違えそうになる文房具屋を発見。
俺は『ここだ!!』と思い、突撃訪問する事にした。
「すみません!」「……」「やっぱり閉店するのかな?」すると、店の奥から1人の……
「ばーさんっ!?」「なんだい。あんたかね。」
俺を異世界の道へと運んでくれた、『インチキ占い師』のばーはんが姿を表した。
「ばーさん、文房具屋なの!?」「あんたには、この店が見えたのかい。」「見えた…って、普通にあるじゃねーか。」「彼女が出来ても、まだあんたの心には未来の闇が残ってるみたいだねー。」
何を言っているのか、意味が分からなかった。
そして、どうしてここにばーさんがいるのか、『未来の闇』とは何なのか。
「ばーさん、文房具屋だろ?鉛筆を置いて欲しいんだ。」「この店に来る輩は、お前さんみたいに、過去も未来にも闇がある奴ばかりさ。」
『何本売りたいんだい?』
ばーさんは葉巻に火をつけながら、俺に聞いて来た。
俺は『100本』という意味で右手人差し指を突き付けると、ばーさんは俺に名刺をよこせと言い出してきた。
スーツから名刺を取り出した俺は、ばーさんに名刺を渡すと突然会社に電話を掛け始めた。
「な、何やってんだよ!!ばーさ…」「あー、もしもし?今ね、おたくの社員の左江内という人が鉛筆を置いて下さいと来たんだけどねぇ…」
『一万本、この人に今日中に持たせて貰えるかい?』
い、いいい一万本っ!?そんな数今まで聞いた事がない。
この契約が完了すれば、俺は間違いなく斜体でトップの売上金だ。
「じゃぁ、支払いは小切手を渡すからね。宜しく頼んだよ。」
そう言って電話を切ったばーさんは、葉巻の煙をフーッと俺に吐き掛けながらこう言った。
「そうだ。1つだけ、警告をしておこうかねぇ。」「警告!?」「明後日、気を付けるんだよ。」「明後日!?何をだ!?」「これ以上は言わないよ。未来が狂っちまうからね。」
「鉛筆はあんたの家にでも保管して置くんだね。」
そう言うと、確かにあったボロボロの文房具屋は突然消え去り、空から小切手だけが舞い落ちてきた。
「ど、どういう事なんだ!?」
『売り地』と書かれてある何も無い場所に取り残された俺。
頭の中には『5日後』という言葉だけが残っている。
「…とりあえず、職場に戻ろう。」
俺は小切手を鞄にしまい、職場へと戻った。社内では、鈴木課長が掌を返した様に俺を誉め称え、他の社員は恨めしそうに俺を睨んでいた。
勿論成績は群を抜いてトップ。
さちさんはとても喜んでくれ、その日の夜。
俺はさちさんの部屋へと早々にお呼ばれされた。
今日は金曜日…、胸がザワザワした。
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