第16話 可愛い奴は大概中身ブスだと勘違いしていた俺。
「さ、左江内さんっ!?」「す、すみません!!」
ただただ嬉しかった。
小さい頃から内気な性格で、友達と呼べる人はいなかった。
中学生でいじめに遭い、泣きながら『行きたくない』と親に駄々をこねた時もあった。高校ではクラスメイトに馴染めず、ひたすら本を読んで3年間を過ごした。
そんな地元が嫌で上京を決めて……、それでも何も俺の生活は変わらなかった。
…違う。『変われなかった』。
人はそう簡単に変われない。だからこそひっそりと…でも、社会人としてしっかりと。
『人としてのマナー』『人としての常識』を自分なりに忘れずに、今まで頑張ってきた。
それが、ようやく報われた気がして。
認めて貰えた様な気がして。
いつも気を張りながら、都会の波に呑み込まれてしまわぬ様に息をして来た心がさちさんの言葉でパチンと弾けてしまって…。
情けないながらにも、女性の前で気持ちが緩んでしまった。
「嬉しかったんです。ありがとう、さちさん。」「左江内さんは、いつも誰よりも頑張ってます!」「俺は、みんなよりも何十倍も頑張っても半人前なんです。」
『もう半人前は、私がこれから補ってあげます。』
な、なんていい子なんだ。これだけいい子なら、他にも沢山いい男が現れるだろうに・・・。何でこんなおっさん相手にしてるんだ!?
「さちさん、もしお情けでとかなら、遠慮なく言って下さい。」「…どういう意味ですか!?」「いや、俺が余りにも哀れだからとかで言ってくれ……』
不意打ちのキス。
不意打ちのファーストキッス。
なんとも柔らかくて温かい。
…念願の女性とのキス。呼吸はいつまで止めてればいい!?
じゃなくて!!みんなが見てる前で、大胆にもキスをして来たさちさん。
…凄い度胸の持ち主だ。さすがおっぱいでかいだけある。
「これで、本気度が伝わりましたか!?」「…はい。」「左江内さん、顔真っ赤ですよ(笑)』『こ、こっち見ないで下さい!!ラーメン食べましょう!伸びちゃいます!!』
アラサーにして、ようやく春到来。
これから、輝いた毎日がきっと俺を待っている。
「彼女持ち」。これだけでボルテージが上がる。頑張れる。
母ちゃん…上京してやっと幸せを見つけられました。
「明日から、私お弁当作って来ますね!」「ほ、本当ですか!?実は全部惣菜とかありませんよね!?」「無いです!(笑)だから、これから毎日お昼は一緒に食べましょ!?」「喜んでっ!!」
思わず忘れてしまいそうになっていた。
現実の世界が、あまりにも幸せに満ちていて…
『ショーシャンクの街』。
ユキナさんやみんなが、俺を待っている。
明日は必ず行かなければ…
「さっ、休憩時間終わっちゃう!!左江内さん、戻りましょう!!」「午後も頑張ります!さ、さちさんの為に!!』「うん!応援してますね!!」
俺の現実世界は、これからが本番。
楽しい日々が待っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます