第18話 ユキナの想い人、『タケル』。

「どうぞ、ソファーに座って下さい!」「は、はいっ!!」

こんな時、ソファーのどの位置に据わればいいのか!?真ん中だとさちさんが座る場所に困るし、左右だと距離が開いたら嫌だし…。

「え?(笑)どうしてソファーの下に座ってるんですか!?」「自分、不器用なもんで…」「普通に座って下さい(笑)」


吹き出し笑いをされ、恥ずかしくなった俺はかっこ良く足を組みながら座ってみた。

…が、いまいち足が短いのか上手く組めない。


「左江内さんって、お酒飲めますか?」「お酒?はい。飲めますけど…」「じゃぁ、飲みましょうよ!?明日は休みですしっ!!」


こんなに上手く行っていいのだろうか!?

おい、俺。よく考えてみろ。あまりにも上手く行きすぎてやしないか!?

いやいや、俺。昼間のさちさんの話は本物だぞ!!疑うのはよせ。このまま童貞を捨てるが良い。


…ゴム、持ってねーよ。避妊は必須だもんな。どーしよ。


「ビールでいいですか?」「何でも大丈夫です。」

本当は酒めちゃんこ強いけど、弱いフリしよっかな。


「なんだか…酔っちゃったみたい。」「まだ飲んでませんよ?」「ですよね。」

こんなんだからモテないんだよ。知ってるよ。

今日は俺じゃなくてさちさんを酔わせて…。


「じゃぁ、カンパーイ!!お疲れ様です!!」「き、君と付き合えた日を祝って、乾杯。」

決まった、俺。どもったけど決まった。さちさんも笑ってるし。

これはいいムードに持って行けるかもしれん。


「ささっ、さちさん飲んで下さい。」「…酔わせてどうする気ですか?」

バレてる。邪な気持ちがバレてーる。でも、世の男共はこんな感じなんじゃないの!?違うの!?隙あらばじゃないの!?


「酔ったら寝ていいですよ。俺、帰りますから。」「嫌、帰らないで。」

おっしゃー!!『帰らないで』来たーーーっ!!


でも、ゴム無い。どうしよう。


「さちさん。」「はい?』「ゴム、持ってますか!?」「え!?」「や、俺持ってなくて…」「ず、随分ストレートなんですね(笑)」


これは…まずかったかな!?だ、だって『今からコンドーム買ってきます。』の方がカッコ悪くない!?

童貞だからわかんねーっ!!


『…持ってますけど…』さちさんは顔を赤らめながらそう言った。

今夜の俺は強気。

何故なら契約も取り、ダントツのトップ。

今までの鬱憤とヘタレ童貞アラサーを捨てるべく、武者震い中だ。


「左江内さんも、飲んで下さいね?」「勿論です!!」

今宵は全てを忘れて飲もうではないか。

それにしても、女の子の部屋は本当に癒さ……


「…VR?」「え?あ、あれですか!?」「さちさんの?」「いえ。兄から没収したんです。何か、狂った様にハマってしまって、両親とみんなで取り上げたんです。」「すみません、さちさんのお兄さんの名前って…?」


『タケルです。』


『タケル』。異世界でムジロじーさんが言ってたのと同じ名前。

もしかして、さちさんのお兄さんはユキナさんの…。


「どうかしたんですか!?」「いや、何でもないです。さ、飲みましょう。」


さちさん。ごめん。酔わせた勢いで少し話を聞かせて貰うよ。

俺はさちさんから『タケル』さんの話を聞くことにした。







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