第11話 本日2度目の異世界転移。
「急げっ…!!」
目映い光が俺を包み込む。
「きゃぁっ!」「ユキナちゃん!!」「ユキナ!!」
目を開ける前に3人の声が聞こえて来た。
俺は慌てて目を開け、今起こっている異世界の現実を目の当たりにした。
「ユキナさんっ!?」「ヤッツーさん!!どうして!?」「ヤッツー!危ない、避けてっ!!」メルトの言葉に、俺はユキナさんを庇いながら自分の身を地面に擦り付けた。
「話は後だ!!ヤッツー、参戦してくれ!!」「あぁ、その為に戻って来た!!」ユキナさんは左足から大量の出血をしている。
「ユキナさん、下がってて下さい!!」「私は大丈夫です。ヒールの呪文で時分を回復させられます。私はいいから、ヤッツーさんは敵をっ!!」
現実の世界に戻る時と、敵の人数が全然変わっていない。むしろ増えている様に思える。
俺は剣を振りかざし、襲い掛かってくる敵を尽く切り裂き続けた。なのに、一向に敵の数は減らない。
「リューク!どういう事だ!」「この雑魚を扱っている主が何処かにいるはず!!そいつを仕留めない限り、いつまで経っても終わらない!!」「そいつはどこにいるんだ!?」「あの山よ!!」「山っ!?」
メルトが指差す方に顔を向けると、山の中に紫色に点滅している光を見つけた。
「あれか!?」「ヤッツー、ここは俺達に任せろ!!お前はあの山に行って主を倒して来てくれっ!!」「でもっ…!!こんなに多数の敵をお前達だけではっ…!!」「大丈夫です。私も回復したので仲間に入ります!!」「ユキナさん!!」
和服から見える白くて細い足…なんて綺麗なんだ。
いやいや、そうじゃない!!さっきまであんなに多量に出血していたのに、綺麗に元に戻っている。
「ユキナさん、大丈夫なんですか!?」「えぇ、少し体力を使いましたが、闘えます!さぁ、ヤッツーさんはあの山へ!!」
…みんな行け行け言うけどさぁ…。1人はさすがにちょっと心細いよね。でも、ここは現実の世界じゃない。『異世界』だ。
…多分、倒されても死なないはず。
「分かった!!ここは任せた!!」
俺は心とは裏腹に威勢良く走り出し、山へと向かった。
ショーシャンクの街を駆け抜け、小さな川を渡り…作られていない山道を真っ暗な夜中に走る俺。
「現実の世界ですら、こんなに走った事ねーよ…」
一瞬気が怯みそうになったが、この世界で俺は『勇者』。泣き言なんて言ってられない。
「もう少しだっ…」
走り続ける事1時間半。俺はようやく紫色に光を放っている場所まで到達した。
「これっ、ただの岩じゃないかっ!!」
そう、これはただの岩……じゃなかった。
『グッググググググッ…』
「な、なんだ!?岩が鳴いてる!?」
そう感じた瞬間的、光っていたただの岩から突然変異手足が生え、ゆっくりと立ち上がった。
そして、岩の光が大きく放たれたかと思いきや、大勢の敵が光の中から飛び出して来た。
「これが原因か!?」俺は襲い掛かってくる敵を切り裂き続け、主の急所を探す。
俺は剣の使い手。こんなに硬い岩では、逆に剣がボロボロにされてしまう…
「くそっ!どうしたらいいんだ!?」
倒しても倒しても尚、襲い掛かってくる敵。俺の体力は減っていく一方…。
その時。ヒュリの声が頭の中に響いた。
(光が放たれた瞬間を目掛けて、光の中に入って!!)
「光の中に!?」
(一瞬だから、見極めてスッと入ってねーー!!)
一瞬…。光が大きく放たれた瞬間に入る。
『グッググググググッ!!』
「今だっ!!」
俺はその『一瞬』を目掛け、主の体内へと入り込んだ。
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