第9話 天国に近い街。ショーシャンク。

「さて、いまからどうするかな。」


(何言ってんの!!敵は次々現れるんだよ!気を引き締めて!)


ヒュリの言葉に、メルトが反応した。

「ヒュリ、少し休憩したいわ。」「それなら…私の家に来ますか?何もありませんが…」「いいんですか?ユキナさん。」「ヤッツーさんもお疲れでしょ?ホットミルクでも飲んで少し体を休めましょう。」


じ、女性の家に…は、初めてだ。

今は幼いユキナさんとはいえ、あの艶やかなユキナさんを一目見てから…


「うおぉぉぉぉっ!!」「な、なんだ!?」

リュークが俺の雄叫びに驚いたのか、戦闘態勢に入った。

「あ、違うんだリューク!!」「か、勘違いさせるな!!」「すんません…」


そして、俺達はご厚意に甘え、ユキナさんの家へとお邪魔する事にした。


「どうぞ。小さい家ですが…」

これが…女性の部屋の匂い。甘くてとても癒される。

「ヤッツー。鼻の下が伸びてるわよ!!」「はっ!な、何言ってるんだメルト!」「ヤッツーは典型的な女にモテない男だな。」


リュークの奴…分かってるじゃねーか。

俺より歳下のくせに、なかなか人生経験踏んでるな。


「どうぞ、座ってください。」「は、はいぃっ!!」「ヤッツー、緊張し過ぎだ。」「リュークうるさい!」「ユキナさん、ちょっと、トイレ借りてもいいですか?」

落ち着かない俺は、ひとまずトイレで自分の頬に2発ほど渇を入れようとリビングを抜け様とした時…


ある1つの写真立てに目がいった。

ユキナさんと…その隣でユキナさんの肩に手を回している優しそうな笑顔を見せた男…。


「…私の恋人だったんです。」「あ、えっ!?」

俺が聞こうとする前に、ユキナさんが写真の相手について語ってくれた。

「ヤッツーさんと同じで、他の世界から来た人でした。」「俺と…同じ?」「でも…彼はある日を境に来なくなってしまって…」


『この闘いが終わったら、結婚しよう。』


そう誓い合っていた最中の事だったらしい。

…そうか。だからユキナさんはいまでも彼を待っていて、その為にこの世界に残る事を決意して。

1人で闘って来ていたのか…。


「ボスを封印寸前まで辿り着いたのに…来なくなってしまったんです。」「中途半端に封印された敵は繁殖を繰り返し、今に至ってるんだ。」リュークがホットミルクを飲み干した後、コップをテーブルに叩きつけながらそう言った。


「この街にいる人々は、みんな現実から逃れたくて来た人ばかり。俺とじーちゃんだってそうだ。」「あたしもよ。だから、せめてこの街では平穏にくらしたいの。」


『その平穏を取り戻す為、闘い続けているんです。』


天国ち近い場所なのかもしれない。

『ショーシャンクの街』。

ここは、本来幸せと笑顔で満たされた街でなければならないのだ。

…俺だって、その中の1人だったはずじゃないか。


「俺は逃げたりなんかしません。」「ヤッツーさん、ありがとう。」「敵は増えていくばかりだ。…ボスを倒さない限りは。」「あたし達でボスをやっつけましょうよ!!」


みんなの心が1つになる。

その時、ピピピピピピッ…。


現実の世界に戻るアラームが鳴り響いた。



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