第6話 これが現実の世界。
「なんか、すげー疲れた。」時刻は夕方。俺は身体を回復させるかの様に飯も食わずに爆睡し、そして翌朝。
「おはようございます。」「えっ!?」「左江内が…」「遅刻しないで出社してる…」
早朝に目覚めた俺は、二度寝しようとしたが中々寝付けずそのまま出社。チャリを職場に置きっぱなしだった事もあり、いつもより早めに徒歩通勤したのだあった。
「嘘の体調不良は大丈夫なのかね!?」課長の鈴木がオレに消しかけて来た。「突然の早退、申し訳ありませんでした。」「まぁ、君がいてもいなくても、会社は回るんだけどね(笑)」
この世界では、誰も俺を必要としてくれる人なんていない。
どんなに頑張っても、どんなに謝っても、誰も俺を評価してはくれない。
でも、これが本当の現実の世界。
「外周り行ってきます。」「おっ、左江内、サボりか?(笑)」「あはははっ(笑)ハッキリ言ったら可哀想だろ!」
あの世界はとても楽しかった。
みんなで協力し合って敵を倒して…
『初めてのチームワーク』を体験出来た。
「あの…左江内さん。」「…さちさん!?」「はい、これ!!」
さちさんから貰ったもの…小さなお守り。
「え、どうして俺に?」「陰口なんかに負けて欲しく無くて…。」「気に…してくれてたんですか?」「左江内さんなりに頑張ってるの、私知ってるから。」
アラサーのいい歳したオヤジ。今猛烈に嬉し泣きしそうです。
こんなに誰かに優しくされたの、上京する時にお袋が封筒に10万くれた時以来だ…。
「ありがとうございます。」「負けないでね!」「はい、行ってきます!」
俺はお守りをスーツの胸ポケットにしまい、外周りへと出掛けた。
「外周りって言っても、全部断られてんだよな…」
所詮、俺は名前の通りの左江内矢筒。
とことん冴えない奴なのだ。
「とりあえず、小さい文房具店巡ってみるか。」
俺は気を取り直し、人混みの中を歩く。
すると、またしても昨日の老婆が道端に表れた。
「ばあさん!!」「約束…ちゃんと守った様じゃな。」「あの世界、何なんだよ!?」「そのうち、お前もこの世界が嫌になり、あっちの世界から戻りたく無くなる日が来るじゃろう。」
『1度でも、アラームを無視したら2度と戻ってはこれぬ。』
「約束、守るんじゃぞ…」「え!?あ、おい、ばあさん!?」
他の人には見えていないのだろうか!?
ゆっくり姿を消して行った老婆の前を、通行人が何事も無かったかの様に通り過ぎる。
「…なんなんだよ。」
それから、俺は案の定一件も契約が取れないまま職場に戻り、鈴木課長に嫌みを言われながらも定時で退社。
…現実逃避の時間が俺を待っていた。
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