第3話 常識が通用しない異世界。

(やったね!ヤッツー!!)「ヒュリ、俺が倒したのか!?」(そうだよ!その剣はヤッツーにしか扱えない炎の剣。これからその剣で敵を倒すんだよ!!)「えっ!?また出てくんのっ!?」


(次の指令は、仲間を探して!!じゃぁまったねー!!)


「お、おい!ヒュリ!?」

草原に1人残された俺。目を凝らし、遠くを見つめてみると何やら街の様なものが見える。


「…まだアラームも鳴らないし、とりあえず行ってみるか。」

俺は見知らぬ街を目指し剣を背中に刺しながら歩き出した。


そして、1時間程歩いただろうか。

ようやく街に到着した俺は、渇ききった喉を潤す為とある一軒の店へと入った。


「すみません、ここに何か飲み物は…」「ここは酒屋だよ!酒ならたんまりあるよ。」

オーナーらしきナイスバディの女の人が、加え煙草をしながらカウンターから声を掛けてきた。


「いや、昼間から酒はちょっと…」

とか言ってみる。現実の世界では、昨日の酒が朝まで残っていて仕事に行く事も多い。

酒は百薬の長とも言われてるし。出来るなら毎日浴びる程飲みたい。そんなクズなアラサー左江内氏。


「あんた、見慣れない顔だね!?また新入りかい?」「…また?」「どっかの世界から来たんだろ!?ほら、あそこの奥に座ってる男もあんたと同じ類いさ。」


薄暗い店内の中、店の隅でビールを飲んでいる男を発見。

俺は恐る恐る声を掛けて見る事にした。


「あ、あのぉ…」「何っ!?」「いや、何でもないです。」「あなた…もしかしてあのばあさんと会ったの?」「あなたもですか!?」


この人のどこが現実逃避したいか分からない位のマッチョ。しかも、かなり弱そうでやけに女っぽい。


「ねぇ、名前は?」「あ、矢筒…じゃなくて、ヤッツーです。」


俺が名前を言った途端、その大柄な男は…椅子から立ち上がり俺に顔を近付けた。


「ヤッツーって言うのっ!?俺はメルト!!やだぁ!仲間じゃなぁい!!」


…現実逃避したくなる意味が、何となく分かった気がした。

メルトと言うこの…男女。椅子に扇子を置いている。


「もしかして…扇子が?」「そうなの。あたしの武器は扇子。風を操るのよ。」

風を操る味方…。これが、さっきヒュリが言っていた指令だと気付く。


「メルトさん、俺の仲間になってもらえませんか?」「勿論喜んで。あたしは心は乙女の28歳!因みにヤッツーは?」「俺は炎です。歳は34です。」「炎に風…歳も食べ頃でいいわね!!」


これで、仲間が1人ふえた。

名前はメルト、属性は風。性別…中性。


「とにかく、俺喉が渇いてて…」「この街は朝から酒なんて当たり前よ。『常識』なんてないんだから。」


そうか。この街は異世界。

普通じゃない。ゲームのしきたりに沿って動けばいいんだ。

鉛筆も無理矢理売る事なんてしなくていい。

…なんて素敵な世界なんだ。


「じゃぁ、俺もビールで!!」「そう来なくっちゃ!!」


『2人の出会いに乾杯!!』


俺達は、2人しかいないこの酒場で、これから訪れる見えない敵との闘いを共に倒すと誓い合った。

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