第2話 初めての闘い。

「そんなに現実逃避したいかね?」「え?」「現実逃避をしたいのかね?」


何で分かったんだ?俺は不気味に感じながらも小さく頷いた。


「そうかい…それじゃぁ、あんたにこれをあげるよ。」「…これって…VR?」「ただし、今から言う約束をちゃぁんと守るんだよ?」


その1、『使用するのは1日1回、5時間以内。』

その2、『異世界での相手に恋愛は禁止。』

その3、『必ず現実の世界に戻って来る事。』


「わかったかい?必ず守るんだよ?じゃないと…」「ありがと、婆さん!!」「これっ!ちゃんと人の話を最後までっ…!!」


仕事なんかやってられっかよ。たまにはストレス発散も必要。

なんのソフトが入ってるかは知らないが、タダで貰えたものはすぐに使ってみるべし。

…アダルトだったらラッキー。


「家に帰ってやってみよーっと!」



『体調が優れないので直帰します。』


会社にそう連絡を入れ、俺は急いでアパートへと帰った。


「どれどれ…。」

俺は早速電源を入れ本体を頭に被る。

すると、背の小さい、子供らしき女の子が目の前に現れた。


「君の名前は?」「矢筒…です。」「ヤッツーね。インプット完了!」「いや、矢筒なんだけど…。」「ヤッツー、あたしは案内人のヒュリ!!これから君には冒険の旅に出てもらうからね!」「冒険の…旅!?」「大丈夫!!勿論仲間はいるから。そのうち出逢うよ。じゃぁ、5時間経ったらアラーム鳴らすから、電源を落としてね!!」


『ショーシャンクの街へ、行ってらっしゃい!!』


「うわぁっ!!」

暗闇から俺は突き落とされ、長い長いトンネルを滑り落ちる。

すると、遠い先に光が見えてきた。


「いでっ!!」

ドスンと草むらに放り投げられた俺。ここは…さっきの女の子が言っていた『ショーシャンクの街』なのか!?

だだっ広い草むら。辺りを見渡してみるが、コンビニ処かビル1つない。


「何なんだ!?ここは…。」

俺が呆然と立ち尽くしていると、突然の地鳴りが聞こえ、土の中から水浸しの巨大スライムが現れた。


「えっ!!な、何!?何なんだよっ!?」

突然の敵に慌てふためいていると、脳裏にヒュリの声が聞こえて来た。

(ヤッツー!!後ろにある木の箱を開けて!!)

「き、木の箱!?」


後ろを向くと、ヒュリの言う通り木の箱が置かれてある。

「これを開ければいいのか!?」(そう!その中にある武器でスライムを倒して!!)「た、倒すっ!?」


(ヤッツー、早くっ!!)


ヒュリの声に従うしかなかった俺は『グエェェェ』と雄叫びをあげ始めるスライムに恐怖を感じながら、急いで木の箱を開けた。


「この剣っ!お、重い!」(それは、まだヤッツーが弱いからだよ。でも、精神統一すれば今のヤッツーでも使えるはず!!)「わ、分かった!!」


深呼吸をして、目を閉じ…精神を集中させる。


『グギェェェェッ!!』


「今だっ!!」


バシュンッ……!!


『ぎ、ギギギギッッッ……。』


剣から出た炎と共に、大きく振りかざし巨大スライムに当たった瞬間、スライムは奇妙な断末魔を響かせながらジュワッと消えて行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る