色々面倒異世界転移。アラサー童貞リストラ寸前男の生き様ぁぁ!!

結芽

第1話 リストラ寸前の左江内矢筒。

それは、34年前の事……。

『おんぎゃぁ!おっ、おおおおぎゃぁ!』


「凄く元気な男の子だな。」「顔、あなたにそっくりじゃない。」「名前、どうする!?」「そうね…ウケをねらって、『矢筒・やつ』なんてどうかしら?」「いいな!こりゃぁ人気者になるぞぉー!!」


それから数年十年後。


とある日の月曜日。

枕の下で携帯のアラームが鳴っているのにようやく気付いた俺。


「やべっ…!また遅刻するっ!」


誰も起こしてはくれない。だって、一人暮らしなんだもの。

俺は慌てて歯を磨き、多少の寝癖に頭に目を瞑り…スーツニ着替え準備完了。

会社まではチャリで40分。がむしゃらで漕ぎまくれば何とか間に合うだろう。


「あぁ、また月曜日が始まる…辛い。」

親の反対を振り切り、前の会社に辞職願を出し…ど田舎から憧れの都会に出てきてはや数年。


俺の名前は左江内矢筒(さえないやつ)。…親が憎い。

アラサーだと言うのに、既にホームシックの霊にどっしりと取り憑かれている。

飯はコンビニで自炊無し、彼女いない歴34年。自分では中々のイケメンだと思うのだが、会社でのあだ名は『一反木綿』。


今年の目標は来月のクリスマスまでに『可愛くてボインな彼女を作る事』。まぁ…最悪、可愛いを取ってもボインは必須。


「着いたっ!」

俺はチャリをぶん投げ、ビルの5階にある職場へと階段を猛ダッシュ。『エレベーターを使ったら負け』そんな下らなすぎるプライドが、俺の出勤時間をアウトにさせた。


「また遅刻か!!左江内!!」

課長の鈴木が腕時計をトントン叩きながら俺を煽る。

「すみません!寝坊してません!」「じゃぁ、何で遅刻したんだ!?」「はい!分かりません!!」


社内が笑いでどよめく。『またかよ。』『相変わらず使えねー。』『左江内うぜー。』


まぁ、いつもの事。こんな陰口にはもう慣れた。

…嘘。本当はギャン泣きしたい位メンタルボロクソ。


「左江内さん、おはようございます。」「あっ、さちさん!!」「大丈夫?」

社内のマドンナ、岡さちさん。推定25~28歳。

誰にでも優しく、噂では彼氏無し。の可愛いボインちゃん。

…まさに俺のヒットな憧れの事務員だ。


「あ、コーヒーありがとうございます。」「課長の言う事なんて、気にしなくていいからね!!」「はい…ありがとうございます。」


モチベーション復活。

単純な俺、妄想が激しい俺。

『さちさんは俺に好意を抱いている。』

それだけで今日も1日頑張れる。

…そんなカスみたいな生活を送っていた。


「左江内!商談に行くぞ!!」「え、もうそんな時間すか!?」

俺の会社は、鉛筆を文房具屋や学校に売り付ける仕事。

今月、まだ一件も売り上げを上げていない俺は、先輩の小杉さん協力のもと、一緒に付き添いをしてもらう事になっていた。


「早めに行くのがマナーだろっ!?そんなんだからダメなんだよっ!」「す、すいませんっ…。」


あー…現実逃避したい。

何で俺の毎日は怒られてばっかりなんだ!?

たまには、誉められてみんなと仲良くして…

『左江内って凄い奴』と言われたい…。


そんなこんなで、今回の商談も失敗に終わり。

原因は俺の商品説明不足。『全然良さが伝わらないよ。』この一言で終了。

先輩の小杉さんは怒って1人で職場に戻ってしまう始末。

激怒プンプン丸らしい。


「戻りたくねぇ…。」


肩を落としながら道端を歩いていると、突然現れた占い師。


『あんた…無料で占うよ。不幸の塊だから。』


俺は普段占いなんて全く信じない派。

なのに、何故か引き寄せられるかの様にいつの間にか椅子に座り、老婆の話を聞いている俺がいた。





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