108.武闘大会 決勝戦

『ようこそ皆さん、大武闘大会へ!本日はいよいよ最終日、決勝戦が行われます!』


コロシアムの観客席に座っていると、そういったアナウンスが聞こえてくる。周りでも多くのプレイヤーが席につき、またどんどんコロシアムへと入ってきている。


「今日は実況があるのか」


ポツリと呟くと、隣のユーリが答えてくれる。


「最終日で今日は試合場も一つなので実況をするらしいです。武闘大会に関するクエストの中に実況者募集のクエストがあったみたいで、ギルドが選んだ人が拡声魔法を使って実況をするらしいですよ」


ユーリの言葉の中に、気になることがあったので、尋ねてみる。


「武闘大会に関するクエスト、って、他にも何かあったのか?」


「このコロシアムの修繕とか、周辺のモンスターの排除とか、色々あったんですよ。数も結構あったから、たくさんの人がクエスト受けてました」


すると、ユーリの向こうからタリアも話に参加してくる。


「私も手伝ったわよ。釘とか金具作ったり、修繕の統括をしたり。お金も結構もらえたし、イベントに向けてのクエストだからイベントに向けてスキルのレベルを追い込むっていう人以外は結構参加してたはずよ」


「なるほど」


まあ俺は当然のように街には戻っていなかったので何も知らなかったわけだが。イベントに向けてプレイヤー全員が同じ方向を向いてイベントを迎えることが出来るというのは、なかなかに楽しいことだ。


今日はタリアに加えて、彼女が連れてきたユーリも一緒に観戦することになった。マーシャは他の友人と観戦をするらしく、ここには来ていない。


先日はいくつものブロックに別れていた会場だが、今日の決勝戦においてはその仕切が取り払われて広い会場の全体が見渡せるようになっている。


ユーリたちと会話している間にも放送は続いており、先日までの予選についての話が色々とされていた。


『それでは皆さん、本日の決勝戦、実施方法についてです。広いステージに予想されている方もいるかも知れませんが、なんと決勝戦は、昨日の予選で勝ち残った60名のプレイヤーによるバトルロワイヤルとなります!自分以外の59人全てが敵!序盤から攻勢に出るのか、あえて抑えるのか、選手の判断が試されます!』


バトルロワイヤル。その言葉に、掲示板でも幾度も予想されていたものの歓声が沸き起こる。一対一の試合も魅力はあるのだが、派手さで言えば60人が同時に戦うバトルロワイヤルのほうが遥かに盛り上がる。


「おおー、予想通りバトルロワイヤルだったね」


「そっちのほうが決勝戦としては派手だからな。初心者プレイヤーに見せるという目的からすれば妥当だろう」


周りでは、初期から参加しているプレイヤーに加えて初心者プレイヤーがあちこちに何人かでまとまって座っている。こちらの世界にしっかり馴染めているようだ。俺は詳しく聞いていないが、どうやら俺たちのときと違って開発者の男が最初に説明をしていたらしい。


やがて、選手の入場が始まる。特に有名な選手に対しては、解説のプレイヤーから説明が入る。実況は主に話しているプレイヤーに加えて、決勝戦に出場しない有名な攻略組のプレイヤーが数名来ているようだ。中には先日フォルクに破れて敗退したミカヅキもいるようである。


『ちなみに、解説に来てくださってる皆さんはどなたが優勝すると予想されてますか?』


『あんまり実況の立場で誰かに肩入れするようなことは言えないが、私はとりあえず皆が予想していないプレイヤーが優勝する可能性もある、とだけ言っておきたい』


明確に誰とは言っていないが、フォルクの実力を測った上での言葉だろう。それに対してメインの実況者は興味深そうに答える。


『なるほど。みなさん、今日は会場上方に映写魔法によって、試合の部分を撮影した映像が放映されます。会場全体を見るだけでなく、そちらも見ていると面白いものが見れるかもしれません。ハルトさんはどうですか?』


ハルト、というのがもう一人の解説に来ているプレイヤーの名前らしい。声から察するにそれほど若いようには思えない。


『ミカヅキくん同様誰が、とは言えないが、これほどレベルが高いのなら私も出場しておけばよかったなと思っています。いやもったいないことをした』


『ハルトさんは確か、昨日までダンジョンの攻略をされていたんですよね』


『ええ。まだ私自身の理想のレベルに到達できていないので、出るわけにはいかないと思いまして。ですが、信念を曲げるべきだったかもしれませんね』


『なるほど、ハルトさんをしてそう言わせる程のプレイヤーが、この決勝戦には揃っているのですね』


実況の言葉を聞き流しながら、二人にハルトについて尋ねる。


「あのハルトというのは、どういうプレイヤーなんだ?」


「えっと、確か『アイアンソード』っていう集団のリーダーさんだったと思います。とっても強いっていうことぐらいしかわからないですけど…」


「今の所タンクの中では一番強いって言われてるよ。本人は全然認めようとしないけどね」


「ほう」


最強のタンクか。そんなプレイヤーが大会に出なかったのか。不思議なものだ。


会場では、入場した選手がそれぞれに好き勝手な位置に立っている。中央付近の広く開いたところに立っている者や、壁に保たれて集中しているもの、武器を素振りしているものなどがいる。


ちなみに、俺の仲間は出場しているものは全員決勝に出場している。


レン、レル、グレン、ラル、ルク、シン、フォルク、トビア、ライアはそれぞれバラバラに立っている。いきなり戦い始めるのか、数が減ってからぶつかるのかはわからない。とりあえずアイツラがどう動くかが楽しみだ。


ウミの試合も見たのだが、残念ながら決勝に進出している魔法使いに破れていた。ウミ自身も魔法が使えていたが、火力が違ったようで終始押されていた。奇襲で斬撃を当ててはいたのだが、一撃では倒すに至らなかったのだ。


そのプレイヤーは壁際でフードを被って静かに立っている。


そしていよいよ、決勝戦が始まる。


実況は試合中はあまり話さないようにして注目するところだけ言うようにするらしく、審判が旗を振り上げるのに合わせて静かになった。


そして、旗が振り下ろされる。


最初は皆互いに牽制しあっているようで、全く動かなかった。そんな中、最初に動いたのは魔法使いのプレイヤーだ。巨大な炎の柱を、目の前の数名のプレイヤーに叩きつける。


その攻撃を察知できたプレイヤーは回避し、避けきれなかったプレイヤーは炎に飲まれる。


そして今度は反対に、攻撃を受けたプレイヤーが魔法使いへの反撃を始め、次第に多人数の入り乱れる戦場となる。


一方全く反対側では、フォルクとライアがちらりと目を合わせたあと、フォルクが親指で後ろを指したのを皮切りに視線を逸し、周囲のプレイヤーに襲いかかっていく。周りを排除してからやろうという合図だろう。


また別の場所では、二人の魔法使いによる魔法戦が始まっている。距離のある二人が破壊力のある魔法を打ち合っていることで、間にいる数名のプレイヤーが巻き込まれていく。


「うわー、派手だね」


「ちょっと怖いです」


二人の言う通り、非常に派手だ。あちこちで戦いが起きており、どこを見ようか非常に悩む。とりあえずはあいつらのいる場所と、面白そうなところを見ることにする。


まずやはり一番目を引くのは二人の魔法使いによる魔法の撃ち合い。氷魔法と炎魔法がぶつかりあっており、余波で近づくのすら危ない場所になっている。そのためか、無防備な二人の魔法使いに襲いかかるプレイヤーはいない。


だが一人だけ、そこに近づくプレイヤーがいる。タクだ。後ろからは数名のプレイヤーに追われており、それを魔法の中に押し付けるかのように動いている。PvPでトレインをしているようなものだ。


また別の場所では、カナとルカが背中を合わせるようにして周りのプレイヤーと戦っている。手を組むのも戦略の一部なので、臨時で手を組むことは許されているらしい。どちらにしろ人数が減れば戦うことになるのだ。


『おおっと、これは、予想していたより人数の減りが早いですね』


『数名のプレイヤーがどんどん倒しているようですね。とくにレイピアの彼。確かミカヅキくんも彼に?』


人数が減ってきたことを確認して、解説が話し始める。


『ええ、まあ。かなり強かったですよ』


負けたミカヅキに対して聞きづらいことを平気で聞く男だ。だがミカヅキ自身は、悔しさなどを声に出していない。


『ならばあの強さも納得ですね。お、その彼が動き出しましたよ?』


解説の言葉に、他のところを見ていた視線でフォルクを探す。


いた。彼の周囲のプレイヤーは倒されたようでいなくなっている。そして、彼の向かう先には、ライアが唯一人、彼に向かって歩いてくる。周囲のプレイヤーを排除できたので、いよいよ戦おうというのだ。


魔法使い同士の戦いの方が派手なので、二人の方を見ているプレイヤーは少ないが、見逃せない戦いである。


「あ」


ユーリがそう呟いた直後。二人の魔法使いの間でぶつかり合っていた巨大な炎の嵐と氷の嵐が、真っ二つに割れた。その光景に観客席にどよめきが走る。


あっちでもこっちでも、あいつらが派手に動き出したようで見るところに困る。探してみると、ラルは落ちてしまったようだが、20人ほどの残りのプレイヤーのうち俺の仲間は8人残っている。


コロシアムの向こう側ではライアとフォルクが睨み合っており、他の6人は他のプレイヤーを殲滅中。やはり決勝戦だけあって腕のいいプレイヤーばかりのようで、レルやグレンはかなり時間をかけて一人のプレイヤーと戦っているようだ。


そんな中、フォルクとライアが衝突する。


特に合図も無く、互いが互いに向かって走り始める。


そして衝突。ライアはいつもより一層地を這う体勢で深く踏み込み、バックラーでの一撃を上に向かって放つ。それに対してフォルクは、細剣の柄を右手で、そしてその延長線上を左手で握る構えをしたまま振り下ろし、空中で細剣を大剣に変換。ライアのバックラーによるアッパーに対して真っ向から斬り下ろす。


どちらかの力がわずかでもそれれば、フォルクの大剣はライアのバックラーの表面を滑ってライアを切り裂いていただろう。だが、どちらも力をずらすこと無く、拮抗し、そして弾きあった。


大きく後ろに下がったライアは、再度雄叫びを上げながらフォルクへと突撃する。フォルクはそれを、細剣で迎え撃ち、間が出来た瞬間に大剣へと変えて攻撃を放つ。細剣と打ち合いながらもライアは大剣をそらし、幾度もフォルクに肉薄する。


剣と剣のぶつかり合い。互いに致命傷を与えることなく、それは拮抗したバランスの上で続く。


一方他のメンバーだが、シンはルカとカナの二人と相対していた。近くにいたので喧嘩を売ったのだろう。2対1ではあるが、一切躊躇すること無く挑みかかっていく。


レンは先程まで1対1で戦っていた魔法使いの二人と戦っている、かと思いきや、そこにグレンが割って入ってレンと斬り合いながら離れていった。魔法使いの二人は戸惑った様子を見せずに、周りのプレイヤーに対して魔法を打ち込み始める。


その二人の隙を縫うように、炎の魔法使いにはタクが、氷の魔法使いにはルクが近づきとどめをさす。そして示し合わせたようにそのまま1対1へと移行する。


トビアとレルは二人で戦うこと無く、他の残っているプレイヤーを倒しに向かった。レルは先程の盾剣士との戦いでHPがかなり削られていたようで、次の短剣使いと相打ちになって退場する。一方トビアは、誰かがフリーになるのを待っているのかどこの戦いにも参加せず、ほぼステージの中央でじっとしていた。


やがて、シンとルカが相打ちになり、ライア、レンが倒れる。


最終的に舞台上に残ったのは、カナ、トビア、フォルク、グレン、そして未だ戦っているタクとルク、魔法使いの女性の7人だ。


それぞれの1対1を勝ち残った面々は、互いに仕掛けることなく、にらみ合う。


初めに動いたのは魔法使いの女性だった。戦い続けているタクとルクを薙ぎ払おうと、風の魔法を放つ。それを見たグレンは、チャンスと見て取ったか魔法使いへと突撃。それを横からトビアが襲う。


トビアとグレンがそのまま1対1へと移行する中、フォルクは魔法使いの女性に襲いかかり、炎の渦をくぐり抜けて彼女を倒し、魔法の余波によるダメージで退場した。


やがてグレンをトビアが破り、タクをルクが破る。


『さあ、決勝戦もいよいよ大詰め!いずれの選手も手負いです!』


フィールド上に残っているのは3人だけになった。ルク、トビア、カナの三人は、距離を取り、先手を誰がとるのかにらみ合う。


何事か、トビアがカナに声をかけている様子が見えるが、音は聞こえない。カナはそれに対して首を横に振っている。


直後、トビアとルクが向かい合った。互いに残っているHPはおそらく半分以下。ルクは槍を顔の高さに、トビアは長柄剣を水平に構え、互いに近づいてく。


先手を取ったのは間合いの広いルクだ。鋭く槍を突き出し、トビアに巻き上げられる前に引き戻す。それに対してトビアは、すっと自分の間合いへと踏み込み、返すように突きを放つ。


それを横から割り込んだカナの剣が跳ね上げた。何か、怒っているように見える。


これは俺の推測だが、トビアはカナに、自分とルクが戦っている間待っていてもらえるように頼んだのでは無いだろうか。それは二人がつぶしあい、まだ元気なカナが有利になることを意味する。だからカナは首を横に振った。


カナの返答を聞いたトビアは、それでもルクとの1対1をしようとした。だからカナは割り込んだのだ。自分だけ有利になるようなことはできないと。


バトルロワイヤルなのだから気にしなければ良いのだが、真面目なあいつのことだから許せなかったのだろう。


三つ巴の戦いは、しかし長く続かなかった。


トビアが二人の攻撃を誘うように幾度も隙を晒す。ルクはトビアの手の内を知っているので、警戒して攻撃をトビアとカナに対する牽制を適度にしながら様子を探っている。


だが、カナはトビアのやり口を知らないので、トビアの見せる隙に対して一々反応して攻撃を仕掛けていた。


それを待っていたトビアは、カナの攻撃に隙が生まれたタイミングでアーツを発動しカナの剣を弾き飛ばす。突然息を吹き返したように素早く動くトビアに反応が遅れ、カナの剣はあっさりと弾き飛ばされた。


剣を弾き飛ばされたカナの隙を逃すこと無く、横からルクが槍を突き出す。それに対してカナは、腰のレイピアよりも小さな短剣を抜いて槍を防ごうとする。予想以上の反応速度だが、ルクの槍は途中で蛇のように動きを変え、カナの短剣をすり抜ける。


なんとか盾で防ぐのは間に合ったが、その間にトビアのいる側が完全にフリーになってしまった。トビアが首と心臓部分に向かって数発突きを放ち、カナを退場させる。


それに対して、会場からはわずかのブーイングが上がる。が、それも静けさに飲み込まれた。


やがてトビアが剣を構え、ルクが槍を構える。


先に動いたのは、今度もルクだった。だが、今度は小手調べでも牽制でもない。最速でトビアの喉元に向かって突きを放つ。


大きく踏み込んだその突きに対して、トビアは一歩下がりながら剣の刃で槍を顔の左に逸し、槍がルクの手元に戻りきらぬうちに槍にそうように斬撃を放つ。


それに対してルクは槍から右手のみを離し、自分の掴んでいる槍ごとトビアの剣の腹を裏拳でそらす。刃が正面を向いていなければ自分の手をやられていただろう。


それに対してトビア、剣を手元に引き戻すのではなく、剣が弾かれて傾いた先へと自分の体を移動。ルクの槍が二人の間にない状態を維持する。


それに対してトビア、槍の引き戻しに固執せず、潔く手放して踏み込み、素手による殴打を敢行。剣で腕を斬られないように素早く拳を引き戻しながらも、トビアの顔と胴を狙う。


剣の腹と腕で拳をいなしていたトビアは、跳び下がりながらルクの腕へと斬撃を放つ。それを刹那で躱したルクもまた跳び下がり、槍を足で跳ね上げて回収する。


そして再び接触。


柄の端を握ったトビアの最大射程の斬撃を、ルクは槍の柄で受け反対に受け流して突きを返す。わずかに首を傾けることで躱したトビアは横薙ぎの斬撃を放ち、それをルクが槍の柄で受け止め鍔迫り合いに持ち込む。


ルクの方は、“格闘”スキルかその上位スキルを持っているようで、積極的に足や拳による攻撃を狙っている。それに対してトビアは、剣の腹と柄を活用していなしながら、突きや軽い斬撃など、小さな攻撃にとどめている。


本来ならより広い間合いで戦いたいのは槍を持っている側なのだが、この二人の場合は全くの反対なのだ。


格闘攻撃ができるルクは懐に入られても対して困ることはなく、柄の長い剣を扱っているトビアは完全にインファイトになってしまうと剣が振りづらいのである。


距離を取ろうとするトビアに対して、ルクはひたすらはりついて行こうとする。数度の斬撃と突きの応酬。


そこにトビアが牽制の突きを数発放ち、距離を無理やり広げる。


そして大きく踏み込み。トビアが縦に鋭く振り下ろした剣は、ルクが横向きに構えた槍の柄をすり抜けた。


虚をつかれたルクの胴に向かって、トビアの突きが鋭く伸びる。それをルクは右手を怪我することを恐れず、思い切り裏拳を放つ。


この世界では、特定の部位に攻撃を受けても一度でその部位が使えなくなるとは限らない。例えば腕、斬撃を浅く受けるぐらいでは、HPが減るだけで腕自体に影響はない。


だが、強い攻撃を受けたり、重ねて攻撃を受けると、部位損傷、もしくは部位欠損状態になりその部位が一時的に使えなくなる。


トビアの剣の刃に対してまっすぐ裏拳を振り抜いたルクの右腕は使えなくなったようで、だらりと下がっている。左手で槍を保持し、脇に構えたルクに対して、トビアは容赦なく斬撃を放つ。


それに対してルクは上段蹴りで応戦。更に、トビアの剣が再び透過するのを見越して反対の足を高速で跳ね上げる。


今度はトビアの剣はルクの足を通り抜けること無く、大きく横に弾かれる。手は離していないが、その体勢は大きく揺らいだ。


その隙を逃さず、ルク、渾身の突きを放つ。その突きはトビアの心臓をわずかにそれて突き刺さった。


だがトビア、その一撃で倒れること無く剣を逆手に持ち替えて無防備になったルクの首筋へと剣を突き刺す。気づいたルクが左手を槍から離して跳ね上げるが間に合わず、トビアの剣はルクの首筋に突き刺さった。


首筋に剣を受けたルクの体が砕けて光の粒になる。それを追うようにしてトビアも砕け、光の粒になって消滅した。ルクは首筋へのダメージで、そしてトビアは胴体への突きによる失血ダメージで死亡だろう。


『こ、れは、相打ち、ですか…?』


『ううむ。審判の裁定次第ですが…』


大会の審判は冒険者ギルドから派遣された大地人が行っている。


その審判が旗を振り上げ、声が拡声魔法を通して響く。


『ただ今の勝負、死亡時間の差でトビアの勝利。よって優勝、トビア!』


歓声が沸き起こる。トビアのことを知っているプレイヤーはほとんどいないと思うが、それでも武闘大会の優勝者に、そして大会に参加したすべての選手に大きな拍手が贈られた。


俺も立ち上がり、大きな拍手をする。


闘士達に。そして心踊る戦いを見せてくれた仲間たちに。

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