冒険の中に生く~冒険に憧れたプレイヤーは、現実となったゲームの世界を攻略なんて無視して冒険する。家、武器、道具、鎧そして料理。全部作るから街には戻らない。世界の果てを見てきてやる~
32.始まりの街ルクシア-4(ほのぼの日常)
32.始まりの街ルクシア-4(ほのぼの日常)
「俺はしばらく街を店をまわって見るがどうする?」
街に入ってすぐにその後の行動を相談する。
「俺は宿に行って武器の修理とクエストの報告しとくぜ」
「俺も一度店を回るつもりだよ。他の方面でなにかおもしろいアイテムが入手できてないか気になるしね」
「俺もだな」
結局、ライアだけ先に宿に向かって他の三人は街を回ってみることになった。おそらく、街のあちこちでプレイヤーが露店を開いてアイテムを取引しているはずだ。
「とりあえず中央の広場に行こうぜ。あそこが一番店が集まってそうだし」
「だな」
止まる宿はガロンのところに決めているので、宿の心配はせずに中央の広場に向かう。道すがらいい匂いがしてくるので、おそらくプレイヤーが露店で料理を出したりしているのだろうが、ガロンが飯はおごってくれるだろうから食べすぎないようにしよう。
「それにしても、二日目からしたら相当活気が出たね」
周囲の様子を見ながら歩く。暗くなってきているので街には明かりが灯っており、通りに面している店などもまだ活動しているようだ。
「ああ。あのときはまだあまり誰も動いてなかったからな」
「ちょっと焼き鳥買ってくる」
「ん、ああ俺の分も頼む」
「俺もよろしく」
話の最中でシンが焼き鳥を買いに行ったので、俺の分も頼んでおいた。後で払えよな、と言い残して買いに向かったシンを待ちながらレンと話す。
「宿代とか流石に逼迫していると思うけど、予定通り最初の方のアイテムを売るのでいいかな?」
「ああ。自分の持分なら蟻やダンロンベアの素材を出してもいいが、それほど出回ってないだろうし自分たちで使ったほうが得だろうな」
「だね。あれだけあったら少しは流して情報は回しておいたほうがいいとも思うけど。あのあたりの情報って掲示板に上げた?」
あの辺りというと薬師の里やダイアウルフの縄張り、それに蟻の領域だろうか。
「いや、全く上げてない。掲示板の方もそれほど覗いてないしな。それにダイアウルフの縄張りや蟻の領域ならともかく、あの集落は自分で見つけたほうが楽しいだろう」
「そうだね。一応その方針で軽く情報流しておくよ」
ふむ。自分たちのことしか考えていなかったが、他のプレイヤーたちのことを考えるとモンスターに関する情報やエリアの情報は出しておいた方がいいか。エリアに関しては俺達の探索した限りではただの森であるためそれほど気にしなくても良さそうだが、モンスターの特徴はわかっていたほうがいいだろう。特にダンロンベアやソアウィーゼルと初見でぶつかって対応を誤るといきなり死に戻る可能性がある。
「ああ。俺も露店でそれとなく確認しておく」
「はい、おまたせ」
そこでシンが戻ってきた。焼き鳥はそこそこの大きさがある。
「ロットバードが一本に闘鶏が一本な。はい」
「あるきながら食べようか」
紙のような包に包まれた焼き鳥を受け取る。なかなかにいい匂いがしている。
「うん、うまいね」
「ああ」
「一人40ゴールドな」
「つけといてくれ」
「やだ」
そんなとりとめのない会話をしながら街の中央に向かう。先程の店のあたりから次第に露店が多くなっている。やはり中央に向かうほど露店が多くなっているようだ。
「露店の場所はどうやって決めてんのかね」
「早いものかちだろ」
「場所を決めるシステムみたいなのがあれば揉めごととにならないですむんだけどね」
露店を開く場所によっては同じものを売ったとしても売れ行きが違う可能性は高いだろう。より多く売りたい人は広場の中心部などに店を構えるかもしくは他の店に埋もれない場所に店を構えるのか。または騒がしいのを好まず人気の少ない場所で密かに商売をしようという人もいるだろう。それをすべて管理するのは好まないが、ある程度のルールも必要になるのかもしれない。
「その当りは誰かが考えるだろう」
「まあ、俺達は露店なんてしないものな」
広場の中央に行くと中央の広場を残しながらも、端のほうに露店が拡がっていた。入り口に立ち止まって相談する。
「どうする?別々に見る?」
「ああ。それぞれ見たいものが違うからな、それのほうが…」
「おい、ムウだろ?」
名前を呼ばれてそちらの方を見る。見慣れた顔が見えた。
「ちょっとタク、話してるでしょ」
「え?」
俺の方に声をかけておいて後ろの女性からそう言われたタクが固まる。今ようやく俺が会話中であることに気づいたようだ。
「ムウの知り合い?」
「ああ。あっちでのな」
レンとシンに少し待ってもらってタクの方に行く。
「久しぶりだな」
「あ、ああ。すまん、迷惑だったか?」
レンとシンの方を見ると二人で話している。
「いや、大丈夫だ。相変わらず落ち着きがないな」
「そういうお前はなんか落ち着いたな」
そんなものか?と首を捻る。以前と全く変わってないと思うが。
「こんなところで話すのも何だし、軽く飯にでも行かねえか?」
「ん、ああ、そうだな」
飯か。先に食べてしまうと後で宿で食べれなくなる。かなり多く食べれる方ではあると思うが、どうするべきだろうか。露店巡りなら夜しか出てない店はあるかもしれないが別に明日でも構わないのだが。
「いいね。俺達もついていっていいかい?」
俺が少し悩んでいると、後ろからレンがそう声をかけてきた。
「露店を回らなくてもいいのか?」
横に並んだレンの方に視線を向けて尋ねる。
「それは別に明日の午前中でもいいしね」
「俺もいいぜ」
シンも同意済みのようだ。それなら気にしなくていいだろう。少し宿に向かうのは遅くなりそうだが、ライアに連絡しておいて少し待ってもらおう。後で何か奢れば許してくれるはずだ。多分。
「俺の方はいいが、そっ…後ろにいるのはパーティーメンバーだろ?いいのか?」
俺と飯を食うということは、タクのパーティーメンバーである彼女らにも迷惑がかかることになるかもしれない。それを懸念して俺が聞くが、パーティーメンバーの方から答えが帰ってきた。
「構わないわよ。私達も今からご飯だし、人数は多いほうが楽しいしね」
初期の布装備ではなく、神官、もしくは僧侶のような服を着た女性だ。知らない人といきなり食べるのを忌避しない性格らしい。それならありがたい。
「よし、決まりだな。すぐそこにいい店を知ってるんだ。NPCだけどな。ついてきてくれ」
タクの案内でついていく。すぐ、といったのは本当にすぐそこだったようで、広場から少し東に進んだところの店だった。小綺麗な感じで、やたらと高級な感じがしないのが好印象だ。
「うし、4人ずつに分かれて座るか」
「そだな。俺も話したいしそれがいいな」
「そうだね
」
タクの言葉に格闘家らしき若い男性が賛成し、レンも同意して座り方を決める。
一方のテーブルには俺とタク、それに格闘家の男性と神官らしき女性がつき、もう一方にはタンク役の大柄な男性と魔法使いらしき女性、それにレンとシンがつく。
「さてと。積もる話は後にしといてまずは注文しよう。ムウは何にする?」
「軽いもので頼む。あまり腹は減ってなくてな」
「了解。カルナは?」
「私はキノコのグラタンで」
「俺は生姜焼きで頼む」
神官らしき格好をした女性はカルナというらしい。名前を尋ねたところ格闘家の男性はタントというらしい。
タクが料理を注文し終えて待つ間、雑談をして待つことにした。
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