空を返しにいった話
はやしば
第1話
風景を切り取る事ができるハサミが発売されたのは十数年前の話だ。
例えばそのハサミを目の前の街並みを切り抜くのに使ってみよう。簡単だ、刃を空間にあてちょきちょきと好きな大きさに切り抜けばいい。そうすれば見たそのままが手に入る。
もちろん写真と違って現実の切り抜きだから切り抜いたあとの画面はずっと現実通りに動き続ける。街なら人が行き交うし日は上り暮れ景色は移りゆく。
まあ定点カメラとモニタで同じ事ができちゃうんだけど。
定点カメラより良いところはずっと手軽で機材の故障がないところかな。
画期的な商品は大いに喧伝され流行し、世界の美しい景色たちが切り抜かれ続けた。そして世界は切り抜き跡だらけになり発売後一年も経たずハサミの使用は厳しく規制されるようになった。
そう、切り抜いたら跡が残るんだよね…このハサミ。ハサミを使った後には灰色の何もない空間ができるのだ。
空を返しにいった話 はやしば @hayasiba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。空を返しにいった話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます