第38話 巫子の欲求不満が爆発して僕を襲いました
「んん……」
朝、窓の外から小鳥の囀りが聞こえ僕は目を覚ました。
「朝か、今何時……」
ビンッ
「んんっ!?」
僕は時刻を確認するために体を起こそうとすると、異変を感じ目を見開いた。
「な、何だこれ!? か、体がベッドに縛られてる!?」
そう。僕の両手両足がベッドの四隅に括られて伸びる紐によって縛られ、身動きがとれなくなっていたのだ。
「だ、誰がこんなことを……」
「あ、文人さん起きましたか? おはようございます♪」
僕が愕然としていると、台所の方から先に起きていた普段着姿の巫子がニコニコしながらやってきた。
「あ、巫子! ちょうどいいところに! 助けて! 誰かは分からないけどベッドに手足を縛られて動けないんだ!」
「まあ、それは大変ですね。でもごめんなさい。それはできません」
僕はすかさず巫子に助けを求めたが、巫子は僕の状況を見ても驚くことなく、微笑みながら僕の頼みを却下する。
「だって、それをしたのは私ですから♪」
「……え? 巫子が? 何で? どういうこと?」
「文人さんが悪いんですよ? 文人さんがあまりにも素敵過ぎるから……」
僕が訳が分からずにいると、巫子が妖しい目と笑みを僕に向けた。
「男性と同じように、女性も魅力的な異性を見るとエッチなことがしたくなるんです。文人さんが傍にいるとドキドキが止まらなくて、もう我慢できなくなったので襲っちゃうことにしました♪」
「み、巫子? 魅力的と言ってくれるのは嬉しいけど今はダメだよ! 今日も仕事があるし、2日連続で遅刻したら真白に怒られるよ!」
危険な雰囲気を感じた僕は焦りながら巫子を諭す。
ヤバい! 禁欲のせいで欲求不満が爆発して完全に理性を失ってる!
「大丈夫です。真白さんには文人さんが体調不良で休むと連絡を入れておきますし、スッキリしたら私が文人さんの分まで頑張って仕事しますから♪」
「ダメだよ! ズル休みなんて仕事ができるできない以前の問題だし、それに今は禁欲中じゃないか!」
「文人さん、何をおかしなことを言ってるんですか?」
僕の必死の説得を聞いて、巫子は不思議そうに首を傾げた。
「確かに私は禁欲すると言いましたけど、エッチなことをしないとは言ってませんよ?」
「一緒だよ! 言葉は違うけど意味はほぼ一緒だから! 巫子の方こそおかしなこと言ってないで、さっさと僕を解放してよ!」
「文人さん、どうやら自分の立場が分かってないようですね。いくら正論を言ったところで、身動きできない今の文人さんは私のされるがままになるしかないんですよ♪」
僕が喚く様子を巫子が余裕の笑みを浮かべながら眺める。
「ふふっ♪ 楽しみだなあ。実は私、一度でいいから文人さんのことを好きにしてみたかったんです♪」
「み、巫子止めて! お願いだからいつもの優しい巫子に戻って! こんなのダメだよ!」
「あら? いいんですか止めても? 口ではそう言ってますが、文人さんの体は気持ち良くなりたいって言ってますよ?」
「うっ……」
巫子が指摘したように、僕は巫子を止めようとする一方で「これからどうなるんだろう」と期待している自分がいた。
少しだけど興奮で体が熱く息も荒くなり、それを巫子に見抜かれた僕は言葉に詰まってしまった。
「文人さんも変な意地を張らずに素直になればいいじゃないですか? 気持ち良くなりたいですって♪ ほら、言ってみてください♪」
「で、でも……」
巫子が僕の耳元で甘い言葉を囁き、僕は懐柔されそうになる。
「うーん、なかなか強情ですねえ。まあ文人さんは紳士ですからね。それならこれはどうでしょう? さわさわ~♪」
「ぐううっ!?」
すると巫子が僕のパジャマを捲り胸から脇のあたりにかけて、つーっと指を這わせると、ゾクゾクとくすぐったさに似た快楽が僕の体を襲う。
「ほらほら、無駄な抵抗は止めて私に屈しちゃってください♪」
「あうう……き、気持ち良くなりたいです!」
焦らされているような感覚に堪らず僕が巫子の誘惑に陥落した。
「はい。よく言えました♪ お利口さんの文人さんにはご褒美をあげちゃいます♪ ちゅっ♪」
巫子が笑顔で僕の胸から離した手を僕の頬に添えてキスをする。
普段の優しい巫子もいいけど、こういうドSな感じの巫子も……いいな。
巫子の新たな魅力に気づき魅了された僕は、もう煮るなり焼くなり何をされてもいい気分になりかけていた。
「それでは文人さんのお望み通り、いっぱい気持ち良くしてあげますね。それはもう私以外の人では満足できなくなるくらいに♪」
巫子は唇を離すと、どこからか取り出したアイマスクを僕の目に着けた。
「ちょっ、ちょっと巫子!? 何するつもり!? 何も見えない! 何も分からない! 怖いよおおおおっ!」
「大丈夫です。怖いのは最初だけ、すぐに気持ち良くなって何も考えられなくなりますから♪」
視界を奪われパニックになる僕を、巫子が安心させるように宥める。
「さあ文人さん、今から私がこの世の天国に連れて行ってあげますね♪」
「あぐ、あ……はああああっ♡ と、溶ける! 気持ち良過ぎて脳が溶けるううううっ!?」
その後僕は「こんなのどこで覚えたんだ!?」と疑う暇もなく、巫子の超絶テクニックの数々により幾度となく昇天させられたのだった。
◆◆◆
「うあっ!?」
体がビクッと痙攣した弾みで、僕は目を覚ました。
「すう……すう……文人さあん」
「はあっ、はあっ、ゆ、夢か……」
隣で僕の名前を呼びながら幸せそうに眠っている巫子を見て、僕はさっきまでのことが夢だということに気づいた。
「まあ、そうだよね。いくら欲求不満とはいえ巫子が嫌がる僕に無理矢理迫る訳ないか」
どうやら僕も巫子と同様に、昨日と一昨日に夜の営みがなかったことで性欲が溜まりエッチな夢を見てしまったようだ。
「……待てよ」
僕が納得して落ち着いたのも束の間、嫌な予感が頭をよぎった。
さっきまで僕は巫子にエッチなことをされる夢を見ていた。
それも今思い出しただけで興奮しそうなくらい強烈な夢を。
「ま、まさか……」
僕はおそるおそるパジャマのズボンの中に右手を入れる。
……濡れてない。
「よ、よかったあ……」
安堵した僕は大きく息を吐いた。
危ない危ない。
巫子は禁欲してるのに、不可抗力とはいえ僕だけ気持ち良くなって暴発させたなんてことになったら、さすがの巫子も拗ねて怒りかねない。
「く……ううっ」
「ん?」
すると突然、巫子の表情が苦しそうなものに変わり何やらうなされだした。
「ふ、文人さん、んああっ!」
「み、巫子!? どうしたの!?」
さらに僕に助けを求めるような寝言を言い、僕は慌てて声をかけながら左手で巫子の肩を揺する。
まさか誰かに襲われるような怖い夢でも見ているのか!?
「文人さんが3人もいたら……壊れちゃいますう……」
「……」
僕は唖然としながら巫子を起こそうとする手を止めた。
どうやら巫子もエッチな夢を見ているようだ。
しかも僕は1人だったのに対して3人って……。
単純計算で僕の3倍性欲が溜まってるってことか。
「このままにして僕も二度寝するか」
起こしたところで、禁欲中の今は巫子の気持ちに応えてあげることができない。
せめて夢の中だけでも好きなだけさせてあげよう。
「ふ、あ……くうんっ」
「しかし耳に毒だな……」
巫子の喘ぐ声を聞き、僕の胸にモヤモヤした気持ちが湧き上がる。
「隣でこんな声を出されたらとても眠れないよ……」
僕は困り果てながら、時計を見て今の時刻を確認した。
今は6時過ぎ、早いけど起きるのもアリかなという時間だった。
「仕方ない。たまには僕が朝ご飯を作って巫子に楽をさせてあげるか」
僕は二度寝を諦めてベッドから降り、台所に行って食べ物を探し始めた。
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