第6話 巫子がお泊まりすることになりイチャイチャな夜を過ごしました
「ごちそうさま。さて、お腹もいっぱいになったことだし帰るわね」
結局、真白は5杯のカレーを完食し満足そうな顔をしながら立ち上がる。
「あ、文人。ちゃんと昨日の占いが当たってたことのお礼を配信のコメント欄に書いておくのよ」
「うん。分かった」
「ばいびー♪」
そして部屋を出て行き僕の部屋は平穏を取り戻した。
突然現れて場を面白おかしく荒らすだけ荒らして去っていく。
まるで台風のような人だな。
「やれやれ……あ、もうこんな時間だ」
僕が一息吐きながら時計を見ると、時間は夜の8時になっていた。
「巫子もそろそろ帰る? 夜の女の子の1人歩きは危ないし、僕が家まで送ろうか?」
「それなんですけど……」
ガチャ
「巫子ー」
巫子が何か言いかけたところで、何故か真白が戻ってきた。
「巫子、これ忘れてたわよ」
「あ、ありがとうございます♪」
真白は僕たちの前にピンク色のボストンバッグを置く。
「何? この荷物?」
「お泊まりセットです。今日は文人さんの部屋に泊まろうと思いまして♪」
「えええええっ!?」
突然の巫子のお泊まり宣言に僕は驚きの声を上げた。
「あのー巫子? 一応聞くけど、女の子が男の家に泊まることがどういうことか分かってる?」
「もちろんです! いっぱいかわいがって私を大人の女性にしてくださいね♪」
「心の準備万端ですか……」
巫子は緊張や不安など一切無い、ワクワクと楽しみにしているような顔をする。
まあ僕も男だし、させてくれるなら喜んでさせてもらうけど……。
「だとしてもいきなり過ぎない? というか今日は真白の部屋に泊まれば? 隣の部屋なんだし」
「文人さん、それではダメなんです」
あまりにも警戒心が無い巫子を僕がとりあえず窘めると、巫子の表情が真剣なものに変わった。
「偉い人は言いました。告白成功はまだスタートラインに過ぎない。両想いになるまでは油断せず、使える武器を全て使って相手を落としに行けと!」
「いやもう両想いだから! 出逢ってから4年で既にキスもしてるし! というかその偉い人誰だよ! そんな言葉今まで一度も聞いたことないんだけど!」
「私♪」
「真白かよ!」
真白が僕と巫子のやり取りを愉快そうに眺める。
どうやら今日に限らず、これからも真白が巫子に入れ知恵して、いろいろおかしなことになりそうだ。
有り難いのかお節介なのか……。
「文人さん、私は以前から1人暮らしをしていますし、高校も卒業してこれから社会人になります。自分の行動の責任は自分で取るので、私を子どもではなく大人として扱ってもらえませんか?」
「……分かった」
真摯な態度で頼み込んでくる巫子に心打たれた僕は、巫子のお泊まりを了承した。
巫子は決して性への興味や大人への階段を登りたいからではない。
自立した1人の女性として、僕との絆を深めたいという純粋な思いを感じた。
それなら僕もちゃんと向き合ってあげないと失礼だと思ったのだ。
「ありがとうございます! 今夜はいっぱいイチャイチャしましょうね♪」
「うわっ!?」
すると巫子が大喜びしながら僕に抱きついてきた。
「み、巫子胸! 胸が思いっきり腕に当たってるんだけど!?」
「当ててるんですよ♪」
「じゃあ改めて帰るわね。二人共、熱い夜を♪ ……あ、そうだ。ねえ文人」
じゃれあう僕と巫子を見て、真白が任務完了とばかりに再び部屋から出ていこうとすると、何かを思い出したように僕の方を向く。
「何?」
「男女の営みの時、何か困ったことがあったら連絡して。すぐに駆けつけるから♪」
「するかあっ!」
◆◆◆
「文人さん、キスしてもいいですか?」
「もちろん」
チュッ
「もう一回」
「うん」
チュッ
「もっと……」
「ん~」
真白が帰った後、僕と巫子は風呂に入ってパジャマに着替え、僕のベッドの上でイチャイチャしていた。
今の体勢は巫子が僕の崩した脚の上に跨がるように座っている。
「ふふっ、文人さん、大好きですよ♪」
唇を離すと巫子が幸せそうに微笑む。
どうやら巫子はキスが好きらしく、僕たちは約1時間ほとんど休むことなくずっとキスしていて、その回数は既に100回を超えていた。
「えいっ♪」
「わっ?」
すると巫子は勢いよく僕に抱きつき、そのままベッドに倒れ込む。
「んゅう~♪」
「み、巫子!?」
そして言葉にならない甘えた声を出しながら、動物が自分の匂いをつけようとするかのようにスリスリと僕に体を擦り付けてきた。
巫子が体を動かす度に、体と髪から香ってくるボディーソープとシャンプーのいい匂いが僕の鼻腔をくすぐり、触れ合う部分から伝わる体温と柔らかい感触が僕に心地良い興奮を呼び起こさせる。
「んぅ~っ!」
「ちょっ、ちょっと!?」
さらに巫子は気持ちが昂ぶったのかギュッと強く僕を抱き締め、脚まで絡めてピッタリと密着しようとする。
僕の体に胸を押しつけ、パジャマ越しにお互いの股間が擦れ合っていることなんかお構いなし。
まるで溶けて僕と一つになろうとしているかのようだった。
「はむっ、んふっ」
「んんっ!?」
それでも巫子は満足できないのか僕の口に吸い付き、舌を入れてより深い繋がりを求めてくる。
その熱烈さに僕は戸惑いながらも、口を通して巫子に溢れんばかりの愛を注ぎ込まれているような気がして心が満たされていくのを感じた。
「ふう……」
そしてようやく気が済んだのか、巫子は唇を離し満足そうな顔をして息を吐く。
「ふふっ、幸せですね♪」
「う、うん。そうだね……」
巫子と付き合って、まず一つ分かったことがある。
この子……めちゃくちゃ甘えてくる!
僕の中では結構しっかりとしている大人びたイメージがあったんだけど、今はその面影がなくデレデレに蕩けている。
まあ末っ子で育った18歳だし、これくらいが年相応と言うか普通なのかもしれない。
何にせよ、それだけ僕に心を許してくれているということだから、年上の男として誇らしい限りだ。
「それにしても、巫子がこんなに積極的だとは思わなかったなあ」
「だって文人さんは私の初めての彼氏ですし、それに3年も待ち続けた恋がようやく叶ったんですから♪」
「それもそうか」
嬉しそうに答える巫子を見て、僕は舞子に告白してオッケーをもらった時のことを思い出した。
確かに自分の抱いている好意を勇気を出して伝え、受け入れてもらえた時の喜びはそう簡単に言葉で表現できるものではない。
さらに初めての時はまた格別で、きっと今の巫子も当時の僕と同じ心境なのだろう。
「今日はその3年分の想いを受け取ってもらいますから、覚悟してくださいね♪」
「あはは、お手柔らかに」
しかし巫子に告白されたことで、今まで見えなかったものが見えてきた。
舞子と付き合っていた時は僕が告白したこともあり、基本的に僕が舞子のワガママに付き合い一方的に尽くしていた。
舞子が僕に優しくしてくれることもあったけど、今振り返ると義理というか尽くしてくれたことに対するお礼という感じだった。
でも巫子と付き合い尽くされる側になると、何もしなくても愛してもらえる幸せを知り僕も巫子を愛したくなった。
きっと舞子は元々そこまで僕のことが好きじゃなかった。
そのことを悟った瞬間、僕の中の舞子に対する未練が消えた。
もう舞子のことなんかどうでもいい。
これからは僕のことを愛してくれる巫子のために生きると誓った。
「ねえ文人さん、体、触ってもらえますか?」
「いいよ」
僕は巫子の背中に腕を回し、左腕で抱き締め返すと右手で頭や背中、そしてお尻と手の届く範囲を優しく撫でていく。
「ああ、いい……ですぅ」
すると巫子が気持ち良さそうな声を出しながら目を細める。
どうやら僕と巫子は生理的というか体の相性が良いらしく、手を繋いだりキスをしたりして触れ合うととてもよく「馴染む」ような感覚がする。
触り心地がいい、触られると気持ち良く感じるのはもちろん。
離す時には体がまるで「離れたくない」と言っているかのように軽くくっ付いてくるのだ。
手や唇でこのように感じるのだから、裸になり直接肌を重ねるとどうなってしまうのだろうかと楽しみと同じくらい怖く思う程だった。
「文人さん、そろそろ……」
「うん」
しばらくするとすっかり気持ちが出来上がり、興奮する巫子に促された僕は一度巫子に離れてもらい体を起こした。
「巫子……」
「……はい♪」
そしてパジャマを脱がすため巫子に向かって右手を伸ばす。
ゾクッ
「っ!?」
しかしあと少しで触れるかというところで、突然心がザワつき僕は手を止めてしまった。
な、何だ? 今の嫌な感じは?
「文人さん、どうかしましたか?」
「え? ああ何でもないよ。ちょっと一瞬ボーッとしちゃって……」
不思議そうに首を傾げる巫子に、僕は戸惑いながら何でもないように振る舞う。
何だか分からないけど、多分僕も久し振りだから緊張しているんだろう。
「じゃあ改めて……」
ドクンッ
「っ!?」
「文人さん!?」
僕は再び手を伸ばしたが、先程よりも強い、心をキュッと掴まれたような不快感が僕を襲った。
「く、うう……」
「文人さん!? どうしたんですか!?」
そして僕の意思に反して手が勝手に震え出す。
『というかさあ、あんた下手過ぎなのよ!』
怖い、傷つきたくない。
上手くできなくて巫子に冷たい目で見られるのが怖い。
舞子の声が僕の頭の中で再生されたことで、僕は自分の身に起こっていることを理解した。
この前舞子にフラれた時に言われたことにショックを受け、女の子を抱くことに恐怖を感じるようになっていたのだ。
目の前に巫子のようなとても魅力的な女性がいるのに、先程までの興奮が嘘のようにどこかに消え失せていた。
「と、止まれ! 止まってよ!」
僕は焦りながら左手で右手を掴み手の震えを押さえ込もうとする。
ど、どうしよう。このままだと巫子を抱けない。
早く何とかしないと巫子に格好悪い姿を晒して、巫子にも女性として恥をかかせることに……。
「文人さん!」
ギュッ
「あ……」
僕がパニックになりかけていると突然、僕の頬に柔らかいものが当たった。
「巫子……」
僕は一瞬何が起こったのか分からなかったが、しばらくして巫子が僕を頭から抱き寄せ、巫子の大きな胸に顔を埋めているのが分かった。
ああ、温かくて気持ちいい……。
母親の愛に包まれているような感覚に、僕の体から力が抜けてそのまま巫子に身を委ねる。
「落ち着きましたか?」
「うん……」
気がつくと僕の中の動揺は収まり、手の震えも止まっていた。
「どうしたんですか? 何かに怯えているような顔をしていましたけど、よかったら理由を聞かせてくれませんか?」
巫子の口調と表情は僕を心配するものではなく、安心させようとするとても穏やかなものだった。
ああ、巫子は強いな。
巫子だってこれから初めて男に抱かれる、心に余裕のない状況のはずなのに、こうして僕を気遣ってくれる。
「舞子にフラれた時、下手だったって言われたのを思い出して、上手くできなくて巫子に幻滅されたらどうしようって怖くなっちゃった」
そんな巫子に心強さを感じた僕は、今の自分が抱いている不安と正直な気持ちを隠すことなく話していた。
「そうですか……」
そして巫子は僕を責めることなく慰めるように僕の頭を撫でながら、少し考え込むような仕草をした後に口を開いた。
「文人さん、もし私が上手く文人さんにご奉仕できなかったり、怖いから今日はもう止めるって言ったら、文人さんは私のことを嫌いになりますか?」
「なるわけないよ。結果がどうあれ巫子は一生懸命頑張ってくれたんだから、それだけで僕は嬉しいよ」
「そうですよね。私も同じ気持ちです♪」
巫子は僕の気持ちが楽になるように優しい言葉をかける。
「そもそも男女の営みは、心と体の両方が繋がることで絆を深め幸せを感じるためにするものです。そんな苦しそうな顔をしていたらする意味がないじゃないですか」
「うん。ごめん。巫子の言う通りだ」
「それに私と文人さんでするのは初めてですから、上手くできなくても恥じる必要はありません。上手くできるまで何度もすればいいだけですし、私にできることなら何でも協力するので一緒に頑張りましょう♪」
「……うん。ありがとう」
上手くできなくても嫌いにならない。
巫子は優しいからきっとそう思ってくれているとは思っていたけど、こうして言葉にしてくれることでより確かなものになる。
同時に「この人には格好つけなくてもいい」「どんなに弱くて情けない醜い姿を晒しても大丈夫」という安心感が湧いてきた。
それは舞子と付き合っていた時には感じたことがない、かけがえのない信頼の証だった。
「はあ……はあ……」
何も失うものはない。何も恐れる必要はない。
僕はただ自分の欲望に従えばいい。
そう理解した瞬間、僕の体が興奮を取り戻した。
「巫子、待たせてごめん。もう大丈夫だから」
僕は理性を失いそうになりながら巫子から離れる。
巫子がほしい。
巫子に僕のありのままの姿を見せて受け止めてほしい。
今にも空腹で死にそうな状態で、食べてくださいとばかりに大好物が目の前に置かれているのに、食べずに立ち去る肉食動物なんているものか!
「ふふっ、文人さん、とても素敵な顔になりましたね♪ ドキドキします……」
今にも襲いかかりそうなくらい、目をギラつかせ息を荒くしながら欲情している僕を巫子がうっとりと期待するような目で見つめる。
「じゃあ、始めようか?」
「はい♪ 私に遠慮はいらないので、文人さんの好きなようにしてください♪」
「分かった。でも痛かったり無理だと思ったら我慢せずに言うんだよ?」
「大丈夫です。文人さんの愛だと思えば、きっと痛くてもすぐに気持ち良さに変わりますよ♪」
「あはは、ありがとう巫子。大好きだよ」
僕は今度こそ巫子の体に手を伸ばし、パジャマを脱がすと巫子を押し倒した。
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