第5話 夕食の時に乱入してきた真白と一緒に巫子のスカートを捲りました
「はい。文人さん、あーん♪」
「あーん」
巫子がスプーンでカレーをすくい僕の口に運ぶ。
口に咥えると牛肉と野菜の旨味が溶け込んだカレールーと、ふっくらと炊きあがったご飯による絶妙なハーモニーが口の中に広がる。
「美味しいですか?」
「うん。凄く美味しい」
「そうですか。よかったです。たくさん作ったのでお腹いっぱい食べてくださいね♪」
「うん」
あの後、僕は巫子と一緒に真白の会社で働くことになった。
真白は元々フリーの動画編集者だったが、アマテラス司の小説紹介が商売になると思って声をかけ一緒に仕事することになったそうだ。
巫子によると真白がアドバイスしてくれるようになってから、登録者数の伸びるスピードが格段に上がったらしい。
形態としては真白が社長で戦略の決定と動画編集、巫子は会社所属のVTuberとして紹介する小説の目利きと事務作業を行っている。
僕は雑務など2人の補助をすることになり、これらの説明と入社のために必要な書類の記入や手続きをしているうちに、夕方になり今日はこれで解散となった。
巫子が夕食を作ってくれると言うので、僕は巫子と一緒に僕の部屋に帰り今に至る。
なお巫子は僕が告白をオッケーすることを見越して、既に昼食のサンドイッチの分と一緒に買い物を済ませているという有能っぷりをいきなり発揮し、彼氏として何とも頼もしい限りである。
「今度は僕が食べさせてあげるよ。はい巫子。あーん」
「あーん♪」
バクバクバクバクバクバクバクバクッ!
「……」
書類上の僕の入社は4月で「それまで適当に巫子とイチャイチャしといて」と真白に言われたことからその通りにしているのだが、僕たちのラブラブムードに水を差す豪快な食事音に僕のスプーンを運ぶ手が止まった。
「おかわり」
「あ、はーい。すぐによそいますね♪」
巫子は空になった真白の皿を手に立ち上がりキッチンに向かう。
「……ねえ真白、今さらだけど何でここにいるの?」
僕は座卓テーブルの反対側に座っている真白に声をかける。
真白はカレーが出来上がり、さあ食べようかという時に突然やってきて、イチャつく僕たちの前で黙々とカレーを食べ始めた。
「あ、私のことは気にしないで」とは言ったものの、どうしても視界に入るためとうとう無視できなくなったのだ。
「え? 少し考えれば分かるでしょ?」
真白は何でそんなことを聞くのかと言いたそうな目で僕を見る。
「人間って食事をしないと死ぬけど、料理をするのは面倒よね?」
「まあ、そうだね」
「そして巫子は料理が上手」
「うん」
「さらに作る量が2人分から3人分に増えても、作る手間はそんなに変わらないじゃない?」
「確かに変わらないけど……」
「だったら巫子に料理を作ってもらって、一緒に食べるのが合理的だと思わない?」
「まあ言ってることは分かるけど……」
真白としてはこれで十分説明したつもりのようだが、僕はどこか腑に落ちないものを感じる。
「それに1人で食べるよりも大人数で喋りながら食べる方が楽しいし」
「いやさっきまで『私のことは気にしないで』って1人で黙って食べてたよ?」
「うるさいなあ。細かい事を気にする男はモテないわよ?」
「いや、僕の彼女すぐそこにいるんだけど……」
「ごめんなさい文人さん。文人さんへの告白の相談に乗る代わりに、上手くいったら夕食を作ることを約束していたんです」
「あ、そうなの? なら仕方ないか」
おかしなことばかり言う真白に僕が呆れていると、キッチンから戻ってきた巫子が僕を宥めるように微笑みながら謝った。
「はい真白さん。おかわり持ってきましたよ♪」
「ありがと」
バクバクバクバクバクバクバクバクッ!
「凄いな……」
巫子からカレーの皿を受け取ると、またもの凄い勢いで食べ始める真白に僕は圧倒される。
ちなみに僕と巫子はまだ1杯目にも関わらず、真白はもうこれで3杯目。
真白の身長は150センチにも満たないのだが、この小さな体のどこにカレーが入っているのだろう?
「あ、食べたものはすぐに消化されて、エネルギーは体ではなく脳に行ってるわ」
すると思っていることが顔に出ていたのか、真白が僕の心を読んで疑問に答えた。
「しかし助かるわあ。これで巫子にご飯を作ってもらえる回数が劇的に増えるわ」
「劇的にって……もしかして真白、これから巫子が僕の家でご飯を作る度に食べにくるつもり?」
「ついでで済むから別にいいじゃない? 食費と手間賃はちゃんと巫子の給料に上乗せして払うし、私は美味しいご飯が食べられる。これは私と巫子のWinWinな取引なのよ」
「そうかなあ……」
もっともらしい理屈だけど、ただ自分が楽をするために話術を使い、正当化して巫子を上手く利用しようとしているだけのように見えるけどなあ。
「あら? まだ何か納得できないことがあるの?」
「そういうわけじゃ……」
「ふうん? じゃあこうする」
バッ!
「きゃああああっ!?」
真白は僕が微妙な表情をしているのを見ると、突然右手で傍に立っている巫子のスカートを掴んで思いっきり捲り上げた。
「わお……」
眩しいばかりの巫子の綺麗な脚と白のパンツが僕から丸見えになる。
「ちょっ、ちょっと真白さん! 何するんですか!」
巫子が慌ててスカートの前を押さえる。
「これで文人が巫子のパンツを見れてラッキーってことで、みんな得してハッピーエンド♪」
「あの、私は恥ずかしい思いをしただけで全然ハッピーじゃないんですけど……」
「いいじゃん。減るものじゃないし」
「それなら自分のを捲ってくださいよ……」
全く悪びれない真白に巫子は拗ねるように文句を言う。
「それだとあまり意味がないのよ。巫子のパンツだから文人が喜ぶの。文人の好感度が上がるなら巫子も得するでしょ?」
「……そうなんですか?」
「へっ?」
真白の言葉を聞いて巫子がチラッと機嫌を伺うように僕を見る。
「文人さんはその……私のパンツなんかを見て嬉しいですか?」
「え? いやその……何と言うか……」
僕はどう答えたらいいのか困ってしまう。
うんと言ったら巫子に変態だと思われるかもしれないし、嬉しくないと言ったら巫子が自分には女性としての魅力がないと落ち込んでしまうかもしれない。
「うんうん。喜んでる喜んでる。巫子に紳士に見られたいから何でもないような顔をしてるけど、心の中では『ヒャッホゥ! やったぜ!』とガッツポーズしてるから、ねえ?」
「え、ええ……」
すると真白が勝手に僕の気持ちを代弁した。
「う・れ・し・い・わ・よ・ね?」
「う、うん。嬉しいです……」
そして真顔による圧力をかけられ、僕は無理矢理うんと言わされてしまった。
「分かりました。じゃあ許します。でもいきなりはビックリするので止めてくださいね?」
「へえ? ねえ文人」
「ん?」
「いきなりじゃなかったらいいらしいから、文人も捲らせてもらいなさい」
「えええええっ!?」
仕方ないという顔をする巫子の隣で真白の目がキランと光ったかと思うと、突然とんでもないことを言い出した。
「な、何でそうなるんですか!? そんなことをしても文人さんは喜びませんよ!」
「巫子、分かってないわね」
真白は甘いとばかりにチッチッと人差し指を振るジェスチャーをして、動揺しながら抗議する巫子を制す。
「スカート捲りは無垢な子どもの時だけ許される禁断の遊び! 大人になった男たちは、もう戻れないあの甘美な時間と思い出にロマンを感じるのよ!」
「いや、女の真白に男のロマンとか分からないから」
不自然に思う程の熱量で語る真白に僕は冷静にツッコミを入れる。
「でも文人だって童心に帰って久し振りにやりたいでしょ?」
「何で僕がやったことがある前提なんだよ? そんなにエッチな男に見える?」
まあ確かに小学生の時に流行っててみんなやってたから、僕も1度だけ魔が差してやっちゃったことがあるけどさ。
「まあとにかく告白する時に何でもするって言ったわけだし、惚れた弱みとしてやらせてあげなさい」
「わ、分かりました。文人さんがやりたいのなら……どうぞ」
「ええ……」
結局巫子は真白に押し切られる形で承諾し、僕が巫子のスカートを捲らないとこの場が収まらない空気になった。
ど、どうしてこうなった?
「まあいいや。じゃあ巫子、捲るよ?」
「は、はい……」
僕は深く考えるのを止めて巫子の足元にしゃがみ込み、右手でスカートを摘まんで捲り上げると、再び僕の目の前に美少女のパンツと太ももという絶景が現れる。
「はうぅ……」
「っ!」
すると巫子が羞恥で顔を真っ赤にし、涙目になりながら消え入るような声を上げる姿に僕は思わずドキッとした。
な、何だ!? この心の奥から湧いてくるモヤモヤした感情は!?
例えるなら、まさに小学生の男子が好きな子に意地悪して、嫌がっているのにもっと困らせたくなるあの懐かしい気持ちに似ている。
今まで気づかなかったけど、僕ってSの気があるのかなあ……。
「はあ眼福眼福」
「ん?」
僕が新たな世界に目覚めそうになっていると、何故か真白が便乗するように僕の隣で巫子のパンツを見ながら有り難そうに拝んでいた。
「何で真白も見てるんだよ? 女の子なのに」
「え? だって美しいものを見たい気持ちは男女共通。女でもかわいい子のパンツや裸を見たい、もっと言えば触りたいと思うのは普通のことよ?」
「そういうものなの?」
「そういうもの。……あ」
真白が当たり前のことのように僕に説明すると、何かに気づいたような声を出した。
「クロッチのところにうっすらと黄色いシミが……」
「え?」
「いやああああっ!? み、見ちゃダメええええっ!!」
真白の指摘に巫子が絶叫し、慌てて僕の手を払うと後ろに飛び退いた。
「真白さん! 何てこと言うんですか! 私の後始末が悪かったせいでもありますけど、それは気づいても言っちゃダメです! お嫁に行けなくなったらどうしてくれるんですか!」
巫子が今度は怒りで顔を真っ赤にしながら真白に向かって叫ぶ。
お、おお……あの優しくて温厚な巫子が怒ってる。
よっぽど恥ずかしかったみたいだ。
「大丈夫よ。それくらいで嫁にいけなくなったりしないわから。それに嘘だし」
「嘘なんですか!? もう! 驚かさないでくださいよ!」
「でも、巫子みたいなかわいくて上品な子には、こういう詰めの甘いところや欠点がある方が萌えない?」
「知りませんよ。仮にそうだとしても、もう少しかわいらしい欠点にしてください。恥ずかしくて死にそうです……」
「まあ巫子はドMだし、その恥ずかしさもそのうち気持ち良さに変わってくるわ♪」
「私にそんな趣味はありません。適当なことばかり言わないでください……」
好き勝手過ぎる真白の言動に振り回され、巫子が疲れたような顔をする。
「ねえ文人」
見ているだけなら面白いと思いながら眺めていると、真白が僕の方を向いた。
「何?」
「ついでに私のも捲っとく? 今だけ無料の特別大サービス♪」
「いや、遠慮しておきます」
真白がニヤニヤしながら手で自分のスカートを摘まみ、見えるか見えないかギリギリの高さまで上げて誘惑してくるが、僕は丁重にお断りする。
真白も巫子とは全然タイプが違うが、特定の層からの支持を得られると思うくらいかわいらしい外見をしている。
でも彼女である巫子の前だし、先程の巫子とのやり取りを見た感じ下手にスケベ心を出すと、弱みを握られて後でどんな目に遭わされるか分かったものじゃない。
例えばスカートを捲っている時にこっそり写真を撮られ、それをネタに脅される未来が余裕で想像できた。
「あら残念。文人の意気地無し♪」
バクバクバクバクバクバクバクバクッ!
真白は口ではそう言うものの全く残念そうな素振りをせず、すんなりと引き下がるとからかうことに飽きたのか、自分の場所に戻ってまたカレーを食べ始めた。
本当、この人は何を考えているのか分からない。
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