リゼの独白と回想(Ⅱ)

ーあれは、2年前お嬢様に、お仕えしてから丁度一ヶ月たったぐらいの日だったように思われます。


「リゼ王女って番を作らないのかしら‥

第1、2王女様はとっくに伴侶がいらっしゃるのにねぇ」 


大好きなお嬢様のましてや番に関しての話題を耳にし、つい盗み聞きをしてしまいました


今となってはあの場から早く立去ればこんな思いをすることにもならなかったと後悔でしかありません。


「あら、リゼ王女は番をお嫌いだという噂を聞いたわよ!ましてや運命の…なんて毛嫌いされてるとか…」


衝撃でした。たかが侍女達のくだらない噂話‥信憑性も何もない軽く聞流せばいい話題しかし

お嬢様を運命の番でいつか結ばれ一生を共にするんだと信じ切っていた私にはあまりにも衝撃でした。


収まらない動揺と止まらない冷や汗を流しながらフラフラとその場を立ち去ることしかその時の私にはできる事がありませんでした。


「…ゼ…リゼ…リゼ?顔色が悪いようだけど、大丈夫?」


後ろから近づいてくるお嬢様に気づけないほど正気を失い、

そしてお嬢様に不躾な質問をしてしまう程にもまた前後不覚に陥っていました。


「…、お嬢様は、番がお嫌いなのですか?」


「えぇ、大嫌い…。」


「理由をお聞きしても?」


「…お姉様達を見ればわかるでしょ?あんなの番や運命に縛られた、ただの奴隷だよ

虫唾が走る…」


今まで何に対しても嫌悪も憎悪もされない温和なお嬢様が、顔を歪めて酷く憎そうな顔をされているのです。


「だから私は一生番はいらない、かと言って

αやβの伴侶もいらない」


そう言い切ったお嬢様のお顔を見て私は


『あぁ、なんで私はこんなにも自惚れていたんだろうか…勝手に好かれていると思いこんでいつか番として幸せになれると思っていたんだろうか…馬鹿馬鹿しい』


ただただ羞恥と自己嫌悪でいっぱいになりました


『お嬢様が番も伴侶も望まれないなら私の自分勝手な醜いこの好意運命の番を押し付けてはいけない。せめて国に帰るまでの期間全てを隠してでも御側に…』


私の甘い番という夢はお嬢様にとってイヤなものであるならこの気持ちは墓まで持っていこう

ひっそりと一人覚悟を決めたのでした

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