第8話

オイラがロイドと出会ったのは、防衛隊のメンバーに荷車をぶつけてしまった時のことだった。


 妹の悪口を言われて許せなくてつい口答えしてしまい、相手が怒って殴りかかられそうになった時、ロイドがものすごい魔力で威圧して追い払ってくれた。


 このとき、ああオイラもこんな風になれたら――。そんなことを考えた。


 それで思わず。


「オイラを鍛えてほしいッス」


 と言ってしまった。


 そしたらロイドは快くお願いを聞いてくれた。



 オイラは普段農作業をして生計を立てている。


 母親と妹との三人家族だが、妹は足が悪く外での仕事は出来ず家にいても出来ることを少しずつやっていた。


 大体午後三時くらいにはその日の作業は終わるので、ロイドにもそのくらいの時間に家に来てほしいと伝えた。ただその日はちょっと時間を過ぎて家に戻った。


 すると、妹のメルが家の中で自分で立っていた。

 信じられず呆然としていたオイラにメルが言った。


「ロイドさんが足を治してくれたの!また私歩けるかもしれない!」


 話を聞くと、瘴気が怪我に入り込み、それが怪我を治らないものにしていたらしい。

 ロイドは今メルに治癒術をかけるためにミリアを呼びに行ったとのことだ。


 二人ともまだ小さい頃、北の山に一人でメルが行ってしまい。匂いを頼りに探しに行ったらメルが魔物に襲われていた。火事場の馬鹿力というものだろうか。元々足には自信があるが、メルを抱えながら魔物から逃げた。


 そのあと町の治癒術士に診てもらったが完治することはなく、今まで過ごしてきた。


 それが今日会ったロイドが治してくれるだって!?

 ただメルはすでに瘴気を取り除いただけで歩けるようになっている。

 これでミリアに治癒術をかけてもらったら、また一緒に外で走ることが出来るのだろうか。


 その後ロイドがミリアと一緒にきてメルに治癒術をかけて怪我を治してしまった。


 こんなことがあるのだろうか?昼間会ったときもいい人そうだと思ったがここまで優しいなんて。


 治ったメルを見てオイラは涙が止まらなかった。


 ロイドたちが帰った後、母も帰ってきて三人でまた抱き合って泣いた。


 母もメルの足のことをいつも気にしていた。出来ることなら変わってやりたいって、オイラにだけは言ってた。


「ロイドさんには感謝してもしきれないねぇ。明日家にきたらお礼を言うよ」


「そうッスね。オイラもまだお礼が言い足りないッス」


「うん、長い間歩けなかったのに、この足が治るなんて――。私もうロイドさんに足を向けて寝られないね」


「オイラ、ロイドのために出来ることは何でもしようと思うッス。」


「そうだね。何かあったらモルがロイドさんの力になるんだよ。」


 これからメルも少しずつ畑仕事を一緒にすることになった。


 オイラは今日の出来事を一生忘れないと思う。

 この感謝を忘れずに、強くなってロイドに少しでも恩を返していこう。


 オイラも人のために何か出来る男になりたい。

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