ミドル9-3『第四幕:覚悟』

 ……そうして、隊員たちが出撃準備へと向かった後。

 人払いを済ませた壮一は通信端末を取り出し、UGN中枢評議員アッシュ・レドリックのプライベート端末に連絡を入れる。

 間もなく、通話口に苛立ったアッシュの声が響く。


アッシュ:「何の用ですか"拳聖"殿! 状況は理解しているでしょう! しかも、こちらの端末に……貴方でなければ無視しているところです!」

壮一:「すまないな。単刀直入に言おう。極めて個人的な理由で、天の火の使用権を貰い受けたい」

アッシュ:「は? 何を言っているのです……天の火は現在、レーザー照射のためにエネルギーの充填中だ! それを私的に利用させろと!?」

壮一:「そう言っている。これは"拳聖"ではなく、白辺壮一の……かつて貴方に養父と呼ばれた老いぼれの頼みさ」


 静かな口調で、壮一は稀生とマリーが手に入れた情報をアッシュに伝える。


アッシュ:「ッ……ほだされたか! もはや一刻の猶予もないのです、たった1人の少女を救うために、世界を危険に晒す事など!」

壮一:「大義を盾に、娘の……かなでの犠牲を繰り返すつもりか。私も貴方も、彼女の死を背負い、残酷な世界でそれでも日常を守るため戦ってきた。

 娘を亡くした憐れな老兵の、一生の頼みだ。責任は全て私が取る。頼む……頼む!」


 沈黙。アッシュの返事はない。だが――メールの通知音が、静寂を破った。


アッシュ:「……私とした事が、端末を間違えて機密コードを送ってしまったようだ。開封せず、即座にデータを抹消するように。

 これは評議員命令だ。逆らう事は許されない。わかっているな、"拳聖"」

壮一:「……勿論です。信頼に感謝します、レドリック評議員」

アッシュ:「……ふん」


 それ以上の問答はなく、通信は終了する。

 壮一が迷いなく届いたメールを開封すると、果たしてそこには……アッシュの言葉通り、機密コードが記されていた。


GM:新たなNPC効果を公開しよう。




◆NPC効果:アッシュ・レドリック

・『Code:I pray for you.』

 クライマックス戦闘に勝利する事で、ニュクスを封印する事が可能となる。




壮一:「"あなたのために祈る"……これで良い。未来は、若き者たちにこそ委ねられるべきだ。

 覚悟しておけ、リエゾンロード」


 病室に、壮一の静かな宣戦布告が響き渡った。

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