ミドル9-1『第四幕:覚悟』
GM:前回の情報収集の続きからだ。判定する人は登場をお願いね。
稀生:シーンイン。(ダイスころころ)10上昇、110%! ぐっはぁ!?
マリー:シーンイン。(ダイスころころ)5点上昇、96%!
GM:稀生……!?
GM:では、改めて情報収集項目を確認しておこうか。
▼情報収集『ニュクスを鎮める方法』
【精神】 合計30
※Dロイス『
※PCたちの達成値を継ぎ足していくことで、合計達成値が増加していく。
※シーンを改め、繰り返し判定を行なうことが可能。
マリー:じゃあ、こっちから判定するの。
(ダイスころころ)達成値13なの。これで残りは17、上手く行けば1回ずつの判定でクリア出来そう。
稀生:次はこっちだな。時にGM。《電子使い》の宣言で判定にボーナス貰えたりするかな。専用機器なしで、電磁記録媒体の情報を読み書き出来るというイージーエフェクトなのだが。
GM:ふむふむ。では判定の技能を〈RC〉に変更。更に達成値に+2のボーナスを差し上げよう。
稀生:ありがたい! では《電子使い》を使用しつつ判定だ!
(ダイスころころ)達成値……15、ちょろっと足りない!
マリー:その心配はないの。ここで『バディムーブ』を宣言! その判定の達成値を+3するの!
稀生:マリー……ありがとう! これで達成値18だ。
GM:おお、合計達成値30を突破したか。OK、情報を公開しよう。
▼情報『ニュクスを鎮める方法』
ニュクスの破壊は物理的に不可能だ。事態打開の可能性があるとすれば、月の活性化を鎮め、その力を封印する事だろう。
ニュクスそのものに地球のレネゲイドへ干渉する意志はなく、福音でその能力に指向性を持たされているに過ぎない。
世界を救うには、既に活性化しているニュクスを上回る出力で、エイルの月を封じる歌を届ける必要がある。
そのための方法は……天の火でエイルの歌に宿るレネゲイドを収束させ、月に向けて照射する事だ。
一介のレインズ隊員であるキミたちに天の火の使用権はない。しかしレインズ隊長の白辺壮一であれば、何らかの手段を持っているかもしれない。
マリー:「ふぅ……こちらの担当部分は大体わかってきたの。そちらの進捗は?」
稀生:「上々だ。隠蔽工作されてるけど、半分くらいなら読み解けそうだ」
端末に表示された、暗号化された文面を解読していく。ノイマンの並列思考で作業を続けながら、ぽつりと呟いた。
「今回の件でさ……俺だけじゃ何も出来ないんだなって、思い知らされたよ」
マリー:「何を当たり前の事を言ってるの。オーヴァードだろうと、万能じゃないのは知ってる筈」
若干の呆れが入った声音で告げる。
「"ブロークンコンパス"、アナタは心底お人好しだとマリーは思うけど、何故そこまでして見ず知らずの他人に尽くすの? それだけがどうしても理解出来ないの」
稀生はマリーの問いかけに一瞬だけ瞑目し、胸元からアクセサリーを取り出す。
高級品とは程遠い、市販品だろう花型の磁石パズル。紐を通してアクセサリーにする事が想定された品でないのは、一目でわかるだろう。
稀生:「オーヴァードに覚醒する前は、妹がいたんだ」
手元のパズルを、そっと指でなぞる。
「レネゲイドに感染して、暴走して……そして死んでいった。その
マリー:「……自分を赦せていない。マリーからは、そんな風に見えるの」
稀生:「そうだな。きっと赦せてなんかいない。だってそうだろ。
暴走した俺は、この手で……ただの人間だった妹を、
あの子の無残な姿を見るまで、俺は暴走し続けて……結局、オーヴァードとして完全に覚醒した」
背中を丸め、稀生は手元のパズルを強く握り締める。
稀生:「その日は、俺の誕生日で。殺してしまった妹が贈ってくれる筈だったプレゼントを形見にして、今もこうしてずっと持ってる」
マリー:「……なら、アナタはどうすれば自分を赦せるの。自分が堕ち果てるときまで戦うの?
過去のけじめは、どこかで付けるべきなの。いつまでも引っ張られるものじゃない」
少しの沈黙に、カタカタと響くタイピング音。再び、マリーの声が静寂を破る。
マリー:「……マリーも、汚いものを背負ってるの。自分ではどうしようもないものを」
稀生:「良ければ教えてくれ。マリーは、どうやってそれに向き合ってるんだ?」
マリー:「難しい事ではないの。マリーは自分の過去よりずっと大切な場所を見つけただけ」
コンコン、と足先で床を叩く。
「マリーは元々、"マスターレイス02"のバックアップ。スペアとして扱われるクローンだったの。
オリジナルはずっと人殺しを続けて、とある地にて朽ち果てた。それでマリーの過去が消えるわけじゃない。それでも、罪より大切な場所、レインズがある。
だからマリーは戦える。己の過去を背負ったまま、守りたいもののために。
稀生。アナタが心の底から守りたいものは、何?」
マリーの真っ直ぐな目が、稀生を貫く。
稀生:僅かに、視線を彷徨わせる。
今までの任務でも、両手の指に余る程度には誰かを救ってきた。だが、自分が心の底から守りたいものとは。
たっぷり十数秒は悩み、稀生が出した答えは――。
稀生:「決められない。手の届く範囲、目の届く範囲、知覚出来る範囲。守れるなら、全員を守りたいんだ」
誰も彼もを救いたい、守りたいの一心で全力を尽くしてきた。
「全てを救えるとは、"僕"も思わない。けど、救える相手を見捨てる事は、"俺"はしない。
心から守りたいものはと言われると、手を伸ばせる全てになる」
ああ、我ながら馬鹿だなと、少年は笑ってそう答えた。
マリー:大きく溜め息を吐く、それでは今まで通りの稀生が続くだけだ。でも。
「呆れた。FH出身のマリーから見ても、強欲が過ぎるの。でも……それでも捨てない事を選ぶなら、やって見せるの。
ニュクスという眼前の脅威から、手を伸ばせる全てを守って見せて」
そこで、キーボードを一際強く打ち付ける。端末の画面に、解読された文字列が表示される。
「私たちの鍵は……エイルの歌声、天の火、そして……レインズ隊長、白辺壮一なの」
纏め上げたデータを稀生に共有しつつ、相棒としてマリーは語りかける。
マリー:「やって見せるの。それを体現出来た時、きっとアナタは――初めて、自分を赦せる筈だから」
稀生:自分を赦す……その言葉に、一瞬だが呆気に取られた。そんな時が本当に来るのか、稀生にはわからない。だが――。
「猶予は少ない。
――わからないからこそ臆さずに、可能性に手を伸ばすのかもしれない。
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