マスターシーン3『第三幕:意志なくば』
用意された独房のベッドに腰掛け、エイルは力なく俯いている。
独房のすぐ外には、武装したレインズの隊員が複数人。そこに、UGNの本部への報告を済ませたのだろう壮一が訪れる。
壮一:「見張りご苦労。少し彼女に話しておく事がある。席を外してくれ」
レインズ隊員:「しかし……よろしいのですか?」
壮一:「構わん。年端も行かぬ娘1人に、遅れは取らんよ」
レインズ隊員:「は。では失礼します」
見張りの隊員たちが下がった後、壮一はエイルの独房に向き合い、口を開く。
壮一:「迎えに来たぞ、我が歌姫」
エイル:《――!?》
驚き、俯いていた顔を跳ね上げるエイル。直後、壮一の周囲に領域が展開され、そこから6振りの剣が現れる。
凶刃の切っ先を壮一自身に向けると、その身体と四肢を刺し貫き、昆虫標本の如く壁に縫い留めた。
GM:ここで、壮一に対して使用していた《ブレインジャック》と《融合》の効果を解除する。
串刺しにされた壮一の身体から、別の人物が姿を表す。その男は、静かに勝ち誇った微笑を浮かべていた。
アルギウス:「久しいな、エイル」
エイル:《ッ――!》
壮一:「リエゾン……ロード……!」
壁に縫い留められ、
アルギウス:「ご苦労だったな、"拳聖"よ。お前との
壮一:「貴様……ッ!」
足掻く壮一を尻目に、FHの王は悲鳴を懸命に堪えようとするエイルを振り返る。
アルギウス:「やはり声を封印しているのか。試運転で己の力を理解し、恐れを抱いたな。健気なものだが……現実が見えていない。既に理解はしているだろう。
このままでは、キミはUGNに殺される。助かる方法は1つ。力を解き放つのだ。
レネゲイドは宿主の思いに応え、力を増す。キミが自らの意志で再び力を解放した時にこそ、人類はオーヴァードへ――いや」
両手を広げ、王は高らかに宣言する。
アルギウス:「その更に上の階梯、プライメイトへと進化する時が訪れる。
さあ、選べ。ここで死ぬか、新世界への福音を歌い上げるか」
エイル:《…………》
選択肢など、ないも同然だった。
エイルは俯き、震える拳を握り締める。大きく息を吸い込んで――その封印は、決然と破られた。
エイル:《……嫌だ》
アルギウス:「……何だと?」
エイルの声に反応し、増大するレネゲイドの波動の中。彼女は眼前の支配者を射抜かんばかりに睨みつける。
エイル:《あの人たちは、私に優しくしてくれた。嬉しかった。暖かかった。日常の尊さを教えてくれた。
せめてものお礼に、私に出来る事を……こんな声のいらない音楽を、この気持ちを届けたいって思った。
例え偽物の絆だとしても、私の音が届かなくても。この想いだけは嘘じゃない。だから――》
宣誓する。それこそが、自分に出来るせめてもの償いなのだと。
エイル:《――私は絶対に、あの人たちを裏切らない!》
解き放たれた鍵の力が、アルギウスをよろめかせる。
アルギウス:「ぬぅ……!」
一歩だけ後ずさり、エイルから距離を取る。しかし。
「……残念だったな。キミのレネゲイドは戦闘用に調整されたものではない。
だがそうか……それがキミの結論か。ならば、こちらも相応の答えを返そう」
エイルに対し《ブレインジャック》を宣言。彼女の行動を支配下に置く。
エイル:《っ……稀生、マリー……!》
瞳に灯った決意の光を掻き消され……エイルは人形と成り果てる。
壮一:「何という事を……! 恥を知れ、リエゾンロードッ!」
血を吐いて足掻くも、自身を縫い留める剣は微動だにせず。傷口から新たな鮮血が迸り、床を赤に染めていく。
咆哮する壮一を退屈そうに眺め、"操演者"は領域を展開する。
アルギウス:「仕方あるまい。多少の時間はかかるが……計画を実行に移す。
世界を覚醒させよう。そうして初めて、人類は進化の階梯に足を掛け、更なる可能性に手を伸ばす事が叶うのだからな」
Eロイス『囚人の鳥籠』と《瞬間退場》を宣言。
GM:操られたエイルを従え、アルギウスは展開した領域の中へと姿を消していくのであった。
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