ミドル7『第四幕:福音』

GM:続いてのシーン。全員の登場をお願いするよ。


稀生:シーンイン。(ダイスころころ)8点上昇、90%!

マリー:シーンイン。(ダイスころころ)2点上昇、85%!


GM:アルギウスとエイルが離脱した直後、異変を察知したキミたちレインズは独房へと突入。串刺しにされた壮一を救出し、病室で事情を尋ねている。


壮一:「――というわけだ。一生の不覚を取った。本当にすまない」

 事情を説明し、深々と頭を下げる。

稀生:「……謝らないで下さい。自分もレインズにあるまじき行動を取った自覚くらいは、あるつもりです」

マリー:「……赦さない。リエゾンロードはいい度胸してるの」

 氷のように温度を感じさせない言葉は壮一を責めるものではなく、敵の首魁しゅかいであるアルギウスに向けられたものだった。

壮一:「リエゾンロードはエイルさんを追い込む事で、彼女自身の意志で力を解放させようとしていた。

 レネゲイドは意志に応える。ニュクスの機能を最大限に発揮させるには、それが必要だったのだろうが……」


 壮一がそこまで口にした直後、拠点に非常事態を知らせるアラートが鳴り響き、病室にレインズの隊員が駆け込んでくる。


レインズ隊員:「報告します。FHによる大規模メディアジャックが発生。敵はリエゾンロード"操演者"を名乗っています!」

マリー:「敵も遂に動き出したの」

稀生:「この状況でメディアジャック……まさか」

壮一:「やはり動くか。映像を出せ」


 病室の端末に、メディアジャックの様子が映し出される……。




アルギウス:「お初にお目にかかる。我が名は"操演者"アルギウス・レイフォード。秘密結社FHの最上級幹部である。

 突然の無礼をお許し願いたい。これより、この放送を通じて諸君に新たな可能性の鍵をお届けする。

 世界は進化の階梯に足を掛け、人類は更なる可能性へと手をのばす事が叶うだろう。

 これこそが――新世界への福音である」


 テレビ、ラジオ、ネット。あらゆるメディアを通じて、歌が流れ出した。

 一度耳にしただけだが、稀生たちは即座に理解する。それは他でもない、エイルの声だった。




 斯くて世界に、星を穿つ戦慄センリツが満ちる――。




マリー:「……ッ」

 ギリッと歯を食いしばる音が響く。やはり、情報が判明した時点で迷わずに処理しておけば。そんな思考が、マリーの脳裏に過ぎった。

稀生:「……福音の発信源、特定出来ますか」

 俯いたまま、暗い声で尋ねる。

壮一:「既に特定にかかっている筈だ。恐らくは間もなく――来たか」

レインズ隊員:「報告します。福音の発信源特定に成功。そして世界規模で、レネゲイド濃度の微上昇が確認されています。このままでは、本当に……!」


 報告を受け、壮一は一瞬だけ考え込むも……病床にあってなお鋭さを失わない視線を、稀生とマリーに向けた。


壮一:「……窮地きゅうちだな。UGN本部は事態の打破に手段を選ぶまい。再度、衛星砲"天の火"が使われる可能性もある。

 早晩、レインズにも出撃命令――リエゾンロードとエイルさんの抹殺命令が下されるだろう。

 だが、出撃までにはまだ幾分の猶予がある。作戦の成功率を上げるためにも、引き続き情報収集を命じる。

 真実を調べ上げ、何を守り、何のために戦うのか……考えておけ」

マリー:「任務、了解なの」

 即応し、情報収集へと向かうマリー。その思考の先には、ニュクスの破壊という使命がある。

稀生:「了解しました」

 何を守り、何のために戦うのか。稀生の脳裏には、全てを諦めた表情を浮かべるエイルの姿があった。


 2人が調査のために離脱した後、壮一は病室で静かに呟く。


壮一:「……幾分の猶予、か。あると言った以上は、何としても時を稼がねばな。

 私もまた、ほだされたか……老いたものよ。なあ、かなで


 そう言って、懐から取り出した写真に視線を落とす壮一。

 色褪せた写真の中では、胸元にサングラスを引っ掛けた金髪の若い男性と、目つきの悪さがどこか壮一に似た若い女性が並んで笑っていた。

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