ミドル3-3『第二幕:束の間の日常』

GM:キミたちはカフェへと移動し、案内された席に着く。花壇も見える絶好のポイントだ。

 少しすると、各々の注文した食事とお茶が運ばれてくるね。彩り鮮やか野菜のサンドイッチに、香り豊かなハーブティー。自然と食欲が増すのを感じるだろう。


マリー:「綺麗なの。食堂のカレーや携行食より色彩豊か」

 香りを嗅いでから、そっと野菜サンドに口を付ける。その瞬間、爽やかなヨーグルトソースの酸味と共に野菜の甘みが広がる。

「美味しいの……食べた事のない味」

 続いてハーブティーを一口。爽やかなミントの香りが鼻孔びこうをくすぐり、蜂蜜の甘みが後味に丁度よい。

「スースーして、甘い。こっちも悪くないの」

 淡々と評価を述べるが、その目は興味津々といった様子だ。

エイル:マリーに倣ってサンドイッチをはむっとかじり、目を細めては体の前で握り拳をブンブン振っている。

稀生:「この植物園、特にこのカフェが有名なんだ。味良し、香り良し、景色良しってな」

 自分もサンドイッチを手に取り、女性陣に合わせてゆっくりと食べていく。


 そうして新鮮な野菜を堪能した稀生たちは、ちょっぴり贅沢してクッキーを追加注文し、優雅な食後の一時を過ごしていた。


マリー:「エイル、このクッキーは中にハーブが入ってるの。甘さの後に香りが変わって面白いの……!」

 そう言ってハーブクッキーを勧めるマリーの口元には、先に食べたクッキーの欠片が付いていた。

エイル:モグモグ、とクッキーを味わいつつ、筆談用紙をマリーに向ける。

『ありがとう、美味しい……でも、欠片が付いてるよ』

 備え付けのナフキンを手に取り、マリーの口元を軽く拭う。

マリー:「んぅ……言ってくれれば自分で取れるの……」

 そっぽを向くマリーだが、その耳には若干の朱が入っている。

エイル:『稀生も。クッキー美味しいよ』

 そう書き込み、稀生にクッキーを差し出す。

稀生:「ありがとう。でも……」


 一瞬、深刻そうな表情を作る稀生。何事か、と場の緊張が高まり――。


稀生:「……エイルも、口元に欠片が付いてるよ」

 笑いを隠しきれない表情で、告げる。

エイル:愕然とした表情で、口元を拭った後、気恥ずかしそうに笑顔を浮かべる。

『……稀生だけ欠片付いてないの、ズルい』

稀生:「そんな理不尽な……そういや、昔は結構食べてたっけ(と言いつつ一枚摘んで)いや美味いな!?」

マリー:「驚き過ぎなの。でも美味である事には同意」

 相変わらず冷静な風だが、クッキーを食べる手は止まらない。

エイル:『昔はよく食べてたの?』

稀生:「ああ。レインズに入る前、学園島アカデミアでも……って、俺の分は?」

エイル:『あ……ごめん。これが最後の一枚だったね……」

 自分のクッキーを飲み込んで、無慈悲に告げる。

稀生:「……まぁ、マリーも気に入ったみたいだし。会計ついでにお土産として買って来るよ……」

 若干しょんぼりしつつ、席を立ってレジへと向かうぜ……。


 支払いを済ませる稀生の視線が、レジ脇の商品棚へと吸い寄せられる、そこには、小さな花型のパズルが並んでいた。

 それを遠い目で見つめる稀生に、店員がお土産用のクッキーを手渡す。そこでようやく我に返り、そうか、と稀生は納得した。


稀生:「(俺は、あの2人の反応を……どこか妹と重ねてるのかもな)」

 一瞬だけ、表情が歪む。けれど、席に戻ったときには笑顔で。

「お待たせ。お土産も買ってきたぜ」

エイル:『おかえり。後で部屋のお茶請けにも出来るね』

 そんな稀生には気付かず、にへっと笑って出迎える。

マリー:「良いと思うの。隊長にも後でおすそ分けに行くの」

稀生:「……ま、お茶請けの分はすぐに消えそうだけどな……」

 空っぽになったクッキーの大皿と、満足げなマリーを半目で見つつ。

「さて、そろそろ出るか」


GM:キミたちは植物園を後にし、お土産のクッキーを抱えたエイルを連れて、街の散策に戻るのだった。

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