07話 進化します!
絶望の淵から立ち直ったソフィアのやる気は凄まじいものだった。
必ず役に立ってみせる、という気概がありありと感じられるのだ。
失態はそれ以上の貢献で返す。
俺は仕事において、この意識が大切だと考えている。
だから江戸時代なんかでやっていたような、腹を切って詫びるだとか自害するだとかは正直逃げだとしか思っていない。
まぁ時代背景的に、仕方がないことではあるのだろうけれども。
ソフィアには肉体がないから実行不可能ではあるが、もしこれと似たようなことを言い出していたらさっき以上に怒っていたことだろう。
いつか肉体を与え本当の親子になるのが夢だとまで言っているのに、ちょっとの失敗ですぐ消えますとかマジ論外という話である。
その点ソフィアは、ちゃんと弁えていてくれたようなので俺も一安心である。
まぁ、ともかく。
そんなやる気あるソフィアにガイドされながら、俺は階層内を駆け巡り家造りひいては今後役立ちそうな素材を回収した。
現在はいざ2階層へ足を踏み入れようという所である。
回収した素材は、
・魔水晶の欠片(透き通っていてほのかに発光している)×8
・魔獣の骨(全身分)×40
・魔獣の毛皮(全身分)×21
・異形の骨(全身分)×60
以上の4点である。
何故骨と毛皮の数が違うか? 剥ぎ取りに失敗してズタボロにしてしまったからですが何か。
ちなみに全て拠点の地面に掘った穴の中に保管してある。
最も俺自身はとうに隠し場所を忘れてしまったが、そこはソフィアがいるので安心である。
ちなみに素材を回収したり地面を掘ったり、毛皮を剥いだりと色々している内に新たにスキルを幾つか獲得した。
更に全てレベルも上がっており、
・補正スキル『穴掘りLv1』の獲得、及びレベル1上昇
・補正スキル『解体Lv1』の獲得、及びレベル5上昇
・称号スキル『エリート解体士』の獲得
・頭突きLv5→頭突きLv8
・魔力操作Lv1→魔力操作Lv3
こんな感じになった。
ちなみに『エリート解体士』の効果は、短剣装備時DEX50%・常時DEX10%の二つである。
魔力操作は、地面や壁に生えている魔水晶を折る際に使用した。
最初は頭突きで何とかなるだろと思っていたのだが、とんでもない話であれらは非常に硬く激突した瞬間瀕死になってしまう程だった。
ソフィア案内のもと、魔物の居ないルートを通りなんとか拠点に帰りつけたから良かったものの、運が悪ければあのまま死んでいたことだろう。
LUK:500の恩恵と加護に助けられたのだ。
そこで別のアプローチを考えた結果行きついたのが、"魔力操作でありったけの魔力を頭にかき集め角にして激突する"だった。
しかしそれでも、またしても瀕死になってしまったのだ。
まぁ……ソフィアは最初から魔水晶の硬度は現段階では手が出せない程だと注意してくれていたのだが、俺が無理言って頼み込んで2度のみ挑戦させてもらったのである。
これはスキルレベルが幾ら上がろうと関係がないそうだ。
何故か? 実に単純な話で、パラメータが絶望的に足りないのである。
具体的には、魔水晶を完全な形で採取するためには最低でも3000以上のSTRが必要になるとのこと。
これから何か月とかけて様々なスキルを獲得、レベルを上げていけば採取出来るかもしれないが、それくらいなら次の階層ヘ行き別の素材を集めるか進化してしまった方が良いという結論に至ったのである。
無論創造の種を使えば即刻採取出来るが、今すぐどうしても必要というほどでもないし、進化していけば近い内普通に採取出来るので当然却下である。
(なぁ、そういや今の進化先ってどうなってる?)
ふと思いつき、ソフィアに確認する。
結構良さげな称号やらスキルを獲得したような気もするし、そろそろベビーを卒業しても良いのではと思ったのだ。
まぁ単純に次の階層へ進めば更に敵は強いだろう、という懸念もあったのだが。
《竜人への最短ルートはまだ開拓出来ていません。しかし、それを考えなければ中々優良な進化先が揃い始めていますよお父様。では表示します》
====================
【進化先】
ドラゴンストライカー
ドラゴンアサシン
プリンスドラゴンキッズ
ドラゴンキッズ
【現在】
ドラゴンベビー
====================
ふむ、新たに3つ増えたのか。
なんとなく予想はつくが……一応聞いておくか。
(ソフィア、それぞれの説明を頼む。簡易的に)
《了解しました。
リトルドラゴン:最終体。サイズは小さいが、成体のドラゴンそのもの。
ドラゴンストライカー:頭頂部に巨大な角が生えており、翼が無くなった代わりに強靭な脚力を持つ。固定ルートの第2形態。
ドラゴンアサシン:擬態能力を持ち、一撃必殺の猛毒を体内に有する。固定ルートの第2形態。
プリンスドラゴンキッズ:未成体。肉体的成長は控えめだが、自らより低位のモンスターを従わせる力を持つ。また自らより高位の竜種に気に入られやすい。
以上がそれぞれの説明になります。お父様、竜人を目指すのであればとりあえず最初の二つは排除して考えた方が良いです》
(でしょうね。固定ルートって言ってたし、当然だわな。おし!! 決めた。王子か普通のキッズだったら、竜人になれるんだろ?)
《はい。固定ルートにさえ入らなければ、幾らでも進化が可能です》
(ならこれでいい。別に最短で行く必要なんざないしな。そりゃまぁ、出来るだけ早めに人里に行きたいけどさ)
《分かりました。では、どうせ秘匿する天の声に代わり問います。プリンスドラゴンキッズへ進化しますか? YES/NO》
(くくっ……あぁ、YESだ)
俺は目を閉じて魔力感知を発動する。
何故このタイミングで使ったか?
叡智之女神にリンクさせ性能が向上したからなのか、それとも元からこういう使い方も出来たのかは分からないが、なんとこのスキル目を閉じることで俯瞰の視点を得る事が出来るのだ。
そして、それこそが先の問いへの答えである。
つまりは変化していく自分の姿を見たいだけ、ということだ。
一瞬身体が激しく光る。
どうやら進化が始まったようだ。
爪と牙がより大きく鋭くなり、頭頂部から短い角が二本生え、背に生える翼もググッと大きくなっていく。
そして身長がグングンと伸び、倍近くにまでなった。
――告。ベビードラゴンからプリンスドラゴンキッズに進化しました。
――告。新たに種族スキル『飛行Lv1』を獲得しました。
――告。新たに種族スキル『竜王子の魅惑Lv1』を獲得しました。
――告。種族スキル『竜鱗』のレベルが1上昇しました。
――告。以上の宣告はバランスブレイカー:ソフィアにより秘匿されました。
「グ、ガァァ……」
身体をググッと伸ばす。
パキパキッと音を鳴らしながら、古い鱗が落ちていく。
(これも素材になるな。一旦拠点に戻って、俺の鱗も穴に隠そう)
《承知しました。それでは、頭突きを使用しながら低空飛行で帰りましょう》
(レベル上げか。てか思ったんだが種族スキルのレベルって進化でしか上がらないのか?)
《そうですね。飛行技術を頑張って磨いても、それは翼操作という補正スキルに分類されますから。勿論飛行速度は上昇しますので無駄にはなりません》
(そうか。いや、ならいいんだ。じゃあソフィアの案、採用! 空を飛ぶ練習にしゃれ込むとしましょうかねぇ!!)
そうして、俺は上手く飛べず壁にごちごち頭をぶつけたり途中で地面に落下したりと、色々苦労しながらも拠点へ帰ったのだった。
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