05話 腹立ち紛れに少女漫画する男
あれから暫くして気分も落ち着いたところで、俺は説明の続きを聞いた。
全てを簡単にまとめると、
『治癒泉』
メリット:回復の他、金策やアイテム化など色々と長期的に使える・傷つく度に魔法やスキルを使うより低コスト
デメリット:喪失した欠損部位の再生が出来ない(ソフィアを介入させることによりむしろメリットへ)・一度にかかるコストが非常に高い
『そのまま利用』
メリット:一度にかかるコストが低い
デメリット:利用法の応用が比較的利かない
こんな感じだった。
これだけ要素が揃っていると、治癒泉の方が圧倒的じゃんと思うだろう。
俺もそう思った。
だが、よく考えて欲しい。
(治癒泉のメリット、全部人になってからじゃん!)
そう。
金策もアイテム化も、人になってからでないと不可能なのだ。
(こりゃ、余計人に戻りたくなったな。いっちょ頑張るか)
《はい。お父様!》
(おうよ! まぁそんなわけで、治癒泉はキーワードシステムと同じく人になるまでは封印だな)
《承知しました。お父様!》
むむぅ~ん。
さっき決意した筈だけど、早速揺るぎそう。
俺だけの娘で居て欲しい。
子離れできそうにないよぅ……!! お父様私この人と結婚します、なんて言われたくねぇ~!!!!
「クア‟ア‟ア‟ァ‟ァ‟ァ‟ァ‟!!」
やべぇ!? 思わず実際に叫んじまった。
な、何とか誤魔化さねば!!
――告。称号『子煩悩親父のソウルシャウト』を獲得しました。
うるせぇよ!! そんな称号要らんわ。
ってか言い訳が苦しくなるだろやめろォ!?
(き、気合も入った所でやるとするか!! 称号集めを!!)
く、苦しいかぁ……?
恐る恐ると反応を待つ。
《はい。お父様!! あと私、ずっとお父様のもとにおりますから!》
(ふぇっ?)
《あ……》
気まずい空気が流れる。
《わ、私何も言ってませんよ!? ええ言ってませんとも!》
拝啓、二度と会えない父さん母さん。
俺のサプライズ大計画は、企てたその瞬間から娘にバレていたようです。
あと、ソフィア。その必死の慰めが、今は痛いよ。
でもオイラいつまでも娘に気を遣わせるのもどうかと思うので、頑張る。
(んんっ……オー、ナンテ骨体。骨身に沁みるとはこの事だな? ソフィア)
《そ、そうですね! お父様がスケルトンならより完璧でしたね!》
もうやめて……父のライフはもうゼロよ(ぴくぴく)
――告。称号『アフターフォロー(笑)』を獲得しました。
だからうるせぇよ!!
この後、腹立ち紛れに少女漫画(突進奇襲)した。
(え~、大人げなく八つ当たりに走ってしまった訳だが……なんか称号とかスキルとかゲットした気がするし見せてくれ)
《あっ、はい。承知しました。お父様! では表示します》
そうして一通り確認して見た所。
前回ステータスを見た時から変化していたのは、
1.GP:27→GP:126
2.STR:19→24,VIT:6→10,DEX:10→18
3.吹き飛ばしビギナー[+突進系スキル威力10%]→吹き飛ばしエリート[+突進系スキル威力50%][+移動速度30%]
4.称号スキル『上位者の風格』の獲得
5.頭突きLv1→頭突きLv5
6.補正スキル『魔力操作Lv1』の獲得
7.称号『子煩悩親父のソウルシャウト』『アフターフォロー(笑)』の獲得
8.エクストラスキル『猪突猛進』の獲得
以上の8点である。
何故GPがこんなに増えているのか? 俺が八つ当たりでめちゃくちゃ少女漫画(突進奇襲)したからである。
ちなみに回数をソフィアに聞いてみた所、なんと100回。
正直そんなに吹き飛ばした覚えはなかったのだが、現実逃避してやたらめったらに走りまくっている間に意図せず吹き飛ばして殺した魔物もいたらしい。
それと称号スキルと称号の違いは、効果の有無である。
称号スキルの方は獲得することで何らかの効果が発生するが、称号の方は何も効果がないらしい。
これからもふざけた称号を獲得するかもしれないが、気にしないようにしてくださいとのことだった。
(ってか、なんでこんな頭突きスキル上がってるんだ? 使った覚えが全くないんだが)
《申し訳ありません、お父様。私が勝手ながら発動させて頂きました》
(ふぇ? そうなの。いや謝ることはないけどさ。でも確認はしような)
《したんです》
(……なんて?)
《したんですよ!! どうせ突進するならスキルを使いませんかって。でもずっと無我夢中に走ってて全然聞いてくれなかったんですよぅ!!》
拝啓、二度と会えないお父様お母様。
わたくし八神創哉は取り返しのつかない過ちを犯してしまいました。
(グハァッ……!!)
《お父様ーッ!?》
嗚呼、我が娘よ。
見事だ。お前に教えることは……もう、何もない。
《天に召されようとしないでくださいお父様!! ボケは要りませんお父様ぁー!!》
(ふっ……ふふ、くくく。お前も大分人間らしくなったな。ソフィア。今のがボケと分かったか。この調子でツッコミ覚えよう。そんでいっちょ2人でF-1出よう)
《フェラーリF2002、このマシンこそ最強! ってそれを言うならM-1では?)
(くっ、くくく……いいぞいいぞ。その調子その調子。それくらいの方が小ボケに走れるから気楽でいい)
《ふふっ、そうですか? こちらからすればお父様のボケは範囲が広いので探すのが大変なのですがね》
(んっ、そりゃ済まねぇな。まぁ頑張ってくれ)
《辞める気はないのですね》
(無論!)
《胸を張って言わないでください!!》
くく、あぁ……さっきは揺るぎかけたが、やっぱ身体は与えたいな。
いつか目に見える形で、こうやって笑い合いたい。
(なぁ、ソフィア。もうバレちまったから言うけどよ。いつかお前の身体を用意してやるからな)
《ぇ? ……はい。私も、楽しみです。だから全力でサポートしますね!》
(へっ、ったくよ。俺一人の時と比べてめちゃくちゃ簡単に思えちまうんだから悔しいもんだぜ。頼りにしてるぞ。ソフィア)
《はい! 任せてくださいお父様!》
サプライズで秘密裏に進めて喜んでもらうのも捨てがたいが、やはりこうして一つの目標に向かって一緒に頑張るってのも……良いもんだ。
そんなことを考えながら、俺はいつか実現させる未来へと想いを馳せた。
《あ、それと本当に何も聞いてなかったんですよ? ただ『子煩悩親父のソウルシャウト』の獲得条件と、その後の焦りの感情から言うべきではなかったかなと考えて焦っちゃっただけなので》
まさかの自爆だった件。
そういえば、さっき小さく「え?」って聞こえたような。
(holy shit!!)
《あ……もしかして、また余計でしたか?》
(ううん!! いいんだよ。良いのよ別に。うん! あはは!)
感情全部伝わってるなんて、ぼくしらないもん!
表面上笑ってれば、ごまかせるんだもん!(涙目)
oh,my god!!(燃え尽きたぜ。真っ白に)
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