日常-4
兄さんが去ってしばらくしてやっと真昼が現着した。走って来たようだがそんなに息切れはしていないようだった。
「感動の再会場面は逃しちゃったみたいだね。でもよかったじゃん。無事見つかって」
真昼はポンポンと降瑠の肩を叩いて喜びを伝えた。降瑠は嬉しそうに笑って頷いた。
「ありがとう二人とも。二人を頼ってよかったよ。本当にありがと」
「どういたしまして。でも気にしなくていいよ」
「そうそう。当然のことをしただけだしね」
私と真昼がそう言うと改めて頭を下げた。その後私たちは降瑠の愛犬としばらく戯れることにした。とはいっても日暮れまで時間がないので軽く触れ合う程度だったが。
降瑠の愛犬は人懐っこくはあるがとてもわんぱくだった。リードを千切って逃げ出したというのもわからなくもない。
「今日はありがとね」
別れ際に降瑠が改めて礼を言う。
「よかったら家まで送っていこうか?」
私は少し降瑠が心配だったのでそう申し出るが降瑠は首を横に振った。
「そこまでしなくていいよ、安来ちゃん。ここから帰ると時間がかかるから私を送ってから帰ると暗くなっちゃうよ。真昼ちゃんもだからね」
先手を打たれて真昼は開きかけていた口を閉じた。これ以上私たちに迷惑はかけたくないとその目が語っていた。
「大丈夫だよ。リグも一緒にいるから心配しないで」
「……わかった。何かあったらメッセージでもいいから連絡してね」
私と真昼は愛犬と共に去っていく降瑠が見えなくなるまで見送った後並んで歩き出す。
「たまに犬と遊ぶのも悪くないかも。人にはない動きだし」
「バスケの練習のつもりだったの?」
「何だってあたしにとっては練習だよ」
得意げにそんなことを真昼は言った。練習が嫌いかと思ったが実はそうではないらしい。
「まあ、アタシは集団行動とか苦手だから。バスケだって半分ワンマンプレイだし」
まあ、言われてみればその通りではあるのだが言うほど集団行動ができてないかと言われたらそうとは思わない。以前一緒にバスケをしたときもチームプレイと個人プレーをうまく使い分けていたように思う。
「真昼は集団行動が苦手というよりはそう思い込んでるだけだと思ってる。もっとちゃんと向き合ってもいいと思う」
「んー、そうかな。愛莉明ちゃんがそう言うならもっとちゃんとやってみるよ」
真昼はそう言うと朗らかに微笑んだ。真昼もこのまま進んでいけばさらに上に向けるようになるかもしれない。
そんな話をしていると帰り道が別れるところにやって来た。真昼はここからバスで帰宅する
「それじゃあ、愛莉明ちゃん。また明日ね」
「うん。それじゃあまたね」
私は真昼と別れて一人帰路につく。ここまで来れば家まですぐ近くだ。特に問題なく家に着いた私はドアノブを回してあれ? と思う。玄関の鍵は閉まっていて回してもドアが開かなかった。
兄さんが先に返ってきているはずなので開いていてもおかしくないのだが鍵は閉まっている。兄さんは普段家にいるとき鍵を閉める習慣はない。ということは家にはいないということだろうか。
私は自分の鍵を使ってドアを開けて中に入る。玄関の中を覗いてみるが靴箱には兄さんの靴がなかった。
私は降瑠の愛犬と遊んでいたのでとっくに帰り着いてるはずでコンビニとかに立ち寄ってるにしても私より遅いなんてありえない。
私は兄さんにメッセージを送ってみたが待っても既読にならない。電話もしてみたが出ないというよりもそもそもつながらない。どうやらスマホの電源が落ちているようだ。
何か休養があって家を空けてるだけで電話がつながらないのは充電が切れてるだけだ。家で過ごしていればそのうち帰って来るだろう。
そう思っていたのだがその日伊凪兄さんは家に帰ってこなかった。そして問題はそれだけではなく、次の日学校に降瑠が来なかった。
兄さんのことが心配ではあったが母さんにお前は学校に行って来いとお尻をけられたので登校たのだが始業のチャイムが鳴っても降瑠は教室に現れなかった。メッセージを送っても反応はなく、担任に尋ねてみたが要領を得ず、一応無事であるということしかわからなかった。
一時限目を終えた辺りでスマホにメールが届いた。それは夢鈴先輩で珍しく学校に来ているらしい。今すぐ支援局室に来いとのことだった。
正直授業に集中できそうにもなかったので言われたとおりに局室へと向かうことにした。
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