日常-2
色々あったが無事に真昼と降瑠の橋渡しを成功させたわけだがお昼を私と真昼と降瑠の三人でとるようになった。
例の件で放課後の最終下校時間が早まったので昼に部活で集まるのかと思ったがそんなことはないらしい。
それともう一つ降瑠もあの日以来私に対して遠慮しなくなった。この名前呼びだって降瑠から言い出したことだった。
本当はふーちゃん呼びにさせたかったようだがそこは妥協してもらった。
降瑠は教室でも声をかけてくるようになったし、当初の恋愛面においても少し積極的になった気がする。
「もうあれから1週間も経つのに事件が進展したって話を聞かないけどどうなってるんだろうか」
学食のラーメンをすすりながら真昼が突然そんなことを言った。相変わらず脈絡のない会話だった。
「オカルト研究部は基本放課後にしか集まらないから先輩たちも結構困ってるみたい。先輩たちと話す機会が減って私も寂しいし」
「バスケ部や他運動部は休日にしわ寄せがきて悲鳴を上げてるけど。あたしは適度にサボってるから問題なし。この前だって部活サボってふーちゃんに会いにいったしな」
土曜日なので部活は大丈夫かと聞いたときは問題ないと言っていたのだがサボるから問題ないという意味だったらしい。この女に時期エースの自覚はないのか。
「真昼ちゃん、私的には励まされたからよかったけど部活をサボるなんてよくないよ?」
複雑な様子の素直な降瑠に咎められて真昼は珍しくダメージを受けたらしく吐血するようなしぐさを見せる。降瑠は冗談で言わないから結構本気で言ってるのだから仕方ない。
「それはそれとしてどうにかならないの?」
「は? 何が?」
一体真昼が何の話をしているのかわからずに私は素でそう返していた。
「生徒の困りごとを解決するのが支援局でしょ?」
「いや、まあ、それはその通りだけど私に犯人でも逮捕しろと?」
現在下校時刻が早まっているのは巷を騒がしている動物連続不審死事件改め誘拐殺人事件の所為であり、原因を取り除くのが一番の近道だ。
「いやー、そこまでは言ってないよ? 情報収集して犯人逮捕に協力? みたいな感じ?」
「ちょっと待って、真昼さん。さすがにそれは安来ちゃんが危ないよ」
降瑠が言うように相手は人を殺すような相手だ。正直何が起こるかわからない。生徒会が協力をお願いしてきたのは呼びかけだけだったのはそういう面が大きいだろう。
「でもこのまま何もしないなんて愛莉明ちゃんはそれでいいの? あたしも手伝うからさ」
降瑠に注意をされてもいつも通り真昼は引かない。私に押し付けずに私を巻き込もうという意思は感じられた。それは信頼と受け取ってもいいのだろうがそれとこれは別だ。
「今のところは動くつもりはないし動くにしても真昼を巻き込むことはしない」
真昼一人で動くのを牽制するつもりでそう宣言する。さすがの真昼もこれで動きづらくなったはずだ。
「わかった。しばらく犯人が捕まることを願って待つことにする」
一応の納得は得られたようでこの話はそこまでとなった。降瑠が少し心配そうにしていたので一応気にはしておこうと思う。
真昼にはああ言ったが私もどうにかしたいと思っていないわけでもなかった。夢鈴先輩に定期的に連絡を取っているが今のところ大した情報は得られていない。
『監視社会の現代でここまで足取りを掴めないなんてねー。まるで魔法みたいだよー』
夢鈴先輩の見解はそれだった。それとなく色々な方面に聞いてみたが結局何もわからない。
実際のところは動くに動けないというのが現状だった。
『果報は寝て待てともいうのだ。時が来るのを待つのも大事なのだ』
それは風花副会長の言葉だった。しかし、待てども待てども何も起こらない。それどころか事態が悪化しているようにしか思えない。ニュースではほとんど触れられていないがこの街でも行方不明者が出ているのは確かだ。
「リア、最近ため息が多いが何か悩み事かい?」
リビングでコーヒーを飲んでいると兄の伊凪が声をかけてきた。どうやら気づかないうちにため息を吐いていたらしい。
「支援局のことで悩みがあるなら相談にのるよ」
私の悩みと言えば支援局のことだと兄さんは思っているらしい。言われてみればそのこと以外で兄さんに何か頼ったこともなかったかもしれない。
だからといって今回のことを兄さんには頼れない。絶対に反対されるのは目に見えている。
「大丈夫だよ、兄さん。自分でどうにかするしかないことだと思うから。それじゃあ兄さん、勉強頑張ってね」
私はひとまず兄さんから詮索される前にリビングから退散することにした。どうしようもないことで悩んでいても仕方ないので何か気分転換になることがあればいいのだが。
そう思っていたおりに降瑠からメッセージが届いた。それは降瑠からの救援依頼だった。
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