章怪談 呪いの人形

 私は人形を集めることが趣味で特に曰くのある物を集めるのが大好きだ。これはその蒐集する中で体験した話だ。

 私は曰くのある人形を蒐集していることを公言している所為か全く知らに相手からも割とそういう手紙が届くことがある。今回のこれもその中の一つだった。

 今回は直接ではなく友人を介して私の元に届いたもので内容は呪いの人形を作ってみませんか、というものだった。正直無視してもいいかとも思ったが相手が友人の知人で、その友人からの熱烈なラブコールもあり話を聞くだけということで手紙の送り主と会うことになった。

 一人で会うのは抵抗があったので友人にも同席してもらった。話が話と言うことで個室のある飲食店を利用してお話することになった。

 指定されたお店に行くとその人は既に入店しており、友人が店員と話をして中に入ることになった。

 個室で待っていた女性は一見すると呪いの人形の制作を持ち掛けてきた人間には見えなかったが長年の経験から普通とは違う雰囲気を感じられた。

 彼女は丁寧にあいさつをしてくれたので私もそれに倣って自己紹介をした。その後せっかくなので軽く食事をとってから本題に入ることになった。

 私はひとまず話を聞くだけだということを念を押して話を聞いた。

 呪いの人形を作るためには「人形探し」というものをする必要があるそうだ。人形探しというのは以下のもののようだった。

 まず用意するものは手と足は二つずつある布製の人形またはぬいぐるみで人型に近いほど効果が高いそうだ。あとは人形を切り開くための刃物と縫うための針と糸、自身の身体の一部と自分が大切にしているものだそうだ。身体の一部といのは爪や髪の毛、抜けた歯等々血液などの体液以外なら何でもいいそうだ。大切なものには自分の名前か自分が呼ばれていたあだ名など自身を表す名前を刻まれてならなければならない。

 それらが揃ったら人形の胸部を切り開き、綿が詰まっている場合は入れる物の分だけ抜いて代わりに身体の一部と大切にしているものを入れて糸で縫って閉じる。それが終わると人形に名前を付ける。それは自分の名前か自分が呼ばれていたあだ名など自身を表す名前を付けなければならないそうだ。

 それらの準備を終えるとその人形を人の住んでいない家、廃墟等に隠し、それを自分以外の人に探してもらう。始める時間は逢魔が時の夕方で日が暮れる前に見つけなければならず、それまでに見つけられない場合は人形を置いてその家を後にすること、だそうだ。見つけた場合は胸を縫った糸を切って中身を抜き取り、側はその場で焼かなければならないそうだ。

 それでは人形は消えてしまうのだがどうもいわくつきの人形になるのは見つけられなかった場合だそうで日が沈んだ後に人形を見つけてしまうと見つけた人は呪われ、近いうちに怪我をしたり最悪死に至るらしい。

 彼女はそれらの行いに協力してほしいということだったが私はそれを断った。

 事実に関係なく、人形愛好家でもある私としては人形をそういう風に扱うのは嫌だった。

 彼女は食い下がることなくあっさりと引いてくれた。元からダメもとだったそうで話を聞いてくれただけでもありがたいといい、意見を聞きたがったので甘く見に方がいいと忠告だけはしておいた。

 そうして何事もなくその場で別れこの件は終わりかと思ったのだが後日私の元に警察が訪れた。

 何でも彼女が死体で発見されたそうでその際にあの店のレシートが出てきたそうで色々とあたって私の元に辿り着いたらしい。友人の元は尋ねたのかと聞いてみると友人が行方不明になっていることを教えられた。私からも連絡を取ろうとしたが音信不通だった。

 私はその予期にした話を包み隠さずに全て話し、彼女からもらった手紙を渡して警察には帰ってもらった。

 友人が行方不明となれば私としても動かないわけにもいかずそういうものに詳しい人に連絡を取って彼女が持ってきた話の信ぴょう性について尋ねてみた。

 その人が言うにはそれはそもそもが呪術であり、人形を作った相手を隷属させる儀式のようななものだったそうだ。そこに別のものが合わさった結果、成り代わり、人を死に至らしめる呪術になったのではという話だった。

 友人の安否を考えると絶望的なのは間違いなさそうだった。

 それはそうと最近になって私の家に胸に穴が開いた人形が増えた。私の知人から送られてきたその人形とはおそらく関係はない。そう私は思っている。

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