エピローグ
昼休みと久しぶりに真昼とお昼を食べることになった。私の支援局の仕事に一段落ついたのと真昼がバスケ休みたい期間がちょうど重なった結果だった。
「朝や放課後部活でやっているのに昼休みまでバスケするとか正気じゃないよね」
「いや、お前が言うなよ」
基本朝昼晩バスケをやっているこの女もこうして正気に戻る時期があり、こうした日に一緒に昼をとることが多い。
「いや、元々は七海先輩に付き合ってやってただけだから! 特に今回はハーフタイムまで長かったけど!」
羽場樹先輩は香野先輩と色々あったのでバスケに没頭していたのだろう。それが解消した今こうして休みを得られたということなのだろう。
私としては二人が仲直りしたことは純粋に嬉しい。
「それより聞いたよ? 例のあれに遭遇したんだって?」
「ん? 例のあれ?」
「動物の連続怪死事件だよ」
何の話だ、と思ったがどうやら私が警察から事情聴取を受けたことをどこかで聞き付けたらしい。さすがは自称ストーカーだ。
「ただ単に時間をとられただけで新しい情報とかは特にないよ」
あの後警察から電話がかかってきて色々聞かれ、さらには後日聴取をとられることになった。
私的には見たまんまを話すことしかできなかったし、犯人の姿を見たわけでもなかったので特に新情報といえるものはなかった。
合えて言うならば犯行時刻が正確に割り出されたことくらいだ。
「ええー、捜査の進展とかなにもなかったの? ほら犯人を見たとか?」
「ありません。というか一方的に聞かれるだけでほとんど話してくれなかったから」
「ええー、つまんないなー」
そう言われてもどう反応していいのかわかんない。というかこの真昼の反応は不謹慎じゃないのか。一応ペットの被害もあるという話だし。
「もうこの事件が始まって3か月くらいか。結構な頻度で起こってるのに犯人が捕まらないのは不思議だよね。目撃情報とかも何だかんだでほとんどないみたいだし」
私が見たように犯行直後というのはそれなりにあるようだが結局誰も犯人を目撃していないしカメラにも映っていないらしい。
「ふふふ、名探偵真昼にはわかっちゃったよ。犯人は複数で計画的に行われてるんだよ! だから犯人の尻尾も掴めないんだよ!」
「残念だけど単独犯というのが警察の見解みたい」
私の指摘に悔しそうに歯噛みする真昼はとても楽しそうだった。
そんなこんなで昼休みは過ぎていき、放課後呼び出しを受けて生徒会室へ向かった。
今回も他の役員はおらず、会長と副会長が私を出迎えてくれた。
「安来さん、わざわざご足労いただき感謝いたしますわ」
「いえ、こちらからお願いしたことなので気にしないでください」
今回の件で分かったことがあれば教えて欲しいとお願いしていたのは私だ。一応の報告は終わっていたがまだいくつかの謎が残ったままだった。
「…………」
何故か風花副会長はいつものタブレットを持っておらず代わりにスケッチブックを持っていた。私の視線に気づいたのか風花副会長はペンを使ってスケッチブックに文字を書く。
『気にしないでください』
スケッチブックにはそう書かれていた。どういうことかと弓崎会長に視線を向けると弓崎会長は苦笑いを浮かべた。
「タブレットの充電が切れたんですわ。私が通訳しては時間がかかるので筆談ということにしてもらっていますわ」
なるほど。筆談だとちゃんと丁寧な言葉遣いになるらしい。
『私は羽場樹先輩と香野先輩から話を聞いて色々と調査してみましたが該当する生徒は見つけられませんでした。うまく情報を隠していて羽場樹先輩に話していたことにも虚実が入り混じっていたようです』
それは今書いたものではなく、説明のためにあらかじめ書いていたもののようだ。
「正直お手上げといったところですわ。いったい何年生なのかもわかりませんわ。ただ彼が関わっていたのは今回だけではないみたいですわ。詳しいことはまだ調査中ですわ」
私たちが調べただけでも他校と関係していたが他にも何かをしていた可能性があるようだ。
「他に何かわかったことは?」
「今のところはそれだけですわね。というよりは今回呼んだのはそれだけが理由じゃないんですわ。まずはこちらをご覧になって」
弓崎会長が私に差し出したのは何かの記事の用だった。どうやらそれは先ほど真昼としていた事件の続報の用だった。
「は? これは本当ですか?」
そこに書かれていたのは連続動物怪死事件の犯人が今度は人を殺したという記事だった。
生徒会室を後にした私はそのまま帰宅することにした。生徒会からのお達しはしばらく放課後の活動は控えることになるだろうということで呼びかけを手伝ってほしいとのことだった。
家に帰ると珍しく兄の伊凪は出かけているようだった。今日あったことを聞いてほしかったのだが仕方ない。
私は一応今日あったことを局長に報告してくことにしておくことにしてついでに夢鈴先輩に電話を掛けることにした。
『はいはい、夢鈴だよー。今は手が離せなくて電話に出ることができません。御用のある方はメッセージを……』
「そういうのはいらないです。先輩は今日は学校に来ていましたか?」
『夢鈴はプロの自宅警備員だよ? 行ってるわけないじゃん。リアちゃんは何の用?』
夢鈴先輩は少し不機嫌そうにしながらもちゃんと答えてくれた。この前の事件である程度の信頼を気づけたようだ。
「記事を送るので見ておいてください」
『ああ、それなら知ってるよー。ネット上では大分盛り上がってるからねー。リアちゃんは気をつけてねー。まあー、怪異と渡り合ったリアちゃんなら大丈夫だと思うけどね。それじゃあねー』
こっちから電話をかけたというのに一方的に切られてしまった。何だかんだで先輩も忙しいようだ。
これからどうしようかと考えていると伊凪が帰って来たようだった。私はこれからのことを色々と相談しようと決めて兄の元へ向かうことにした。
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