1日目-1

 支援局と生徒会は少々複雑な関係らしい。一見似たような感じの組織に思えるがそれぞれが違う役割を担っている。

 支援局は生徒の援助と生徒間の仲介を、生徒会は学園生活の援助と学園関係者と生徒間の仲介を役目となっている。

 そんなわけでちゃんとした住み分けのために出来ること出来ないことが明確に決まっている。

 例えば昨日私が受けた練習への参加は生徒会ではできない。理由は部活動は学園としての活動ではなく、あくまで学生の一活動ということになっているからだ。

 ただ他校との練習と大会は別だ。学校を代表として参加しているということで支援局の出番はなく、生徒会がその試合のサポートすることになる。

 そういった出来ること出来ないことがわかれているため今回のように生徒会から依頼が来るなんてことも珍しくはないらしい。

 ちなみにこのことは先輩から聞いたわけではなく支援局のOG でもある兄さんから聞いた話だ。先輩はやって来ないし、連絡も一方的なのでそもそも聞くタイミングがない。


 午前中の授業を終えた私はすぐに教室を出て生徒会室へと向かう。必要なものは朝のうちに局室から持ってきておいたので真っ直ぐ向かう。

 早く来すぎて誰もいない可能性も考えていたがノックをすると声が返ってきた。


「どうぞ、開いてますわよ」


 私は気持ちを切り替えてドアノブを回して中に入る。


「失礼します」


 役員全員が揃ってるかとも思ったがそこにいたのは二人だけで私が顔を知っている生徒会長の姿があった。


「お待ちしていましたわ。支援局の方ですわね。1年を寄越すなんてあの男も変わらないですわね」


 生徒会長がため息混じりにそう言った。どうやら私が来たことが不満らしい。


「気を悪くしないでくださいまし。あの男に文句はあってもあなたに不満があるわけではないのですわ」


 取り繕うようにそう言うがおそらくは嘘ではないのだろうし、悪気があるわけでもないのだろう。


「気にしないでください。私が若輩なのは確かですから」


 私がそう言うとさっきから黙っていたもう1人の役員の少女が会長になにやら耳打ちする。


「……」

「そうですわね。どうぞお座りになって」


 私は勧められるままにソファーに座ると二人は私の向かい側に腰をおろす。


「あらためて私は生徒会長の弓崎ゆみざき絵里朱エリスですわ。そしてこちらが横木よこのぎ風花ふうか、副会長ですわ」


 弓崎会長に紹介された横木副会長はぺこりと頭を下げた。私はそれに倣って自己紹介をする。


「私は安来愛莉明、一年生です。本日はどうかよろしくお願いします、弓崎会長に横木副会長」


 私が挨拶すると横木副会長が何やら弓崎会長に耳打ちする。さっきからいったい何なのだろうか?


「……」

「安来さん、副会長のことは名前で呼んであげてくださるかしら?」

「……わかりました、風花副会長」


 何で自分で言わないの、と思わなくもないがつっこんではいけない気がしたのでスルーしておく。

 さて、ここから本題にと思ったところで風花副会長が机にランチボックスらしきものを置き、何やら弓崎会長に耳打ちする。


「……」

「よければ食べて欲しいそうですわ。昼休みに時間を取ってしまったお詫びだそうですわ。話を聞きながらで構いませんわ」


 ランチボックスの蓋が開けられ、中にはサンドイッチが入っていた。たまごやハム、トマト等色とりどりの具材が挟まれている。手軽な料理ではあるが具材の方は中々手が込んでいるように見える。

 私は勧められるままにサンドイッチを手に取り一口食べる。


「風花副会長、ありがとうございます。とてもおいしいです」

「……」


 風花副会長は私がそう言うと嬉しそうに微笑み、ポットを取り出してお茶を淹れてくれた。

 その後風花副会長は弓崎会長に何やら耳打ちをする。弓崎会長はすぐに何かを言わずに小さくため息を吐いた。


「風花さん、私がいるからと言って甘えずいつものを使ったらどうかしら?」

「……」

「我が儘はダメですわ。昼休みは時間が限られていますの。私が通訳していたら足りませんわ。今回の話はあなたがいたすのでしょう?」

「……」


 風花副会長は不服そうにしながらも立ち上がると生徒会室の奥の会議室へと消えた。


「安来さん、少しお待ちいただけるかしら? 風花さんが戻ってきたら話をしますわ。それまでお昼を食べるといいですわ」


 それから2、3分して風花副会長が戻って来た。戻って来た風花副会長はさっきは持っていなかったタブレットを持っていた。


『お待たせなのだ。しばらくはこれで我慢してほしいのだ』


 その声はどこかで聞いたことがあると思ったず〇だもんだった。つまりは合成音声だった。よく見ると風花副会長の喉元にマイクらしきものがあり、そこで声を拾ってタブレットのスピーカーから音声を発しているようだった。

 ちらりと会長の顔色を伺うが変わらず、これがいつもの光景らしい。


『茶番はここまでにして仕事の話をしようと思うのだ。安来さんもそれでよいのだ?』

「あ、うん。お願いします」


 何だか声のせいか締まらないがここはもう気にしない方がいいかもしれないと割り切ることにして居住まいを正して風花副会長に向き合うのだった。

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