章怪談 見られる
これは私が友人から相談を受けたときに体験したお話です。私に相談してきたのは小学校からの付き合いで長らく交流の続いてる友人でした。
その相談というのは度々視線を感じるというものでどうやらストーカーを疑っているようでした。ただその姿は見たことがないそうでどうしたらいいかわからないといった感じでした。
警察に相談をするにも確証もないのでできないので私はひとまず彼女としばらく一緒にいることにしました。
しばらく一緒に遊びましたがその間は特に友人に変化はなく、楽しそうにしていました。私も周囲を気にしてましたが怪しい人も特に見つかりませんでした。
暗くなってきたので帰宅することにしたのですが普段は駅前で別れるところなのですが友人は私を引き止めてきました。
どうやら今日は家に1人だそうで泊まってくれとお願いされてしまいました。正直何も用意してないので乗り気ではありませんでしたが友人の余裕のない表情を見て彼女の家にお邪魔することにしました。
彼女の部屋はマンションの最上階でセキュリティもしっかりしていました。
正直不審者が侵入できるとは思いませんでしたが友人の為に黙っておきました。ただ誰かと居て安心したいのでしょうから。
私は友人と一緒に風呂に入り、ご飯も食べて、他愛もない話をして友人と並んで寝ることになりました。
友人はさっき外にいるときよりも1人になるのを怖がっているようでした。普通は逆で、家にいるときこそ安心すると思うのですが。
ベッドの隣に布団を並べて私が横になるとちょうど一枚の絵画を見上げる形になりました。
友人によるとその絵画は誕生日プレゼントに貰ったそうでせっかくだからと飾っているそうです。誕生日に絵を送るなんて中々変わった人もいるらしい。
そうして眠りについた私がふと目を覚ましたのは深夜の2時ごろだったかと思います。トイレに立ったときは気づかなかったんですがトイレから戻ってきて部屋の中を見たら何か変だなって思ったんです。
最初何が変なのかわからず、気のせいかなと思って布団に入ったところで絵画と目が合ったんです。
人物画なら不思議もないのですが寝る前に見たその絵画は風景画で、生き物何ていなかったんですよ。
それなのに確かに目が合っているんです。私は血の気が引くのを感じましたがそれでも跳び起きて絵画に近づきました。
昔から私は肝が据わっていて思わず手が出てしまったんです。さすがに絵画を破壊する力まではなかったんですが何かが潰れるような感触が伝わってきたんです。
嫌な感触で思わず手を引いたらそこには潰れるようなものは特になくて普通の風景画に戻っていたんです。
ただ寝ぼけていただけなんでしょうか。でも確かに残っていたんですよね。軟らかいものを潰したような感触が。
朝方になって私は早々と友人の家を後にすることになりました。実家から連絡があってどうも兄が大きな怪我をしたのだそうです。
目がどうとか言っていて失明するかもという話でした。そういうわけでしばらく友人とは話もできなかったのですが後で聞くと何だかその日を境に視線を感じなくなったんだそうです。
絵画の目と視線の関係性はよくわかりませんが友人の悩みが消えてよかったと思います。
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