絆紡人形
プロローグ
古びた古民家の前で高校生くらいの少年が右往左往していた。空は赤く染まっており、もう30分ほどで完全に日が落ちてしまうことだろう。
「一体あいつは何やってるんだよ。門限過ぎちゃうじゃないかよ」
友人が古民家に入ってもう1時間は経つだろうか。いったいどこをどう探せばこんなに時間がかかるのか。
「しょうがない、探しに行ってやるか」
少年はため息混じりにスマホのライトを頼りに古民家に足を踏み入れる。この古民家にそれといった噂話はないが封鎖するわけでもなく、玄関に鍵もかかっていないこともあって中はだいぶ荒れていた。
この家の持ち主も管理する気が一切ないのかもしれない。
「おーい、どこにいるんだよ! もういいから帰ろーぜ!!」
少年が大きな声で呼びかけるが家のなかはシーンと静まり返っていて返事が聞こえてくることはなかった。
どうやら声の届かないところまで探しに行っているらしい。しょうがなく少年は家の奥まで足を踏み入れたがすぐに人影を見つけた。
そこは先ほど少年があげた声が聞こえるだろう場所で無視されたことにムッとした少年は文句を言ってやろうと人影の肩を引いてこちらを向かせた。
「おい! 返事ぐらいしてくれてもいいじゃ……ない…か」
少年の言葉は最初の勢いはどこへいったのか尻すぼみになって消えた。それもそのはずで少年が友人だと思っていた人影は友人などではなく、そもそも人間ですらなかった。
異様なほど精巧な造りの人形でそれはどことなく見たことのある誰かに似ているような気がした。
「おい、おい! 変なイタズラするなよ。どうせどっかで見てるんだろ!」
少年は友人へとそう呼びかけたが 返事は返ってこない。
「一体どこでこんなリアルな人形を持ってきたんだ? まるで本当に生きた人間かと思ったぜ」
少年は友人の姿を探すようにライトを動かしてその光がとある一点で止まった。そこにあったのは一枚の姿見で鏡が少年の姿をうつしだしていた。
「そんな、嘘だろ……」
少年が驚き絶句するなか、その背後に人影が忍び寄る。鏡に写し出されたものを見て少年の顔から血の気が引いた。そこに写し出された姿は瓜二つだった。
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