2日目-2
私はオカルト研究部の部室を後にすると私は職員室に向かった。獅子堂先輩的には顧問の先生の存在を隠していたわけではないそうだが先生から話を聞けばわかることだろう。
そもそも私はオカルト研究部の顧問の先生と面識がある。そもそも彼女を顧問にと紹介したのは私だったからだ。私は
伊知鹿先生はオカルト畑の人間ではなく逆に科学畑の人間だ。その方がブレーキにもなるし、計画的に物事を勧めてくれると思ったからだ。
職員室に着くと他の先生の姿はなく、伊知鹿先生が一人で私のことを待っていた。
「安来さん、こんな時間までお疲れ様。また支援局の依頼かしら?」
「はい。伊知鹿先生もお疲れ様です。他の先生方はいらっしゃらないのですね」
職員室では事務仕事でもしているのか伊知鹿先生が一人キーボードを叩いているだけだった。
「安来さんが来るから席を外してもらったの。部屋を変えても良かったんだけど今は手が離せなくて。ほら、座って。このままで悪いけど話を聞かせてもらうわね」
私は勧められるまま教師が不在の椅子に座ってパソコンを机の上に置く。伊知鹿先生は私のスタイルを理解しているので咎めたりはしてこない。
「早速ですがメールでもお伝えした通りオカルト研究部の件でお話を伺いたいんです。先生は親睦会にはどれくらい関わっていたのでしょうか?」
伊知鹿先生の性格からしてがっつりと関わっているだろうことは推し量ることはできたが手始めとして聞いてみる。
「当日はほとんど手は出していないけど準備段階では結構口出しはしたかしら。蝋燭の使用をやめさせるように仕向けたのも私だしね」
伊知鹿先生は引き出しを開けるとUSBメモリを取り出して机の上に置いた。そのUSBには「オカ研資料」の文字が書かれていた。
「懇親会のときに使った資料も入ってるから好きに見て構わないわ。ただ取り扱いには気をつけてね。個人情報も含まれてたりするから」
「はい。拝見させていただきます」
私はUSBを自身のパソコンに挿してファイルを開く。まだ顧問になって一月程しか経っていないというのに部員名簿や予定表など予想以上の量のファイルがあり、目的のものは下の方に「懇親会」という名のフォルダで纏められていた。
「……伊知鹿先生、このテキストファイルは?」
一番上にあった「怪談」とつけられたフォルダの中にはずらりとテキストファイルが並んでいた。
「それは懇親会で語られた怪談よ。内容が被るとあれだし、過度な話しはよくないから語る予定の話を事前に提出させたのよ。実際いくつか没にしたわ」
スクロールしていくと確かに没案があった。1つ1つ読んでいる時間は今はないので気になったタイトルを流し読みしていく。
「……当日語られた話はこれだけですか?」
「そのはずよ。そうね、懇親会のフォルダの下の方を見てみるといいわよ」
私は言われた通り懇親会のフォルダに戻って画面をスクロールさせると一番下に音声ファイルがあった。私は再生する代わりに尋ねる。
「このファイルはもしかして?」
「そ、懇親会で語られた生の怪談よ。皆には内緒にしておいてね。隠れて録音していたことがバレたら怒られそうだから」
「……この音声ファイルはコピーしてもいいですか? 今はさすがに聞いている時間はありませんから」
「外部に漏らしたりしなければ好きにコピーしてかまわないわ」
私は伊知鹿先生の厚意に甘えることにして必要だと思ったファイルを個人的なクラウドサーバーにコピーしてスマホでも閲覧できるようにして置く。
私はひとまずフォルダを閉じるとUSBを先生に返して聞いておきたいことを聞いておくことにした。
「伊知鹿先生は絵画の怪談はご存じですか?」
「……絵画? 何の話?」
伊知鹿先生はまるで何を言っているのかわからないという顔で首を傾げた。
「今日オカルト研究部の部員から話を聞いたときに出てきたんです。誰も話していないはずの怪談を聞いたというんです」
全員に話した怪談の概要を話してもらったが該当するような怪談はなく、先ほど見たテキストデータの中にもそれらしきものはなかった。
「うーん、私も一通りは聞いているけど思い当たるものはないわね。その人が適当なことを言ってるだけとかはないかしら?
「……その可能性は否定できませんが思い付きで話しているような感じはしなかったんです。懇親会でかどうかはわかりませんがどこかで聞いているのは間違いないと思います」
結局のところは伊知鹿先生もよくわからないということだったので今日のところはお暇することにした。これ以上伊知鹿先生の邪魔をするのも悪いし、そろそろ他の先生が戻ってくるころ合いだろう。私は伊知鹿先生に別れを告げ、校舎を後にした。
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