第71話 大好きなあなたへ
職員室に入ってゼミの先生や、学校の先生方の評価を聞く。いっぱい褒められたけど、いっぱい反省点も言われた。まだまだだな。と思い知る。
「じゃあ、最後に、実習担当の未羽先生は何かありますか?」
学年主任の先生に未羽先生が話を振られる。たぶん、未羽先生は気づいてる。授業の後半、私がりんちゃんからの助け船とアドリブで乗り切ったことを。
「特にありません」
その一言だけだった。未羽先生の反応を見て、ゼミの先生は少しだけ笑い、他の先生方はえ?と言うような表情をする。そして、私は…少し、泣いてしまった。
「あ、ごめんなさい。ありました。その泣き虫なところはなおさないとですね」
ゼミの先生大爆笑。他の先生方、困惑。何これカオス。でも、たぶん、未羽先生に何か言われるよりも、こうやって笑顔で何もない。と言ってくれたことが嬉しかった。
「みな先生、ごめんね。実は気づいてたけど黙ってた。たぶん、時間余るだろうなって…そうなるようにちょっと誘導して少し試してた。意地悪してごめんね。でも、よかったよ。ああいう状況、教師になったら何回も味わうことになるからさ、しっかり対応できるようになって欲しかったけど、余計なお世話だったね。また、みな先生の授業を見せてね」
職員室で話を終えて、クラスに戻る時未羽先生にそう言われた。
「未羽先生、お世話になりました」
「またすぐお世話してあげるよ」
「それはどう言う意味で、ですか?」
「せ、先生として…だよ。ま、まあ…みなちゃんがいいなら……プライベートでも……」
「プライベートだとお世話するの私じゃないですかねぇ?」
「そ、そんなことないもん」
顔を真っ赤にする未羽くんが可愛かった。でも、未羽くんはすぐに未羽先生に戻ってお疲れ様。と優しく声をかけてくれた。しばらくは、未羽先生とはお別れか……その分、未羽くんと一緒にいる時間は増えるのかなぁ。
そんなやり取りをしながら教室に戻る。クラスの生徒総出で送別会をしてくれて、小さな花束を渡される。それから、クラスの生徒からの寄せ書きと、記念撮影をして、みんなとお別れした。
しばらく、みな先生はおやすみ。しばらく、私はただの学生に戻る。でも、いつかは、いつの日か、私はまた、あの場所に戻りたい。あの人の隣に立って、できれば、かわいい後輩の面倒を見たりして、私が目指す憧れに少しでも近づきたい。まだまだ遠い道のりだけど…いつの日か必ず。私はあなたに追いつきます。だから、待っていてください。
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