第70話 最後の授業






「それでは、5時間目の授業を始めます」


私の実習最終日、そして、私がここでする最後の授業、教室の後ろには校長先生に教頭先生、教務主任、学年主任、巡回に来てくれたゼミの先生に未羽先生、プレッシャーがすごいよぅ…覚悟はしていたけど、あまりのプレッシャーに結構まいっていた。


「みな先生、頑張って!」


私を見て、前の席の子が声をかけてくれる。おかげで頑張れる。後から気づいたが、未羽先生も教室の後ろで口パクで頑張って。と言ってくれていた。


授業が始まって数十分、授業はすごく順調に進む。授業の度に未羽先生といっぱい反省したことをしっかりと生かすことができた。


「…………」


ちょっとやばいかも…予定より早く終わりそう。どうしよう。少しなら大丈夫だけど…割と早く終わっちゃう。やばいかも……順調に進んでいた。だが、順調に進みすぎた。どうしよう。と戸惑っていると1人の生徒が手を挙げた。


「先生、先程のところの説明が難しくて理解し難いのでもう一度説明してもらえませんか?」

「え、あ、うん。難しいよね。じゃあ、実際に問題解きながらもう一度説明するね」


助け船を出してくれたのかな?今のりんちゃんがこの問題を理解できないわけないのに。ありがとう。助かったよ。


「では、これで授業を終わります」


授業が終わると、後ろにいた先生方は教室を出て行く。私も、授業の片付けをして職員室に戻らないと。


「みな先生、これは貸しですからね」

「うん。ありがとう。すごく助かった」


廊下を歩いていると、りんちゃんに声をかけられた。やっぱり、さっきのは助け船を出してくれただけみたいだった。


「みな先生、私、先生になる」

「え?」

「みな先生みたいな先生になりたいです。私なんかのために一生懸命頑張って私を助けてくれたみな先生みたいな先生になるって私決めました。って…泣かないでくださいよ」

「だ、だって、すごーく嬉しかったんだもん」


教師としてまだまだ未熟な私にこう言ってくれて、本当に嬉しくて、あっさり泣かされてしまった。


「私、先生になって、未羽先生の隣にいますから」

「それはだめ。絶対譲らないからね。でも、頑張って。二瓶さんの…りんちゃんの夢、応援してる」


最後の授業が終わり、もう、正式な私の生徒ではなくなったりんちゃんの夢を私は応援する。


「はい。ありがとうございます。みな先生、短い間でしたが、ありがとうございました」

「こちらこそありがとう。こんな、だめだめな先生を信じてくれてありがとう」


そう言って、私はりんちゃんと別れた。また、後で送別会をクラスでやってくれるみたいだけど、たぶん、りんちゃんと2人きりで話すのはこれが最後だろう。いや、これが最後ではないか。りんちゃんがいつか、私と未羽先生と同じ学校で働くこともあるかもしれないしね。


楽しみだなぁ。りんちゃんなら絶対いい先生になれるよ。いつか、りんちゃんの授業も見てみたいなぁ。そんなことを考えながら、授業の評価を聞くために職員室に戻る。






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